骸骨とフライドチキン8
---カーネリア邸---
「で、どうするつもり何です?」
カーネリア邸近くまで戻ってきた俺たちは取りあえずクーペの中で作戦会議をすることにした。完全武装した男たちが乗っている車なんて怪しさ満点で通報されそうなので手短に済ませたい。
「正面から行くに決まってんだろ」
作戦会議終了。いくらなんでも手短すぎる。
「ほ、本気ですか?」
「おうよ、取りあえずお前にはコレを渡しておく」
手渡してきたのはAVG7、それと弾薬の詰まったボストンバッグ、中には各銃の弾薬の他にAVG7の予備弾頭三つ。いずれもVG-7G、対装甲弾頭だ。
「作戦はこうだ。まずはお前がそれで門をぶっ壊せ。四か所ある蝶番を狙えよ?門が壊れたら俺が車で突っ込むから後ろからついてこい」
「榴弾の方はどうしたんです?」
バッグの中には見当たらない。
「あれは置いてきた。今回の獲物はフィガロだけだ。それ以外の奴はなるべく殺さないようにしろ。まぁお前の散弾銃の弾、全部ゴム弾だから殺すも何も無いがな。あと、これを耳に付けとけ」
手渡して来たのは耳栓のような形の無線通信機だった。
「了解です。じゃあ先、行きますね」
右耳に無線を付け、バッグの肩紐をタスキのように右肩から左腰に斜めにかけて背負う。左手にハウプト、右手にAVG7を持って外に出る。あれ、これかなり怪しい人に見えるっていうか何ていうか。まぁ、いいか。
『聞こえるか?』
カーネリア邸の門を狙撃、と言っていいのか分からないが、ともかく狙い撃つことができる距離にある二階建ての建物の屋上に上ると無線から声が聞こえてきた。
「骸骨の旦那ですか?なんか声が高く聞こえますけど」
『そうか?ちょっと待て。…これでどうだ?』
向こうで何らかの操作をしたのか、やけに高く聞こえた声が元の低い声に戻る。
「大丈夫そうですね。一体なんだったんです?」
『あぁ、普段通信機なんか使わねぇからな。設定を間違えたんだろう、多分』
…この人、普段から機械の塊である強化外骨格なんか着込んでるくせに妙に機械音痴なんだよなぁ。なんて考えていたら無線先の旦那に考えを読まれたのか大きな咳払いをされ思考が中断させられる。
『ともかく、こっちは準備完了だ。そっちのタイミングで門を壊してくれてかまわねぇぞ』
「了解です」
ハウプトと弾薬バッグを足元に置き、バッグからAVG7の弾を三つ取り出しそれも足元に置き、AVG7を肩に担いで構える。狙いは門の蝶番。
門は重そうな鉄柵が観音開きに開くタイプの門でおそらく電気制御の自動で動く物だろう。横にスライドして開けるタイプの門と違い、蝶番さえ壊せば自重で勝手に鉄柵が倒れて入れるようになるだろう。蝶番は四か所、それぞれ右上、左上、右下、左下にある。
門の手前には先程俺たちを追い返した見張りがいる。あいつを巻き込まないように門を奥に倒すように調整した方がいいだろう。取りあえずは下の二つの蝶番を狙うか。
「じゃあ第一射、いきます!」
固定サイトを覗き込み、狙いを左下の蝶番に合わせる。当てるのは鉄柵ではなく、それを蝶番ごしに支えているコンクリ製の柱だ。
一応、撃つ前に後方確認をする。後ろに人がいる時にロケットランチャーを撃ってはいけないぞ。
ボシュ!
かなり大きな音と共に弾頭が飛び出す。バックブラストによって反動が軽減されているため発射時の反動はそこらの銃より軽い。飛び出した弾頭の行く末を見届けずに次弾を装填する。
バカでかい爆発音が鼓膜を刺激する。音の感じからするとコンクリの柱に当たったようだ。
弾頭を装填し終えるとすぐさま右下の蝶番に狙いをつける。ここからは時間との勝負だ。今の爆発音はカーネリア邸内部の連中にも聞こえているだろう。うじゃうじゃ人が来る前に門を壊して内部に入ってしまいたい。
ボシュ!
第二射、これも命中を確認せずに次弾を装填する。爆発音が聞こえると同時に左上に第三射を放つ。
四発目を装填中に第三射が着弾する。今までの弾頭は全て狙い通りに当たったようだった。本来なら門の左側の鉄柵は支えを失い倒れるはずだが右側の柵と繋がっているらしく、いまだに倒れる様子はなかった。
ボシュ!
第四射を放つ。これが右上の蝶番に当たれば門は倒れるはずだ。弾頭の無くなったAVG7を弾薬バッグと共に背負い、いつでも屋上から下りれるように準備しつつ弾頭の軌道を見守る。
第四射は見事に右上に当たる。支えを失った門は爆風に押されてカーネリア邸側に倒れる。幸い人が下敷きになることはなかったようだ。ハウプトを抱え、建物から飛び降りる。
「門が開きましたよ!」
『了解!俺に続け!』
建物から降りた俺の横をクーペが通過する。旦那の乗ったクーペはそのまま勢いよく門に向かって突撃すると先程の見張りを跳ね飛ばした。爆発で崩れた柱に見張りが勢いよく叩きつけられる。
「ちょっと、なるべく殺さないんじゃなかったんですか?」
『加減はした。死んではないだろ、…多分』
不安を残すような事を言いつつ旦那のクーペはそのまま突っ込み、カーネリア邸の高そうな木製ドアをぶち破ると玄関を乗り上げる直前で停止した。