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鼠と骸骨  作者: 栗原 学
7/18

骸骨とフライドチキン7

---骸骨の自宅---

 意外にも骸骨の旦那の自宅はでかかった。といってもカーネリア邸ほどではないが。

 旦那の家は一軒家だった。コンクリで作られた車道が設けられた庭を通り抜け、車が三台は入ろうかという車庫にクーペを停める。車庫の中には車を整備するための道具やパーツ、何が入ってるかよく分からないダンボールなどが壁際の金属製の棚に並んでいた。

「おい、荷物持つの手伝え。そっちの二つを頼む」

 トランクから荷物を取り出し、右手に細長い木箱を抱え左手にアタッシュケースを持った旦那はどうやらそれらを地下室に運ぶつもりらしい。

 俺は残り二つのアタッシュケースを両手にそれぞれ持つと旦那の後に続いて車庫と直通しているリビングを通り抜け地下室への階段を下りる。

 地下室はかなり広かった。十二畳ほどはあるだろう。ほぼ正方形の部屋の真ん中に大型の金属製テーブル。入って右手側の壁にある腰より少し上くらいの高さの棚のようなものは全てガンセーフのようだ。そして左奥のこれは…

「旦那、あの奥の機械なんです?」

「ん?あぁ、あれは外骨格の整備用のスキャナーだ。人間でいうレントゲンとかCTとかMRIみたいなもんだな。バラさなくても内側の故障部分とかが解るんだよ」

 だそうだ。正直その機械が場所を取っているため部屋は結構手狭だ。

「荷物はこの辺りに置いておいてくれ。さて、と」

 旦那は部屋の中央のテーブルの上に手に持っていたアタッシュケースと木箱を置いて中身を取り出す。アタッシュケースの中身はライフル銃。カラッソ社製のマークスマンライフル『カラッソ・Cr32』だ。

 Cr32はCr14というバトルライフルの派生型のマークスマンライフルだ。Cr14はかなり前の戦争なんかで軍に採用されてたらしいフルオート自動小銃だ。当時の銃にしては高いストッピングパワーと長い射程を持っていたらしいが、反動が強く、曲銃床であったことから制御が難しかったらしい。銃身も長く取り回しも悪く、結局、戦争末期には別のライフル銃、カーレットのM3が軍に制式採用された。

 Cr32はそんなCr14の近代改修モデルだ。グリップと一体化していた木製ストックは、グリップとは別れた伸縮式ストックに変更され、銃本体も木製からアルミ合金製へと変更された。バイポット増設、マウントレール増設、フルオートとセミオートの切り替え可能、銃身のコンパクト化と様々な改修をされ、使いにくかった突撃銃Cr14は近、中距離戦から遠距離戦まで対応した狙撃銃として生まれ変わった。

 装弾数は32発、使い勝手の良さではマークスマンライフルに非常に適した銃といえる。

「おい、そっちのケースもテーブルの上に置いてくれ」

 言われて、俺はテーブルの上にアタッシュケースを置く。

 左手に持っていた大きめのケースの中身はロケットランチャーだった。ASR製、AVG7。銃身自体は細身の筒にグリップと固定サイトだけって見た目で、先端に円錐を二つ組み合わせたような形の弾頭が装着されている。

 装着されている弾頭はVG-7G。数種類ある弾頭の中では一番スタンダードな対装甲弾頭だ。ケースの中にはもう一つ予備の弾頭が入っている。こちらの弾頭は棒のような見た目をしている。AG-7V、対人用の榴弾だ。

 右手のアタッシュケースに入っていたのはショットガン。ハウプト社のHa.セミ・ポンプショットガンだ。

 セミ・ポンプってのは名前のとおりセミオートとポンプアクションを自由に切り替えられるタイプのショットガンだ。フレームはチタンとアルミの合金。これにより軽さと頑丈さを兼ね備えている。

 変わったストックの形状をしていて、曲銃床とピストルグリップを組み合わせたような見た目をしている。ハンドグリップスライドも変わっていてチューブ弾倉だけでなく銃身までぐるっと一周、覆うような形状をしている。セレクターは弾倉の先端に付いている。

「この散弾銃はお前が持っとけ」

 そんなちょっと変わった形状のショットガンを手渡される。さらに12ゲージの散弾も箱ごと渡される。

「えぇ、俺が使うんですか?」

「むしろお前、丸腰で行くつもりだったのか?少しは役に立て」

 ほら、これ。と言って弾薬ポーチとポーチ用のベルトを渡される。ベルトはご丁寧にも散弾弾薬ホルダーになっていた。

 仕方ないのでベルトにありったけの散弾を取りつけてポーチを装着して腰に巻く。ポーチの方には俺の自前の回転式拳銃『M44ファイアスパロー』用の弾薬を入れさせてもらった。

 俺がベルトを巻いてる間に、旦那はガンセーフの方から色々と銃を取り出していた。

 一つ目は、これまたショットガン。アンチェッター社の『アンチェッターM2019』だ。旦那が持っているのは木製ストックを切り落として銃身も短くしたソードオフモデルだ。銃身下部の弾倉も併せて若干、短くしているから装弾数は4発ってところだろう。

 二つ目はラウンダー社の自動拳銃『R17C』これを二挺。

 R17Cは拳銃でありながらフルオート射撃可能な銃だ。だが、そのまま使うと反動が激しくて制御がきかない。だいたいはストックを付けたり、フォアグリップを付けたりして制御しやすくするもんだが、旦那のR17Cはどうやら弾が33発入るロングマガジンなところ以外は無改造らしい。まぁ、旦那のスカルスーツなら片手でも制御できるんだろう。だからこその二挺拳銃か。

 三つ目はカラッソ『Ch9c』桐生に預けていた物と同じ銃だ。これは単純に左大腿部装甲の内側の銃の予備だろう。

 さて、テーブルの上に並んでいる銃はこれくらいか。で、最後に気になるのが一つ。

「それで、その木箱の中身は何なんです?いい加減教えてくださいよ」

 銃の点検をしながら何度か質問しているんだが先程からはぐらかされている。

「あぁ、まぁそろそろ見せてやるか。コイツが俺のリーサルウェポンだな」

 木箱から取り出されたのは一振りの刀だった。だが、普通の刀と比べて変な見た目をしていた。

 柄の部分や鞘が金属でメカメカしい印象だ。柄には引き金のようなスイッチのような物が付いていて、鞘は刀身に対して、やたらと大型だった。

 鍔には金色の端子のような物が付いていて鞘とくっつくようになっているようだ。

「なんすか、これ?」

「コイツは影清って刀だ。改造して刀身に高周波が流れるようにしてある」

 つまり、高周波ブレードか。鋳造の刃でも高周波を流せばかなりの切れ味になる。ましてや、鍛冶師が鍛えた刀なら凄まじい切れ味だろう。ちゃんと鍛えて作った刀を高周波ブレードに改造するなんて勿体ない気もするが。

「よし、準備はこんなもんかな」

 Ch9cは左大腿装甲にしまい、その両大腿部装甲の上にレッグホルスターを巻いてR17Cをしまう。

 M2019はポラロイドカメラが入っていた腰のポーチに付いているホルスターに差し込む。Cr32はスリングで肩から提げ、高周波ブレードは左腰に差す。AVG7は直接右手に持っている。

 まさにフル装備って感じだ。戦争でもする気か、この人。

「先に上に上がって待ってろ。俺はコイツの調整をしてから行く。リビングの冷蔵庫の飲み物勝手に飲んでていいぞ」

 コイツってのはどうやら旦那の着ているスカルスーツのことらしい。

「調整って時間がかかるもんなんですか?」

「たいして時間はかからんが一旦脱がないとスキャナーに通せん。ほら、さっさと出てけ」

 追い出されてしまった。四六時中あんな恰好している人だしやはり顔は見られたくないのだろうか。

 しょうがないからショットガンを抱えてリビングに上がる。さっき言っていた冷蔵庫を開けると見事に酒とウーロン茶しか入っていなかった。どんだけウーロン茶好きなんだ、あの人。

 500mlのウーロン茶を取り出し、ペットボトルの蓋を開けウーロン茶を口に含み、ソファに座る。

 テレビ勝手につけたら怒られるかな、と思いながらぼんやりとテレビ台の方をぼんやりと見ていると、ふと一枚の写真が目に入った。

 金属製の写真立てに入っているそれは古い写真なのか少し色あせているがそこに写っていたのは骸骨の旦那と、青髪の女の子だった。

 女の子は十歳かそこらの幼さで、旦那が女の子を抱えて顔の高さを合わせている。

 写真立てを手に取って裏を見てみると日付と文字が刻んで合った。

『2030/10/12 Grim Reaper完成記念に娘と記念撮影』

 十年前か。写真に写っている娘さんは二十歳くらいになっているだろうか。

「何してんだ?」

 旦那の声だ、もう調整は済んだのだろう。

「あぁ、この写真の女の子。旦那の娘さんですか?」

 裏に娘と記念撮影って書いてあるんだから解りきったことだが、何故か疑問を口にしてしまった。

「さてね」

 それに対する旦那の答えはそれだった。詮索はするな、ということなのだろうか。

「ま、どうでもいいじゃねぇか。それより行くぞ。フィガロの野郎を引きずり出してやる」

 弾薬の詰まった肩紐付きのボストンバッグを肩に担ぐとそのままガレージのクーペのトランクにボストンバッグを突っ込み運転席に乗り込んだ。

「早く乗れ。今日中に片をつける」

「あと二十分で0時ですけど」

「うるせぇ!乗れっつってんだろ!」

 いまいち閉まらない雰囲気の中、俺たちは再びカーネリア邸に向かったのだった。

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