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与える姉と、欲しがる妹の終わらない朝  作者: はるかに及ばない


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6/24

― 優雅なる時間の奔流 ―

エレガント・スキル《グラース・エテルネル》が広がった伯爵家では、

時が止まったかのように完璧なマナーが保たれていた。


ティーカップを傾ける角度、

笑う時の呼吸、

すべてがまるで舞踏会の機械仕掛け。


お姉ちゃん(ため息):「……もう限界だわ。

 誰も笑わない、誰も動かない、紅茶は冷めない……息苦しすぎる……!」


妹:「お姉さま……私ももう“ウホ”が恋しいですわ……」



夜。お姉ちゃんは天に向かって祈った。


お姉ちゃん:「女神様! お願い、もうエレガントじゃなくていいです!

 普通の、ちょっとドタバタした日常に戻してください!」


光が揺れ、女神アモーレが現れる。


女神:「あら、せっかく洗練されたのにもったいないわねぇ。

 ……でも、しょうがないわ。戻すには“時の流れ”を少し動かす必要があるの」


お姉ちゃん:「動かす? どうやって?」

女神:「あなたが心の底から“時を戻したい”と思えばいいのよ」


お姉ちゃん(目を閉じて):「お願い……時よ、戻れ――!」



その瞬間、部屋中が淡く光に包まれた。

だが、どこかがおかしい。


風が吹き抜け、壁の時計が高速回転を始める。


妹:「お姉さま!? これ……戻ってません! むしろ進んでますぅぅぅ!!!」

お姉ちゃん:「えっ!? ちょ、ちょっと待って、なにこれ!?」


女神(あわてて巻き戻しの呪文を読みながら):「まさか……“戻れ”と“進め”のスペル、逆に詠んでる!?!?」



庭の花が一瞬で咲いて枯れ、

太陽が空を駆け抜け、

伯爵家の壁紙が勝手にリニューアルしていく。


妹:「あぁぁぁぁぁっ!! 紅茶が蒸発して再補充されてる!!」

お姉ちゃん:「家具が進化してる!? 椅子が勝手に学習してるぅぅぅ!!」


一日が一秒で過ぎ、

一年が十秒で巡る。


エレガントなはずの空間が、

上品すぎる超速社会へと変貌していった。



十年が一瞬で流れ、

家族は“完璧な礼儀ロボット”のように自動化されていった。


妹:「お姉さま……人々のマナーが……速すぎて見えませんわ……」

お姉ちゃん:「これもう、優雅じゃなくて相対性理論の世界よ!!!」


女神:「止めるには、“本当の気持ち”を言うのよ!」

お姉ちゃん:「えっ!?」

女神:「あなたが何を本当に欲しいのか、言葉にして!!」


お姉ちゃん(息を呑み):「私が欲しいのは――

 妹と、普通に喧嘩して、笑って、ティーカップ割って怒られる、そんな日常よ!!!」



その言葉に、

止まっていた心が動き、

暴走していた時間が静かに収束した。


光が消え、屋敷はふたたび穏やかに。

妹は笑いながら紅茶をこぼした。


妹:「あーあ、またテーブル汚しちゃった!」

お姉ちゃん:「ふふ……それでいいのよ」


女神(満足そうに):「ようやく“本来の時”を取り戻したのね」



エピローグ ― “ちょうどいい時間”


翌朝。

紅茶はちゃんと冷め、風はゆるやかに流れていた。

妹は欲しい病を少しだけ克服し、

両親は相変わらずおかしなことを言っているが、もう笑って済ませられる。


お姉ちゃん:「ねぇ女神様、もう次は“普通のスキル”でお願いしますね」

女神:「ふふっ、でもね……“普通”っていうのも、けっこう難しいのよ?」


お姉ちゃん:「……たしかに」


そう言って、紅茶を一口。

いつもより、ちょっとだけ甘く感じた。



時の加速編

――完。

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