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鼠と骸骨  作者: 栗原 学
13/18

骸骨とフライドチキン13

---カーネリア邸裏庭---

 骸骨の旦那の手によって風穴にされた勝手口から出て取りあえずまっすぐ進んでいると少し広いスペースに出た。

 おそらく、駐車場、兼、裏庭といった場所だろう。

「正門はさっき門を壊したから車じゃまず脱出不可能なはずだ。と、思ってもう一つの出入り口である裏門側に来てはみたが…当てが外れたか?」

 裏庭に停まっている黒塗りの車はどれも綺麗に整列しており一台も動かした様子はない。そして、これまた綺麗に敷かれたアスファルトにはタイヤ痕のような物も見受けられない。清掃もキチンとしているらしく汚れ一つ見つからない。それに…

「裏門も閉まっているし車で外に出たわけではなさそうだな。しかし、この辺りは道幅も広く見晴らしが効く。移動手段もなしに逃げ出すとは考えにくい。奴はまだ敷地内に潜んでいるかもしれねぇな。ネズミ、用心しとけ」

 その言葉に気を引き締める。相手がまだ敷地に潜んでいるのだとしたらこちら側に対して何かしらの対抗手段を持っているという事だ。正直、俺自身は防弾チョッキすら着ていない生身で来ているのでそういったドンパチには巻き込まれたくなかったのだが。

 俺は取りあえずバッグの中からスリングベルトを取り出すとそれをCr32に取り付けバッグと一緒に背負った。流石に片手でショットガンやライフルを撃つのはつらい。

 そうしてハウプトを水平に構えて周囲を見回しているとあるものを発見した。

「旦那!これ、見てください」

「コイツは足跡か。あのプレハブ小屋の方に向かっているな。フィガロかもしれん」

 そう、裏庭の地面がアスファルトではなく芝生になっている部分に足跡があったのだ。形からみてランニングシューズの類ではない。おそらく革靴だろう。周囲を警戒しつつ足跡を追ってプレハブ小屋に近づく。

「このプレハブ小屋は倉庫か何かですかね」

「いや、どうもキナ臭いな。このプレハブ小屋は木々に囲まれてて外からじゃ確認できなかった。何か人には見せれない物を隠しているのかもしれん」

 そうして旦那がプレハブ小屋の扉に手を掛けた、その時。

 プレハブ小屋の壁の一面が吹き飛んだ。

 数瞬、遅れて壁が内部から爆破されたのだと理解した。

「な、何ですか今の!」

 旦那は咄嗟に身を引いて躱したため無事なようだ。

「さぁな。だが、ついに獲物を追い詰めたようだな」

 爆発の煙でプレハブ小屋の中はよく見えないが何かいる。フィガロなのか?と思っていると相手から話しかけてきた。

「馬鹿が。追い詰められた獲物はお前らだよ!」

 キーンと耳をつんざくような音と共に拡声器ごしの大声が辺りに響く。

 そうして煙の中から現れたのは4メートルはあろうかという黒い巨人。

 いや、人型の機械、『パワーローダー』だ。

 パワーローダーはここ十数年で民間に普及し始めた乗り込み式の人型重機。だいたい3メートルから4メートルくらいの高さで、最近よく工事現場なんかで見ることが多くなった。人型なため自分の体と同じように動かせるからか多少値が張っても採用する現場が多いようだ。強化外骨格の大型版、といえば解りやすいだろうか。

「ふん。パワーローダー如きで俺を追い詰めたなどと寝言を抜かすとはな。もう数十体持って来れば話は別だが、たかがパワーローダー一体にやられる程ヤワじゃないぜ」

 旦那が腰の刀を抜く。

「コイツをそこらの工事用のワークローダーと一緒にするなよ!コイツは裏ルートから手に入れたテロリスト鎮圧なんかに使われる軍用パワーローダーだ!そこらの安物とは耐久性から何から違うぜ!」

 フィガロは喚きながら、パワーローダー用に用意されたらしき3メートルはあろうかという斧を持ち上げた。

 確かに通常の民間機とは違うようだ。民間機は工事等で使用するためマニピュレーターは人間の手のような形ではなく物を挟むための金属板二枚、プライヤーのような形をしている。その方が故障も少なく長期使用という点においては優れているからだ。だが、軍事用となれば話は別だ。軍事用パワーローダーに求められているのは長期使用できる耐久性ではなくどんな状況にも対応できる多様性だからだ。

 多様性という点においては五本指タイプのマニピュレーターに軍配があがる。物を持つことも容易だし簡単な銃器の類も扱える。

 フィガロの乗り込んでいるパワーローダーは直接腕に銃器を取り付けてあるようだった。右腕にはガトリングガン。と言ってもパワーローダー用なためか人間では扱えないほど巨大なサイズだ。これが、右肩のドラム缶の様なマガジンに給弾ベルトで繋がれている。

 左腕には巨大なリボルバー銃。これは6連装グレネードランチャーだ。これも人間サイズではない。

 対テロリスト用なんて言っていたがこれらの装備はどう見ても人間相手に使う物ではない。明らかに過剰な戦力だ。おそらく、戦争用のパワーローダーの武器を別ルートで手に入れて無理やり装備させたのだろう。軍用は規格統一されているから一応装備できるはずだ。

「コイツでお前らをミンチにしてやる!その後はコール・カーネリアをぶっ殺す!俺がこのファミリーのニューリーダーになってやるぜぇ!ひゃはははは!」

 ズゥン…ズゥン…。地面を揺らすような足音と共に漆黒のパワーローダーがプレハブ小屋から顔を出す。防弾ガラスの向こうにあるフィガロの顔はまるで茹蛸のように赤くなっており明らかに興奮して我を忘れている様子だった。

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