― エレガント・アセンション ―
ゴリラ信仰が定着してから数週間。
妹は相変わらず楽しそうに“ゴリラ語”を話し、
両親はバナナティーを飲みながらウホウホ談笑していた。
お姉ちゃん(遠い目):「……上流階級とは……?」
夜。満月の光の下、お姉ちゃんは再び天に祈った。
お姉ちゃん:「女神様ぁぁぁぁぁぁ!!!
もう無理です! 野生すぎます!!
もっとエレガントで、こう……上品で知的なスキルをください!!」
女神アモーレは、今回なぜかシャンパン片手に現れた。
女神:「はいはい、わかったわかった。野生は卒業ね?」
お姉ちゃん:「はい! もう獣臭いのはお腹いっぱいです!」
女神:「ふむ……では、伯爵家にふさわしい“優雅な理性のスキル”を授けましょう。
その名も――」
《グラース・エテルネル(永遠の優雅)》
お姉ちゃん:「おお……なんか名前からして高貴!」
女神:「このスキルを使えば、あなたの周囲は“理性と品位の結界”に包まれ、
粗野な言葉も、野蛮な欲望も、全部“紅茶会レベル”に変換されます。」
お姉ちゃん:「えっ、最高じゃないですか!」
女神:「ただし、副作用として“強制マナー化”が起きるかも」
お姉ちゃん:「副作用って……?」
女神:「ま、細かいことは気にしない気にしない♪」
翌朝。
妹が廊下を駆けてきた。
妹:「お姉ちゃーん! 婚約者さんのこと、また――」
お姉ちゃん:「グラース・エテルネル。」
――キィィィン
空気が澄み、薔薇の香りが漂い出す。
妹が口を開こうとした瞬間、言葉が変換された。
妹:「……アルベルト様のご趣味と嗜みについて、丁寧に語り合いたいですわっ!!」
お姉ちゃん:「!? 言葉遣いが急に社交界!!」
さらに両親も――
両親:「ウホウホ――」
→ 「本日は素晴らしいバナナティーの香りでございますな、おほほ!」
お姉ちゃん:「すごい! 世界が貴族的に!」
しかし、午後。
妹がふと庭に咲く花を見つめて呟いた。
妹:「お姉ちゃんのドレス……ほしい、いや……“お借りしてもよろしいかしら?”」
お姉ちゃん:「ええ、いいわよ」
その瞬間、妹の背後に幻のティーテーブルが出現。
妹は勝手にカップを取り、見えない観客に向かってお辞儀した。
妹:「ご覧なさい、これが“エレガンス”の極みですわ……」
お姉ちゃん:「……まさか、マナーが具現化してる!?」
屋敷中の家具が整列し、
紅茶が自動的に注がれ、
全員が一斉に優雅に紅茶を啜る。
女神(上空から):「あー……やっぱりやりすぎたかも」
その夜、屋敷は“完璧な礼儀”に包まれていた。
会話は全て社交辞令、笑い声は三拍子。
妹:「お姉さま。私、もはやゴリラの野生すら恋しく感じますわ」
お姉ちゃん:「私もですわ……人間、あまりにエレガントすぎると息苦しいのね……」
女神:「ま、いいじゃない。文明の頂点よ」
お姉ちゃん:「……次こそ、ちょうどいいスキルが欲しいです」
女神:「あなた、欲しがりスキル開発者みたいになってきたわね」
エピローグ
翌朝。
屋敷には紅茶の香りが満ち、
みんながやたら綺麗な姿勢で暮らしていた。
妹:「お姉さま、今日のご予定は?」
お姉ちゃん:「まずは……マナーに縛られない自由を取り戻すことですわ」
空の上で、女神が笑っていた。
「人の欲望は止まらない……
でも、たまにティータイムくらい取った方がいいのよね」
エレガントスキル編
――完。
バナナティーって本当にあるのか調べたら、普通に美味しそうだった。




