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ちょこ・ほりっく

作者: 水科代利



好きなの。

大好きなの。

そんな気持ちを全部込めて作った、甘いチョコレート。

あなたに受け取ってもらいたいんだ。

好きで好きで、大好きだから、チョコを作ってしまうんだ。

これは多分、一種の中毒なのだ。


「おはよう、りん」

学校へ着くと、親友の河原祐未が私に話しかけてきた。

「友チョコくれー」

まったく。製菓会社の陰謀によって、いつからかメジャーになってしまった友チョコという制度。

おかげで、お菓子作りが得意というレッテルを貼られている私は、クラスメートの分のチョコも作らなければならない。

私は夢野りん。お菓子作りしか特技がない高校二年生。

「はい、どーぞ」

「ありがとう。さすが2年2組のパティシエール」

祐未はニコっと笑い、それから声をひそめた。

「月村にはもうあげた?」

私はブンブンと首を横に振る。それに合わせてツインテールがパタパタと動く。

「まだだよ。無理っ」

月村直樹。私の片思いの相手。黒くて艶やかな髪と目鼻立ちのくっきりした顔が特徴で、同級生からも下級生からも人気だ。

「早くあげちゃいなよ」

茶色のショートヘアをさらさらと揺らして他人事のようにいう祐未。

「……わかってるよ」


バレンタインなんて嫌いだ。

本当は誰にもあげたくない。

なのに、他の子が月村にチョコをあげるのを黙って見ていることに耐えられないのだ。

月村は男の子にしては珍しく甘いものが好きで、食べ物をあげれば喜んでくれる。だからこそ、バレンタインは嫌だ。きっと月村はもらったチョコを全部食べてあげるのだろう。

嫉妬。鬱陶しくて大嫌いなこの感情が、私にもあったなんて知らなかった。

月村を好きになればなるほど、身勝手で見苦しい私が姿を現す。

それが露骨に表れたのがお菓子作りだった。

私は体育祭などのイベントのたびにお菓子を作ってクラスメートに配った。

そうすれば、月村にも渡せるから。

「あげる。食べて」

「いいの?ありがと」

これだけの会話でも私は嬉しかった。

私はずるい。そうやって彼の心に残ろうとしてしまう。

あげる時だけは私を見てくれる。食べてくれる間だけは私を思い出してくれる。

……私は性格が悪い。


「つ、月村っ。これ……」

カッコ悪い私。こんなに緊張して。

お菓子をあげる時にしか話せないから仕方ないけど。これじゃあ下級生と変わらないではないか。

授業前の教室の片隅。私は綺麗にラッピングしたチョコレートを渡す。

「夢野……またもらっちゃうけどいいのか?」

申し訳なさそうな顔の月村。

「私があげたくてあげてるから大丈夫」

そう。なんの見返りもなくたって、あなたと話せたら私は幸せなんだ。


「りん、渡した?」

祐未が私の席で帰りを待っていてくれる。

「うん」

「よかったね」


下校の前に月村の鞄を見ると、空になったチョコの包み紙がたくさん入っていて、その中に私のあげたものも混ざっていた。

「……食べてくれたんだ」


時は流れて三月十四日。ホワイトデーがやって来た。

「夢野」

月村の声に振り向く。

「普通のチョコといちご味、どっちがいい?」

……もしかして、バレンタインのお返し?

「い、いちごっ」

「はい」

月村が渡してくれたのは、キャラクター柄の包み。中身はクランチチョコだ。

月村からものをもらったのは初めてだ。

私は嬉しくて嬉しくて叫び出したくなった。

なんだ。バレンタインも悪くはないじゃない。


だけど困った。

こんなに嬉しいと、また月村にお菓子をあげたくなってしまう。

やらずにはいられないことを中毒というけれど。

お菓子をあげずにはいられない。

私は一生、中毒者なのだ。







バレンタインは楽しいです♪

なんせ堂々とお菓子を配れるんですから。

先生もその日は見て見ぬふりですし(*^_^*)



追記。

私のケータイは古いのか、テキストコピーの機能がありませんでした(>_<)

残念すぎる!




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― 新着の感想 ―
[一言] か、可愛い!! りんちゃんの可愛さが、読んでて伝わって来ました^^ 素敵なお話を、ありがとうございました♪
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