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無害で悪辣なる第二皇子の成長記

〖質問させて下さい。貴方の人生は楽しかったですか?〗


 いや、あの交通事故以来……大切な家族を失ってからは、最悪な人生だったと思う。


〖後悔ばかりの人生でしたか?性格は?心は壊れてゆがんだ心にならなかったんですか?〗


 なりかけてはいたと思う。思うが……大切な人と出会えて。自身が死ぬのと引き換えに、その人を救えたから後悔は微塵みじんもない。


 彼女を―――カオリを救えてよかったと心の底から思ってる。


〖………素晴らしい回答ですね。大変な運命にあった方とは思えません。貴方は生きるべき人でした〗


 そうか。なら、さっさと俺を消してくれ。もう、ゆっくりと休みたいんだ。


〖そうもいきません。貴方は死ぬべき人ではありませんでした。優しくて意思の強いお方……生きて下さい。生きて生きて生きて……今度のバットエンドをくつがして。幸せになって下さい。ユル〗


 ちょっと待って……なんで、俺の名前を知っている?バットエンドってなん……




 夢……生まれ変わった人生での初夢はつゆめか。


「………………」

「………………」


 天井をジーッと見つめる。揺り篭からの景色。そして、手足をパタパタさせるが赤ん坊なので動けない。


 両眼をおもいっきり開けて周囲を見ると、メイドさんが椅子に座って眠っていた。


 近くでうたた寝している、側付きのメイド「リンネさん」。産まれたてだというのに、俺が、まったく泣き叫ばないので暇になったのだろう。


「………………」


 静かにこれまで起こったことを冷静に俯瞰ふかんして考える。輪廻転生……悪役のゲームキャラに?


 普通は、人が死ねば地獄か天国にいくものじゃないだろうか?そして、生きていた全ての記憶を忘れて違う何者かになるもの……だと思っていた。


 それが全然違っていた。死んだら、謎の声と会話していて。次に意識を取り戻したら、赤ん坊なのに意思がある。思考できる存在になっていた。

 

 大学時代どハマりした『アルティミス・オーブ』の世界。アルティミス皇国の第二皇子 ヨル・レーヴァトス・トルバトス本人として転生した。


「………………」

「………………ハッ!ここは!?…………ヨル様の部屋でしたね……スゥー……スゥー」


 俺が静か過ぎて、リンネさんは再び深い眠りについた。


 まぁ、この人は独り言が多いので、寝ていてもらった方がストレスがないからいいか。


 そして、リンネさんいわく……ヨル・レーヴァトス・トルバトスは、1度死んだらしい。


 いや、仮死状態にあったとか……母がヨルを出産した後、心臓が止まっていたそうだ。


 その後に、回復魔法などをかけても反応も、心臓の鼓動こどうすら聞こえなくなり。皆が、ヨルの生命活動を諦めた時にいきなり息を吹き替えしたとか。


 そんな事情をリンネさんは、一方的に赤ん坊の俺に話していた。話したとしても、赤ん坊の俺がそんな話を理解できないと思ったのだろう。


「………………」


 これは俺の勝手な判断だが。本来、産まれてくるはずだったヨルが死に。その代替え品として俺の魂が使われたんじゃないかと思っている。


 世界はとても不平等で理不尽だ。死んで楽になりたいと思っても、転生させられるくらいに理不尽だ。


 大陸最大級の大国アルティミス皇国の第二皇子 ヨル・レーヴァトス・トルバトスか。


 不羈之才ふきのさいはあるらしいが。傲慢不遜、怠惰、残虐非道と性格設定は、悪辣あくらつそのものだった。幼少の頃から、国の王族や貴族……果ては隣国の王族の子供まで苛めいた悪ガキか。


 最終的には、ゲームの主人公である男装王女ティファニーに戦争を仕掛けて、アルティミス皇国を滅ぼす原因を作る大罪人だ。


「………………」


 難儀なんぎな悪役キャラに転生したものだな。たしか『アルティミス・オーブ』の、どのルートでも死ぬキャラだったはず。かなり酷い死ぬキャラだったはずだ。


 剣で身体中を滅多さしにされて死ぬイベントもあったのも覚えている。


「……………オギャ」

「……………ふごぉ!?」


 まずい……このままではまた死ぬ。


 ヨシキに包丁で刺された時、物凄く痛かった。あんなのをもう一度味わうなんてごめんだ。


 大別な彼女を救えたんだ。俺はそれで満足だった……なのに、また刺されて死ぬのは嫌だ。


 死ぬなら、今度の人生は天寿をまっとうして死にたい。


「……………シュホァァ」


 修行だ。死なないためにも修行。


「……………ぐごぉ!?」


 大学時代遊び尽くして得た原作知識で、自分が死なないための。生き残るための修行をしなければ。


 俺は密かに決心し。すぐに赤ん坊の時期でも可能な魔力修行へと取りかかった。


 これも全ては、4才の時に起きる最初の断罪イベントをクリアするためでもあるからな。


◇◇◇


一才の頃、自身の魔力増強と魔力操作の修行に費やした。身体を動かさないので仕方ない。小さい頃から、魔力を枯渇させるまで使って、回復したらまた枯渇するまで使う。


 それが最も効率良く魔力量を増やして、魔力操作性を向上させられるからな。1日も無駄にはできない。《《自身の身を守り、この世界での家族達を救う》》ためには必要なことだからな。


「………………」

「ヨルは本当に大人しくて良い子よね。リンネ」

「静か過ぎてビックリですよ~!扱いやすくて、大助かりです。サボり放題ですよ」

「あら?サボってたの?……なら、しばらく減給ね」

「へぎゃぁ!?」


 俺があまりにも泣きじゃくらず。しかめっ面をしているため、不気味な第二皇子なんて言われるようになったのもこの頃か。


 ちなみに、母の名前はユキナ・レーヴァトス・トルバトスと言って。大陸極東の島国出身らしい。アルティミス皇帝の第二妃きさきだ。


 二才頃、身体も成長し揺り篭を卒業した。また、片言だが喋れるようにもなってきた。


 魔力量もかなり増え、魔力操作も繊細になってきた。


 また、四足歩行でハイハイもできるようになったので、側付きメイドのリンネさんの目を盗んでは、お城にある大図書館へと入り浸り本を読みあさり始めた。この世界の言語はだいたい日本語なので、書いてある文字も日本語だったため読めた。


「ヨル様。ヨル様がみたい本、こちらの床に置いておきますぞ」

「…………あぃ」


 最近、大図書館に入り浸っているせいか。大図書館の司書が、俺が読みたい本を指差すと持ってきてくれるようになった。ありがたいことだ。


「………………」

「ヨル様~!また私が眠りこけってる間に、大図書館に来たんですか?」

「…………まぅ」

「……ヨル様って、文字読めるですか?」

「…………のぉ」

「あ~!絵を見てるんですか。なるほどなるほど。それじゃあ、私は図書館でサボって寝てるで。ずっと図書館に一緒にいましょうね」

「しゃぃ………」

「はいタッチ……ヨル様って、本当に手がかかりませんよね。他の皇子様や王女様なんて、やんやんやんやんなんですよ~!」


 そんなの当たり前だ。俺は精神年齢だったら、すでに24才なのだからな。


「……………」

「………ごがぁ……ヨル様は良い子ですね」


 リンネさんは床に寝転がって寝始めた。本当に寝るのが好きな人だな。この人は。


 この頃になると。第二皇子は字も読めないくせに、大図書館で絵本を見る変わった子供とか陰で言われるようになり始めた。


 馬鹿を言わないでほしい。本を読んで、その本に書かれた作者の考え方や、意図を読み解くには沢山の時間がかかる。正しい知識。変わった知識。雑学はどれだけ脳に詰め込んでも重みにはならない。


 本来のヨル・レーヴァトス・トルバトスは、アホの子だが。頭は悪くない、それなら早い段階で知識を吸収しておくに越したことはないじゃないか。それに、赤ん坊の今なら好き放題動き回れるからな。


 変な動きをしていても、この可愛らしい愛嬌でだいたいは誤魔化せる。


「ヨル様は、本当に本好きですな。将来は、アルキメデスのような大学者になるかもしれませんな」

「…………ぃぅ」


 三才頃、魔力も莫大に増えた。色々な本を読んで基本的な魔法も覚えた。だんだん喋れるようになってきたので簡単な魔法も使えるようになった。アルティミス皇国内なら自由に転移できるし、空も飛べる。それと妹も産まれた。


 そして、なんと四足歩行から二足歩行へと進化を遂げた。大進化だ。これなら両手が使えるようになる。


 使えるようになったなら、やるべきことは1つ、あらゆる武器を極めること。


 だから人の目を盗んでは、リンネさんの目を盗んではお城を抜け出して静かな森で、剣の修行をしていた。


「ほう。お前……子供なのに真面目に何をしている?」


 黙って棒切れを振るっている俺の前に、魔女が現れた。銀髪、白肌、白の服、白いフード……全てが白の魔女が居た。


「…………誰?」

「大魔女シロンだ。剣術教えてやろうか?ん?」


 『アルティミス・オーブ』の隠しキャラ。この日、この時間、満月の日に低確率で主人公の前に現れるレアな師匠キャラだ。俺はこの人に会うために。今日、この森にやって来たんだ。


 この情報をこの世界で知っているのは、俺しかいない。


「…………全部教えほしい。俺が死なないように全部」

「ほう……全部か。欲張りな奴だが。気に入った……いいぞ」

「ヨルって言います…………ありがとう。感謝する」

「ハハハ。幼子おさなごが使う言葉使いじゃないな。面白い……近くの草木の中に隠れている奴よりも。面白いお前に決めたよ。これからよろしく。ヨル」


「………………」


 少し離れた場所で、金髪の誰かに見られていた気がした。だか、気にしないことにした……それが、この世界の主役だったとしても。


 四才頃、赤ん坊の頃から、陰ながら努力した結果。あらゆる魔法、知識、剣術が高レベルにまで高めることができた。これも、シロン師匠の容赦なきスパルタのおかげだろうか。そのうち仕返ししてやりたい。


 身体もだいぶたくましくなった。髪も伸びて今は艶やかな金髪をポニーテールで結んでいる。父、アルティミス皇帝と同じ髪色。


 いつも多忙らしく。同じ城に住んでいても父とは月に2、3回会うことはなかった。


「…………こんにちは。お父様」

「あ、あぁ……ヨルだ……よな?ユキナ」

「そうですよ。貴方……他の子供達に構いすぎて、自分の子供かも分からなくなったのかしら?」

「いや、そんなことは……ヨルは、物静かで手がかからないと有名だからな。会う優先順位が下がるんだ」

「はぁ~?……極東に帰ろうかしら」

「そ、それは止めてくれ!ユキナ!!」


 アルティミス皇国・現皇帝アル・レーヴァトス・トルバトス。金髪長身のイケメンだ。


 第二 きさきユキナ……俺の母さんにぞっこん。第一妃のカトレアから受けるストレスが極限状態になると、母の元へとやって来る。


「もう駄目だ。王族と貴族の政略結婚とはいえ。カトレアを第一妃にするんじゃなかった。なぁ、ユキナ。ヨルは物静かで優秀なんだろう?この子に第一継承権を……」

「私の子供を皇国の政略に巻き飲まないで。結婚する時にそう決めたでしょう」

「いや……でも、第二皇子のアレンが、あんなに傲慢に育つなんて思わなかったんだよ」

「知らないわよ。私は娘のお世話で忙しいの。ヨルの時と違って、ちゃんと泣きじゃくってくれるんだもの。ねぇ?コハクちゃん」

「まぅ~!」

「……ハハハ。可愛いな。小さい頃のユキナそっくりだな」


 俺はボーッと母と父のやり取りを観察していた。リンネさんいわく、2人は小さい頃の幼馴染みで。結婚を約束していたが。


「相変わらず。アルティミス皇帝陛下とユキナ様はラブラブですね。ヨル様」

「…………うん」


 前皇帝……俺の祖父にあたる人が、国外から来た母を第一妃にするのを拒んだため。第二妃として父と結ばれた。


 皇族の政略なんてややこしいことは考えたくないし。今は自分が生き残ることを考えないといけない。


 四才に《《なってしまった》》……遂に最初の死亡ルートが始まってしまう。


  『アルティミス・オーブ』が王子として暮らす隣国オーブ王国の客人を招いて行われる。庭園お茶会が。


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