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ブルー

作者: 八音 都和

 今、私の中に青いお客が来ている。結婚式などの祝事が続き、激しい金欠状況に陥っているのだ。そう、いつも私を憂鬱の渦に巻き込む「金欠ブルー」がやって来たのだ。

 生きていれば何かしらブルーな気持ちが湧く。断りもなく2キロも太っている「増量ブルー」。一人の週末が続き、このまま誰にも気づかれないまま死ぬだら…と不安になる「孤独死ブルー」。仕事に煮詰まり能力の限界を感じる「無能疑惑ブルー」などだ。

 慢性的なのはやはり「金欠ブルー」だ。無欲な生活にも危機感を覚える月がある。過去、特にひどい月があった。次の給料日までまだ2週間もあるのに使えるお金が千円。財布の中と銀行口座の残高を確認した瞬間、この最悪な状況を乗り越える強烈なミッションが下された。徒歩通勤。昼食は塩むすび、夜は実家か貰った乾麺を具なしで食べる。それも尽き果てると、残っていた小麦粉でうどんを打ち、スープは醤油をお湯で割った。何とかお金を増やそう手持ちの本やCDなども売りまくった。当時貧乏最大の敵である「合コンの誘い」という強敵にも打ち勝ち、ストレスフルな日々をどうにか乗り越えた。

 ここまでの状況は少ないが多少の金欠ブルーはほぼ毎月やって来る。何も豪遊している訳じゃない。お弁当持参、異業種交流会(合コン)への参加はとっくに廃止、洋服バカ買いもやめた。なぜだ?週一の発泡酒6缶パックさえもやめろというのか。アベノミクス効果は世間の末端である自分にはまだ降りてこない。

 しかし金欠ブルーは悪いことばかりではない。乗り切る知恵や力をくれるのだ。家にある食材でいかにましなご飯を作れるかが金欠ブルーVS私の最大の見せ場だ。例えば、クリームパスタが食べたいが生クリームも牛乳もない。賞味期限ギリギリのクラムチャウダーの粉末と食べ残したロールケーキの真ん中のクリームを代用、それにクレイジーソルトをかけまくればそれなりのクリームパスタの味になる。戸棚の奥に忘れ去られていた乾燥ワカメを崩してご飯と一緒に炊けばたちまち香り豊かな「ワカメご飯」。残り物の食材を片っ端から片栗粉を付けて揚げまくる「何でもフライ」。野菜でも加工品でも何でも塩胡椒して揚げれば大抵美味しくなった。貧乏ゆえに作る数々のメニューは時々ミラクルな味になる。なんちゃってクリームパスタもその一品だ。また、これらをお弁当に入れていったりブログに載せ「美味しそうね!」などといわれると凄く嬉しい。ブルーが私にもたらした小さくともハッピーな気分だ。

 この後の人生も色んなブルーがどうせやって来るなら、上手く付き合う術を考える方が楽しそうだ。次、新たなブルーが私の前に現れたら、旧友にでも会ったかのようにさわやかに迎えたい。

「あら、久しぶりね!最近顔見せなかったけど元気だった?」そんな風に…。青い来客は新たな能力を発見する前ぶれかもしれない。そう考えると次のお客が少しは楽しみに思えてくる。


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