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プロローグ
青い空が広がり、穏やかな風の音が聞こえる。
公園では子供が遊び、親達は周りを気にする事無くおしゃべりに戯れる。
なんと心地良い世界では無いか。
この平和な世界、それは一体誰の手によってもたらされたのか?
人々は言う。
「神志名法次のおかげだ」、と。
子供にも聞いてみよう。
ブランコを揺らす可愛い少女をつかまえた。
「この世界を平和にしたのは誰?」
「神志名法次!」
言った後、彼女は満面の笑みを浮かべた。
人は皆、神志名法次を英雄だと褒め称える。
彼は誰よりも先に立って戦い、平和のために戦場を駆け抜けて死んだ。
だが、彼と彼の功績を疑う者は無い。
神志名法次は紛れも無く存在し、哀しい世界を変えた。
「愛花、行くぞ」
「はぁ~い!」
少女は、父親だと思われる背の高い男の後を、無邪気に駆けて行った。
神志名法次大隊長殿、もしあなたが生きていたならば、この世界をどのような目で眺めていたのだろうか。
元刀銃兵部隊 第三中隊 第十二小隊所属 軍曹 大矢幸一