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10/12

三週間で、口座に百万円入った

 朝、二件の通知が届いていた。


 一件目は、先日委託した魔核晶のオークション結果だ。


 「落札価格:385,000円」


 数字を見て、少し止まった。推定価格の下限に近い。

 それでも、出品から四日でここまで動くとは思っていなかった。


 二件目は魔核石の再圧縮完了通知だった。

 欠片三個の仕上がりが出たという内容で、本日受け取り可能と書いてある。



   ◇



 業者に向かい、再圧縮された魔核石を受け取った。


 サイズは握りこぶしより少し小さい。

 三つの欠片がひとつにまとまると、見た目がまるで変わる。艶がある。重さも均一だ。


 「185,000円になります」


 領収書と封筒を受け取って、外に出た。


 電車に乗りながら、スマホで口座残高を確認した。


 ここ三週間の入金をざっと足してみる。売却収益、配信収益、爪の精製代金、査定料、そして今日の二件。


 残高は、1,012,400円だった。


 「……」


 画面を二度見した。三度目も同じ数字だった。


 三週間前まで、来月の家賃をどうするか頭の中で計算していた俺が。


 しばらく、何も言えなかった。



   ◇



 夜、五回目の配信を始めた。


 アプリを開くと登録者は1,820人になっていた。

 前日の終わりに急増して、そのまま積み上がっている。


 配信ボタンを押した瞬間にコメントが流れ始めた。


 『きた』

 『今日はどこ行くの?』

 『魔核晶いくらになったの?』


 「魔核晶のオークション結果が出ました。385,000円でした」


 『おい』

 『は?』

 『走りながら拾った石が38万』

 『やばすぎる』


 「言ったでしょう、踏まないように拾っただけって。鑑定したら値段がついてただけです」


 『それで済む話じゃないんよ笑』


 今夜の目的地はB3Fから B4F付近だ。

 上層の中でもやや深い位置で、久しぶりに入るエリアになる。



   ◇



 通路を進みながら、コメントと話しながら拾っていく。


 使い込まれた魔力補助具の残骸。探索者が捨てていった道具の欠片。

 鑑定しながら選別して、価値があるものだけ回収する。

 この作業の繰り返しが、なぜか毎回コメント欄を盛り上げてくれる。


 B4Fへ入ったところで、コメントに一件、目が止まった。


 『B4Fの東側の壁際に、光ってるものがあった。先週通ったとき何か見えたけど何か分からなくて』


 「……東側?」


 俺は足を止めた。


 『俺も似たの見た。三日くらい前』

 『探してみてよ』

 『回収屋さんが鑑定したらなんか出るかも』


 「確認してみます」


 東側の壁に沿って進む。

 通路の幅が少し狭くなる区画で、懐中電灯の角度を変えながら壁面を確認していく。

 最初は何も見えなかった。


 一歩踏み込んだところで、壁の凹みに何かある。


 手を伸ばして取り出した。親指の先ほどの石だ。

 表面がわずかに光っている。重さが均一じゃない。


 【鑑定】を向けた。


 ――――――――――――――――――――

 魔封石・埋蔵型(未使用)

 希少度:A

 現在価値:高

 推定市場価値:8万〜12万円

 備考:魔力を内部に閉じ込めたまま岩盤内に生成された希少鉱物

 通常の採取では発見しにくく、流通数が少ない

 推奨:専門鑑定機関または高級素材業者への直接持ち込み

 ――――――――――――――――――――


 「……希少度A。推定価格8万から12万円」


 コメントが一瞬止まった。


 そして、どっと流れ始めた。


 『えええ』

 『情報提供した人すごくない!?』

 『コメントで見つけたじゃん』

 『回収屋さんと視聴者で発掘した笑』


 「教えてくれた人のおかげです。俺一人だったら通り過ぎてました」


 そのまま正直に言うと、また流れた。


 『そういうとこ好き』

 『次も情報持ってきていい?笑』

 『もう視聴者も回収班の一員では』


 「ありがたいです。気づいたことがあればいつでも」


 石を布に包んでポケットに入れた。



   ◇



 配信を閉じて、ダンジョンの外に出た。

 夜風が冷たかった。


 今日のピーク視聴者数は2,400人を超えていた。


 数字より、コメントの流れが変わった気がする。

 最初の頃は、俺が何かを見つけるたびにリアクションしてくれていた。

 でも今は、視聴者の方から動いている。

 情報を持ってくる。次を待っている。


 ただ見ているだけじゃなくなってきた。


 歩きながら、今日一日を整理した。


 口座に100万円を超える金がある。

 それは数字だ。

 でもその数字の向こうに、自分の目で見てきたものの積み重ねがある。

 誰かが捨てたもの、通り過ぎたもの、価値なしと決めたもの。

 それを俺だけが拾ってきた。


 俺は、回収屋でいい。


 有名になりたいわけじゃない。

 最強になるつもりもない。

 でもこの目で価値を見つけ続けることは、やめるつもりがない。


 スマホに通知が来た。


 鷹坂からだった。


 「真壁さん、またご相談があります。今度の件は少し規模が大きくなりそうで、できれば直接お話ししたいです。ご都合いかがでしょうか」


 前回より、文面が少し丁寧になっている。


 俺は通知をいったん閉じて、ダンジョンの出口へ向かった。

読んでいただきありがとうございます。

もし本作を気に入っていただけたら、同じくダンジョンものの別作品も書いています。


**『俺だけ使える【アイテムボックス】がバグってるので、誰も運べないレイド報酬を独占します!』**


「俺だけ使える能力」で一気に有利を取っていくタイプの作品です。

こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。


↓作品ページ

https://ncode.syosetu.com/n5744ma/1/

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