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初破滅ルート発生? お茶会事件


 夜になると、城を抜け出してシロン師匠の元にやって来ては、色々なことを教わっている。


 そして、今日の夜は、とある破滅回避について師匠に話を聞く必要があった。


「集団毒殺が目の前で行われたらどうするかだと?」


「……うん。教えて師匠」


 お茶会まで時間がない。どうにかして、アルティミス皇族と客人として、招かれるオーブ王家全員を守る方法を教わらなくていけない。


「〈ヒーリング〉で状態異常を回復させろ。それか口にも含まさせず。吐き出し、自身が生き残ることだけを考える……それだけでは駄目なのか?」


「家族……ううん。皆を助けたい」


「幼子が考える事ではないな。それに欲張りな奴だな。全員を救いたいなどと傲慢が過ぎる……皆を救うなんて、並大抵な事じゃない。難儀な性格をしているよ。我が弟子は」


「……お願い師匠」


 つぶらな瞳、甘えた声で師匠に甘えた。幼子の特権だ。 フル活用してやる。


「うぐぅ……可愛い。分かった特別に対策を教えておいてやろう」


「師匠……ありがとう」


「浄化、状態異常、回復の魔法を覚えろ。それらの魔法を毒殺された全員にかけて癒してやれ。……あぁ、それと現場には犯人がいるかもしれんか。そういう時は……」


 師匠は、俺に優しく教えてくれる。丁寧にだ。そして、厳しくもある。幼子だとしても関係なしだ。


「これが全員を救う方法だ。覚えたか?」


「…………スパルタ」


「愛の鞭と言え……それと私はまだ、魔法や剣術は基本中の基本しかお前に教えていないからな。ちゃんと覚えたかったら。皇子という身分は隠して、魔王立学園に通えよ。推薦状は書いといてやったから。やろう」


「…………あぃ、師匠。あんがどう」


(うっ!……可愛い)


 破滅回避ルート……隣国のオーブ王国を招いて開かれる「お茶会」を前に、師匠に相談して対策を立てた。


 これで、集団毒殺を完璧に防げるかどうかは分からないが。なにも準備しないよりはいいだろう。


「なにも起こらんといいな。ヨルよ」


「…………うん。生き延びたいし……皆を生き残らせてあげたい」


「……お前は優しい奴だよ。ヨル」


「あんがどう……師匠」


◇◇◇

 

 数日後。


 「お茶会」当日がやって来た。城の大広間には、100を越えるテーブルが用意され、その上には色々な菓子が並べられている。


 そして、皇帝が座る椅子の近い順番で、皇族、王公貴族、一般貴族、招かれた他国の王族と席が区分されていた。


「……あからさまに遠いわね。やっぱり、極東の実家に帰ろうかしら?ねえ?ヨル、コハクちゃん」

「悪くないかもです。母様」

「…………まぅ?」

「そう?それなら帰ろうかしら?……それにしても、大陸で一番の美人だと本当に大変だわ」


 ちなみに、第二皇子の母親であるはずの母の席は、皇帝の席からもっとも離れた場所にある。普通、皇帝の第二妃ならば、もっと皇帝に近い席を用意されるはずだ。


 母様はものすごく美人だ。数年に1度、ハレムという国で開かれる大陸一の美女を決める大会で何度も優勝する程に。そんなお母様に惚れて現皇帝は父は、母様に何度も何度も何度もアプローチし、最終的に相思相愛になって結婚し、俺が産まれたらしい。


 それを快く思わなかったのが、今の第一妃のカトレアという人なのだが……この席順番も、ユキナお母様は嫌っている第一妃の差し金だろう。まぁ、こんな扱いを受けるのには、もう1つ理由がある。


「オーブ王国。王子!ティファニー・オーブ・アルティシア様のおなり~!」

 

 大扉の前に立っている憲兵が、わざとらしく声を張り上げる。


「……………ぅぐぅ」


 大扉が開くと、俺と同い年位の小さい子供が、涙目でポツッと立っていた。


「…………ティファニー王子。お進み下さい。もう少しでお茶会が始まります」

「ひぅっ!ぁぃ……ぅぅぅ」


 憲兵の冷たい声。それに反応して少しずつ会場内へと進んで行く、ティファニー王子。


「あれがオーブ王国が差し出した人質ですか」

「品がない……なだろうか?あの覇気のない。顔は」

「あれで、次代の王子ですか。我が皇国の第一皇子様を見習ってもらいたいものですな」


 今にも泣き出しそうな、幼子のティファニー王子を見て冷笑する、アルティミス皇国の皇族や大貴族達。


 そして、そんな光景を見て、母様はひたいに青筋を浮かべていた。


「はぁ……最悪な気分ね。あんな小さい子を見世物にするなんて」

「…………母様?」

「ティファニーちゃん。いらっしゃい!アナタの席は私の隣よ」


 ビリッと覇気がある声。会場内に母様の美しい声が響いた。


「ぅぅぁ?……ユキナ様!!」


 そして、ティファニー王子は、お母様を見つけると急いで駆け寄って来たと思えば、母様に勢いよく抱きついた。


「ユキナ様!!」

「久しぶりね。ティファニーちゃん………少し痩せたかしら?」

「うぅぅ……食べるモノないから……ティファが交渉なの」

「………交渉?……あぁ、それでティファニーちゃんが人質にこの皇国に来たのね」

「ぁぃ……ユキナ様……ぅぅぅ…ユキナ様」

「はいはい。ずっと怖かったのね……しばらく私の膝の上で寝てなさい。ティファニーちゃん」

「……ぁぃ」


 母様……ユキナ・レーヴァトス・トルバトスは、極東にある国の姫だった。そして、オーブ王国の王族の王妃とも非常に仲良く。


 母様の10代の頃は、オーブ王国の王妃と共に冒険者パーティーを組み大冒険していたとか。そして、母様オーブ王国は隣国でもあるため、妹のコハクを連れて、皇国でのストレス発散のため、ちょくちょくオーブ王国へと遊びに行っていたらしい。


 そのため、ティファニー王子とも面識があり仲が良いんだろう。


 ちなみに、赤子の頃から城の中で引きこもりだった俺との面識はほとんどなく。会ったのも数回くらいだ。いや、会わなかったのには理由がちゃんとあったんだが。


「コハクちゃん~!こんにちは」

「…………ティファ、ティファ~!」


 ティファニー王子と妹のコハクが仲良く手を握り合っている。


「…………誰?」

「は?……ヨルだけど。なにか?」

「…………ヨル?知らない子」

「……だろうね」


 ……ティファニー王子に睨まれて警戒されている。そりゃあそうだ。宿敵同士なんだかな。


 ティファニー・オーブ・オーブ・アルティシアは、この世界……『アルティミス・オーブ』の主人公。


 10数年後。アルティミス皇国と戦争を行い。勝利する人物。この世界に愛された人物。


 ……そう。この子は俺を殺すかもしれない宿敵なんだ。だから、あまり近寄りたくもなく。関わってはいけない。いつ死亡フラグが起こるかわからないからな。


「アハハ……2人とも会うのは数ヶ月ぶりかしら?幼馴染みみたいなものなんだから仲良くしなさいね」


 母様がニヤニヤしながらそう告げる。なにが嬉しいんだろうか?


「…………だって」

「やっ!……コハク。助けて」

「…………嫌だそうです。母様」

「そう。それじゃあ、これから少しずつ仲良くなれるといいわね。ヨルにティファニーちゃん」


 なぜ、ニヤニヤしてるんだ。この人は……ん?何だ?周りの様子が。


「第二妃ユキナめ……余計なことを。人質は惨めにさらせばいいものを」

「しっ!聞かれたらどうする。ユキナ様はヒノモノ国の王女でもある……消されるぞ」

「あ、あぁ、そうだったな。しかし、あの美しさ……子持ちとも思えんな。皇帝陛下が羨ましい」

「……まぁ、慌てるな。ことが上手くいけば。その罪をユキナ様に……」


 母さんへの話をしているのか?あいつ等は……第一妃カトレアの腰巾着こしぎんちゃくだったな。


「…………怪しい」

「…………なにがぁ?」

「いや、別に」

「………ムカぁ!」


 ムカぁとはななんだ。ティファニーめ、俺をなめてるな。母様には、あれだけ懐いてるのに。いや、俺も殺されるかもしれない相手と仲良くする気は、さらさらはないけどな。


「あっ!そうだ。ヨル」

「はい、母様」

「ティファニーちゃんは、オーブ王国からの人質で、しばらくの間、アルティミス皇国のお城で一緒に暮らすから、お世話してあげてね。よろしくね」

「…………はい?」


 宿敵のティファニー王子の面倒を俺がするだと?それってつまり、四六時中、死亡フラグが立っているようなものじゃないのか?


「よろしく……ヨル」


◇◇◇


「ハハハ!!オーブ王国のティファニー王子を招いてのお茶会を始めようぞ。さぁ、さぁ!!強固なる同盟に祝宴をっ!」

「…………乾杯」「乾杯ですわ!!」


「「「おおおおぉぉっ!!」」」


 アルティミス皇国の《《前皇帝》》による、お茶会開始の挨拶が終わり。お茶会は始まった。


 そして、現皇帝の父様は死んだ魚の目で、母様や俺の方を羨ましいそうに見ている。


「………あれがオーブ王国のティファニーか」

「なによ、アナタ。また第二妃のあの女に見とれているの?私は第一妃。私の方が偉いのよ」

「いやいや、誤解だよ。カトレア。見惚れてなどいないさ」

「ハハハ!相変わらず。カトレアとは仲が良いのだな。ユリウス……どうだ?これを機に第二妃とは別れては?その後は、わしの妻として、ユキナを迎えてやってもよいぞ」

「まぁ、素晴らしいご提案ですわ。お義父様」

「じゃろう?どうだ?ユリウスよ。ハハハ!!」


 傀儡かいらい政治というやつだろう。前皇帝エルヴィンは、早期に皇帝の座を若き現皇帝ユリウスに譲った。


 その後は、懇意にしている大貴族リファレンス家と組んでアルティミス皇国の政略を好き勝手に裏で動かしている。


 現皇帝の裏側でだ。裏で暗躍していれば、なにかあった場合は、現皇帝の父に罪を擦り付けられるからな。


「アハハ……またまたご冗談を父上、カトレア……ユキナは僕が選んだ第二妃ですよ。あり得ません」

「………ちっ!」

「………そうか。それは残念な返答だな。ユリウス」

「アハハ……そ、そうですか」


 前皇帝エルヴィンが、父様を睨んでいる。


 ……これは噂話だが。母様は本来、前皇帝エルヴィンに嫁ぐ予定だったらしい。


 だが、結果は母様と父様が結ばれて、俺が産まれた。母様達からすれば可愛い子供でも。前皇帝エルヴィンからしてみれば俺の存在というのは、憎たらしくてしょうがないんじゃないだろうか?


「…………相変わらず。ガン見してくるわね。あの、エロ爺さん。気持ち悪いわね。そんなに私の身体が好みなのかしらね?ヨル」

「……言いすぎでは?」


 母様は言いたいことは隠さず言うタイプだ。周りの目など気にしない。


「もしくは、カトレアの仕業かは分からないけど……普段、表舞台に現れない私達のために「お茶会」まで開くなんて。邪魔な私達をまとめて始末する気なのかしら?どこの誰かは知らないけど……この紅茶、変な味ね」


 そして、勘も鋭い……しかし、抜けている所もちゃんとある。毒入りの紅茶を、なんの警戒もなしに飲み干してしまった。


「母様。それ……飲み切っては駄目です」

「……へ?……ごほっ!」


 しまったと思った。母様との話しに夢中になっていて、毒殺の件を忘れてしまっていた。


「………おええ!!何だ?この味は?」

「あああああぁぁ!!喉が焼けるようぅ!?」

「意識が……薄れいく!?」


 会場内いた人々が倒れていく。アルティミス皇国が滅びの道へと向かい始める最初の分岐点イベント。「大量毒殺茶会」……始まってしまった。


「ケホッ!ケホッ!……にーにーおクチから……なんか……」

「コハク!……今治してあげるよ。〈オール・ヒーリング〉」

「ケホッ……にーにー?……」


 師匠から習ったばかりの回復魔法。全回復〈オール・ヒーリング〉で、妹の毒状態を治していく。


「………ケホッ……にーにー?」

「うん。もう大丈夫だよ。コハク……母様とティファニー王子にも回復魔法をかけないと……〈オール・ヒーリング〉」


 宿敵だろうと関係ない。目の前で苦しんでいる人がいれるならば、助けてあげないといけない。


「……ごほっ!……身体が軽い?……ヨルの魔法なの?」

「母様。無事で良かった~!」

「ヨル……貴方、回復魔法なんて使えたのね?どこで覚えたの?」

「…………内緒です」

「そう。なら良いわ。聞かないでおく……この会場に居る人達にもかけてくれるかしら?」

「はい。簡単にできます……〈ゼンオール・ヒーリング〉」

「……簡……単?」

 

 右手を天井にかざして、魔力を込める。そして、この会場に居る全員に回復魔法をかけていく。ただ、元から毒も回っていない元気な人間には逆効果になるよう回復魔法だが。


「お、おい!……何だ?この緑の光は?……頭の中が……ぐるんぐるんしてきたぞ」

「お、俺もだ……視界が7色に光ってる?」


 あれは?第一妃カトレア派閥の貴族達か。ティファニー王子を見て悪巧みしてた奴等だったな。


 ……急な状態回復の魔法を当てられて、身体が拒否反応を起こしたんだろう。口から泡を吹いて、床に倒れ込んでしまった。


「母様。あの人達……多分、毒殺の犯人」

「……犯人?……そう。なら、拷問してみるわ。クノン!」

「はい、ユキナ様」

「……くノ一?」

「あいつ等を、隠し部屋に連れていって拷問しなさい。ヨルの言うことが犯人なら、ユリウスに引き渡すわ」

「はっ!」


 一瞬、忍者の服装をした子供が現れたと思ったら。すぐに消えた……例の貴族の男達もだ。


「毒殺かぁ……大事になりそうね。でも……」

「母様?」


 母様の右手が、俺の頭に乗る……そして、優しく撫でてくれた。しかも、優しく微笑んでいる。


「助けてくれてありがとう。ヨル……大好き。本当にありがとう」

「母様!……ちょっと。なんで抱きしめて……恥ずかしいですよ」


 その後は、ぎゅっと優しく抱っこされた。ずっと……ずっと抱っこしてくれていたんだ。 


「…………ヨル君。すごぃ」


 そんな様子の全てをティファニー王子にバッチリ見られていることなど、俺は予想もしていなかった。



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