― ゴリラ受容期 ―
ゴリラスキルが発動してからというもの、伯爵家は平和そのものだった。
妹が何かを欲しがるたびに
それは妹にだけ“ゴリラ”に見える。
結果、
妹:「もうイヤァァ!! ゴリラ怖いぃぃぃ!!」
→ 欲望消滅。
お姉ちゃん:「ありがとう女神様……やっと静かになったわ……」
執事:「長年の騒動もようやく終息ですな」
──そう思っていた。
ある日、妹が鏡を見つめながら呟いた。
妹:「……でも……このゴリラ柄ドレス、なんか見慣れると悪くないかも」
お姉ちゃん:「!? ちょっと待って、それ慣れちゃダメなやつ!!」
妹:「だって、このドレス、筋肉の陰影が美しいの。
しかも触ると……温もりがある気がする!」
お姉ちゃん:「それ錯覚だから!!」
だが、妹の中で何かが目覚め始めていた。
妹は屋敷の庭に出て、
ゴリラに見える使用人(※普通の執事)に声をかけた。
妹:「……ねぇ、あなた、今日もウホってる?」
執事:「は、はい?(えっ私?)」
妹:「あっ、やっぱり! 優しい目をしてる……!
ねぇお姉ちゃん、やっぱり“ゴリラがいい”わ!」
お姉ちゃん:「いやいやいやいや!? なにが“やっぱり”なの!?」
妹は目を輝かせて続けた。
妹:「お姉ちゃんの婚約者様も、あの立派な背筋……もはや神々しい!
むしろ、普通の人間の方が頼りなく見える!」
お姉ちゃん:「ゴリラ観が歪みすぎてる!!!」
夜。
お姉ちゃんは天に向かって叫んだ。
お姉ちゃん:「女神様ぁぁぁぁぁ!!!またですぅぅぅ!!」
光が現れ、女神アモーレがため息をつきながら降りてきた。
女神:「……今度は何?」
お姉ちゃん:「妹が……ゴリラに恋してます!!」
女神:「(遠い目)……人類、慣れるの早いわね」
お姉ちゃん:「どうにかして!」
女神:「うーん……じゃあ、“ゴリラが見えるスキル”を妹から剥がす?」
お姉ちゃん:「はい、お願いします!」
女神:「ただし、解除には本人の“欲望の宣言”が必要よ」
お姉ちゃんは妹を中庭へ呼び出した。
お姉ちゃん:「お願い、妹。もう“欲しい”って言わないで」
妹:「……でもお姉ちゃん。私、もう“ゴリラが欲しい”の」
女神:「(ピクッ)……はいアウト」
妹の頭上に光の渦が生まれ、
空に巨大な影が浮かび上がる。
――それは黄金に輝く、王冠を戴くゴリラ神だった。
ゴリラ神:「ウホ……ウホウホ……(意訳:欲望を昇華せよ)」
妹:「神ゴリラ様ぁぁぁぁぁぁ!!」
お姉ちゃん:「やめて! 正座して! 拝むなぁ!!」
女神アモーレ:「……なんかもう、私の管轄じゃなくなったわね」
両親(ウホウホ化済み):「ウホウホウホホホホホ!!!!」
お姉ちゃん:「父様母様まで完全に信仰方向ぉぉぉぉ!!!」
エピローグ ― ゴリラの平和
翌日。
伯爵家の庭には「ゴリラ像」と「黄金のバナナ神殿」が建立されていた。
妹はゴリラ信仰の巫女として崇められ、
村人たちは不思議と平和になった。
お姉ちゃん:「……なんだか、もう抵抗する気力がないわ……」
女神:「人は“慣れる”生き物だからね……」
妹:「お姉ちゃん、ゴリラはいいぞ!」
お姉ちゃん:「……バーリア(小声)」
空には、神ゴリラの優しい咆哮が響いた。
「ウホォォォォォ!!!」
ゴリラスキル編
――完。




