― ゴリラの祝福 ―
伯爵家の妹の“欲しい病”は、もはや手の施しようがなかった。
妹:「お姉ちゃんの婚約者、ほひいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
お姉ちゃん:「……(白目)も、もうやめて……」
バリアでは防ぎきれず、婚約者アルベルトは
“ほひぃぃぃ!”の衝撃波を受けて一時的に人格崩壊しかけていた。
両親:「お姉ちゃんなんだから譲りなさい!」
お姉ちゃん:「バーリア!」
両親:「おおおおおおおおお!!!」
――そして、屋敷は再び戦場と化した。
夜。
お姉ちゃんはシャンデリアの下で天を仰いでいた。
お姉ちゃん:「女神様ぁぁぁぁぁっ!!もう無理ですぅぅぅ!!!」
その叫びに応じて、あの女神アモーレが光の中から再び現れる。
女神:「……またあなたね」
お姉ちゃん:「お願いです、妹の“欲しい病”を止めてください!
バリアは破られるし、婚約者は狙われるし、
両親まで“うりぃぃぃ!”とか言い出しました!」
女神:「ふむ……わかったわ。ならば、究極の防御スキルを授けましょう」
女神は指先で光を描きながら告げた。
女神:「このスキルは、欲望の形を“真の姿”に変えるもの。
妹が“欲しい”と感じた瞬間、それは彼女にだけ“ゴリラ”に見えるでしょう」
お姉ちゃん:「えっ!? なんか想像以上に物理的!!」
女神:「簡単に言うと、“欲望を原始に戻す”のよ。
人間が最初に欲した存在、それが……ゴリラ。」
お姉ちゃん:「理屈がめちゃくちゃ!!!」
妹:「お姉ちゃんのドレス、ほひ――」
→ 目の前のドレスが毛むくじゃらのゴリラ柄ドレスに見える。
妹:「ひぃっ!? なにこれ!? 原始の森!?」
靴を欲しがれば――足先が“逞しいゴリラの足”に変化。
ティアラを欲しがれば――“バナナの王冠”。
そして――婚約者アルベルト。
妹:「アルベルト様、ほし……(凍結)
な、なにその胸筋!? 手がドラミングしてるぅぅぅ!!!」
目の前の婚約者が立派な銀色の背中を持つ“超紳士ゴリラ”に見える。
アルベルト(困惑):「……なぜ彼女が怯えているのだろう?」
お姉ちゃん(天を仰ぎ):「あぁ……女神様、効きすぎです」
両親:「お姉ちゃん! 妹に譲――」
→ その瞬間、二人の口から出た言葉は――
「ウホッ……ウホウホウホォォ!!!」
お姉ちゃん:「!? お父様!? お母様!? 完全に野生!!」
女神(天の声):「……ごめん、ちょっとスキルの範囲広かったかも」
以後、妹が何かを欲しがるたび、
ゴリラが現れ、両親はウホウホ言い、婚約者は筋トレしているように見えるため、
妹は自然と「もう欲しくない……」と呟くようになった。
お姉ちゃん:「ありがとう女神様。もう、家が静かになりました」
女神:「ええ。少しだけ……野性味を増したけどね」
屋敷の外では、庭師がぼそっと呟いた。
「……あの家、最近やたらバナナの香りがしますな」
お姉ちゃん:「ふぅ……平和って、こんなに尊いものなのね」
妹(遠くで):「……お姉ちゃんのリボン……ほ……(チラッ)……ゴリラ!? きゃぁぁぁ!!!」
お姉ちゃん(微笑んで):「今日も平和だわ」




