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与える姉と、欲しがる妹の終わらない朝  作者: はるかに及ばない


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9/24

― 光眼の伯爵令嬢 ―

あの騒乱から数日。

屋敷の屋根はまだ焦げ、紅茶の香りには微妙に火薬の残り香が混じっていた。


お姉ちゃんは、崩れたテラスで一人ティーカップを傾けながらぼんやり呟いた。


お姉ちゃん:「……アルベルト様が欲しがったわけじゃないのに爆発した。

 でも……まぁ、コレはコレで良いかしら」


彼女の周りを小鳥が飛び、静かな風が吹き抜ける。

妹も両親も爆発後の片づけで忙しく、久々に訪れた静寂。


その静けさの中で、お姉ちゃんはふと天を見上げた。


お姉ちゃん:「ねぇ、女神様。次はもう、何も壊れないスキルが欲しいの」



空が光り、女神アモーレが姿を現した。

今回は妙に神妙な顔つきだった。


女神:「……あなた、本当に懲りないわね」

お姉ちゃん:「もう派手なのは要りません。ただ、落ち着いた力が欲しいんです」

女神:「ふむ……つまり、“穏やかで、シンプルで、絶対に暴走しないスキル”ね?」

お姉ちゃん:「はい!」


女神は長い溜め息をつき、杖を掲げた。


女神:「よろしい。あなたに授けましょう。

 それは……《ルクス・オクルス(光る目)》」


お姉ちゃん:「……名前からして地味っぽいですね」

女神:「光るだけよ。ほんとに。ただ、ちょっとだけかっこいい。」



翌朝。


妹:「お姉ちゃん、今度はどんなスキルもらったの?」

お姉ちゃん:「見てなさい――《ルクス・オクルス》。」


ピカーッ


お姉ちゃんの目が淡い光を帯び、虹色に瞬いた。

特に何も起きない。

ただ、美しい。


妹:「……えっ、それだけ?」

お姉ちゃん:「ええ。それだけ。」


妹:「……(沈黙)……すっごくいい!」



それから数日。

お姉ちゃんが目を光らせると、なぜか周りの人の気持ちが少し穏やかになった。


執事:「不思議ですな……お嬢様が目を光らせると、仕事の手も止まって心が落ち着く……」

母:「私たちも、もう“譲りなさい”って叫ばなくなったわ」

父:「……ウホッ(小声)」


妹:「お姉ちゃんの光、あったかいね」

お姉ちゃん:「ええ……今度こそ、本当にこれでいいの」



夜。お姉ちゃんの夢に女神が現れた。


女神:「どう? 今回は爆発してないでしょ?」

お姉ちゃん:「はい。……それに、誰も傷つかない」

女神:「“光”はね、ただ照らすだけ。でも、それがいちばん人を導くの」

お姉ちゃん:「……ありがとうございます。ようやく、平和に暮らせそうです」


女神:「ふふ、そうね。でももし次にスキルを願うときは――」

お姉ちゃん:「また来てくれますか?」

女神:「……あなたが紅茶をこぼした時にでも、ね」



それから伯爵家は、静かな日々を取り戻した。


妹は少しずつ“ほひぃぃぃ”を卒業し、

両親は“譲りなさい”を“手伝いなさい”に変えた。


そしてお姉ちゃんは、今日も穏やかな光を灯しながら、

優しく微笑んでいる。


夜の廊下で、かすかに光る二つの瞳。

その輝きは――

爆発も、ゴリラも、時間加速すら越えた、真の平和の証だった。



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