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鼠と骸骨  作者: 栗原 学
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骸骨とフライドチキン1

 初投稿です。誤字脱字など何か不自然な点がございましたらご指摘ください。

 メインストリートからちょっと外れた場所の路地裏でひっそりと経営されているバーがある。

 そこは俺みたいな情報屋や表で堂々と酒も飲めない連中の溜り場とでもいうような感じの店だ。バーのマスターがちょっとした権力だかコネだかを持っているらしく警察もそのバーには介入出来ないと風の噂で耳にした。


---バー・ルインズ---

 俺が今日バーに来たのはある人に会うためだ。中の様子を確認できるような小窓は付いていない木製のシックな扉を開けるとその人は既にカウンターでグラスを傾けていた。

「すみません、骸骨の旦那。遅れました」

「ネズミか…何かあったか?」

 取りあえず骸骨の旦那の隣に座るとハムサンドを注文しつつ旦那に顔を向ける。

 仲間内で骸骨って呼ばれているこの人は文字通り骸骨のような見た目をしている。といっても本当に骨だけってわけじゃない。この人が普段から着用している強化外骨格が骸骨のような見た目をしているからだ。

 肋骨のような胸部プロテクター。腕や足の装甲には二本の白いラインが入っている。顔は頭骨を模したフルフェイスメットで覆われており、メットの奥の双眸が紅く光っている。

 どんな時でもこのスカルスーツに身を包んでいるから骸骨。現に今もスカルメットの歯を模した口周りの装甲のみを上下に展開しグラスに口を付けている。素顔は見たことがない。

「いや、何かあったわけじゃないですよ。ただちょっと寝過ごしたというかなんというか…」

「なんだお前、寝起きか。そんなんで今から仕事できんのか?」

「朝飯代わりのハムサンド食べれば大丈夫ですよ。そっちこそ酒なんて飲んで大丈夫なんですか?」

 さっきから骸骨の旦那はウイスキーらしき液体をちびちびと口に運んでいる。

「朝飯っても今は深夜一時だがな…。それとこいつはウーロン茶だ」

「ウーロン茶?その割にはなんだか酔ってません?」

 この人との付き合いも三年になるが旦那は色々と謎が多い。普段からスカルスーツに身を包んでいたり、素顔を誰にも見せないのもそうだが年齢も本名も誰も知らない。俺が知っているのは旦那は酔うと口数が増える事くらいだ。

「ふっ、雰囲気に酔ってるのさ。落ち着いた雰囲気の酒場で一人、酒をたしなむ男。ダンディズムってやつさ」

「今は二人っすけどね」

 酔うと、時たまこういうナルシストな発言をするのもよく知っている。どうも普段からダンディズムとやらを気にしているらしく酔うとこうして自画自賛しだす。

「ていうか本当に呑んでません?いくら旦那が凄腕でも仕事前に酒はやめてほしいんですけど」

「残念だがこれは本当にウーロン茶さ。ウイスキーのほうが恰好は付くが仕事には手を抜かない主義でね。仕方なく代用品で済ませている」

 仕事に手を抜かないのもダンディズムの一環らしい。前に酔っ払っていたときに言ってた。

「で、どうなんだ今回の仕事は。まだ詳細を聞かされていないが」

 骸骨の旦那はこの界隈では割と有名な人で金さえ積めば庭の草むしりから国の要人暗殺までなんでもすると言われている。まぁ、草むしりなんて依頼来たことないけど。俺は依頼人と骸骨の旦那との間を取り持つ仲介人ってわけ。仕事をする時は毎回このバーで落ち合う取り決めだ。

「言ってませんでしたっけ?暗殺ですよ。相手は闇医者」

「医者?なんでそんな奴が…」

「さぁ?依頼人はここらでもヤバめのマフィアですけど。カーネリアファミリーって聞いたことあるでしょ」

「知らん。チキンでも売ってんのか?」

「それはカーネルでしょ。カーネリアファミリーって言えばここらで幅利かしてるマフィアの一つですよ。キンダーファミリーとよく抗争してるのを見ますよ」

 ここらの治安はかなり悪い。マフィアが警察署の前を堂々と闊歩してるくらいには悪い。

 ここら辺では警察も頼りにならない。警察幹部の身内にキンダーファミリーのボスがいるらしく警察もマフィアの一員みたいなものだ。自衛の手段がなければこの辺では生きていけない。

 かくいう俺も常に懐に拳銃を持ち歩いている。そういう意味では旦那の常時外骨格をまとっているのは最大の自衛手段かもしれない。外骨格の装甲内に武器も仕込んであるみたいだし。

「で、そのカーネルだかサンダースだかって連中がなんでたかが医者を殺すためにわざわざ俺に依頼を持ってきたんだ?お抱えのヒットマンくらいいるだろ」

「身内だと足がつくからでしょうね。よそから雇った人間なら最悪の場合知らぬ存ぜぬで押し通せますからね」

「ふん、まぁいいさ。貰えるもんさえ貰えればな。行くぞ」

 旦那は席を立つと硬貨を一枚はじく。その硬貨はきれいに弧を描いてさっきまでウーロン茶が入っていたグラスに吸い込まれていった。

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