第二話 ~銃と龍の争い~
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目を覚ました私は緑の森の中にいました。
それだけなら、いいんです、まだ。
私の頭上をナニカ!がとんでいるのです。
ナニカとは・・・。
上を見たくもありません。
さっきから耳を通り抜ける音は炎と銃声です。
炎はゴォォォォっと怖くって。
銃声はバンバンっと鼓膜が破れそうなのです。
両耳を手でふさぎながら恐る恐る上を見てみると・・・
ー銀の龍です。
銀の龍が飛んでいるんです。
紅い紅い炎を口から吐き出してどこからか発射される銃と闘っているようです。
私は争いとかが嫌いです。
血が流れたり、誰かが喧嘩をしたりしているのは悲しいです。
また、争いは愚かなんじゃないか、とも思います。
暴力じゃなくって、言葉とかで解決できないのか、と。
だから今、銃と龍が闘っているのを見ているととても怖いし悲しいです。
なぜ、異世界に来たのか、なんてもうどうでもいいのです。
私が今しなければいけないことは目の前で繰り広げられる憎しみの連鎖を止めることではないのか、と思うのです。
ですが、私は今何も持っていません。
なにをもっていれば止められるかはわかりません。
でも、今私は何も持っていないのです。
会社から渡されたカバンと、細々とした私物だけなのです。
今ほど、自分の無力をたたったことはありません。
龍と銃はずっと戦っています。
弾丸がどこからか発射されています、ずっとずっと、何十個も何十個も。
龍はずっと自分の周りに紅の炎を出しているのです。
龍の姿は勇ましく、けれども孤独の象徴のようでした。
誰が撃っているのかはわかりません。
仮定として軍隊とします。
軍隊、その数何百人が龍を取り囲んでずっと発砲を続けています。
それに、龍はずっとずっと炎を吐き戦っているのです。
龍は一人ぼっちなのでしょうか。
仲間はいないのでしょうか。
淋しくは、ないのでしょうか。
何かの本で銃声などを聴きすぎると耳がおかしくなってしまうというのを聞いたことがあります。
私は気分が悪くなってしまったのでしょうか、緑の森の柔らかな芝生の上で眠ってしまいました。
龍の出す炎は子守唄でした。
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