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与える姉と、欲しがる妹の終わらない朝  作者: はるかに及ばない


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23/24

外伝― 伯爵夫妻対話篇 ―

(舞台:黎明の伯爵邸。

香炉の煙がゆるやかに立ちのぼり、光はまだ薄紅。

風が御簾を揺らすたび、ウホの響きが空気を満たす。)


伯爵:「ウホホ……ウホウホウホ、ホホウホホウホ。」


日本語訳『あなや、夜もほのぼのと明けぬるかな。

いとど風、春のけしきに似たりけり。』


伯爵夫人:「ウホウホホホ、ウホホウホ……ウホホウホホホ。」


日本語訳『げに、今日もまた、あの童たちの声、

遠く廊のかなたより聞こえ候ふなり。』


伯爵:「ウホホホウホホ……ウホ、ウホウホホホホ?」


日本語訳『末の子、いまだ“欲し”と申すことを止めぬか?』


伯爵夫人:「ウホホホホホホ、ウホウホウホホホウホウホ。

ウホホホホウホウホホホ……ウホ。」


日本語訳『さるは。今朝はきぬと、ついでに庭仕の若き者までも

欲しと申して候ひぬ。』


伯爵:「ウホウホホホホホ、ウホホホウホ……ウホホ。」


日本語訳『あさましや……。

神もこの家に“ほど”を授け忘れ給ひけむか。』


伯爵夫人:「ウホホホホホホウホ、ウホホウホホホウホホ。

ウホウホホホホ……ウホ。」


日本語訳『なれども、姉君はいと静やかに譲り給ふ。

霞のごとく、うつろひ淡き御心にて。』


伯爵:「ウホホウホホホホホ、ウホウホホホホ。ウホホホ。」


日本語訳『あれは……与ふるたびに、少しづつ

光を失ひてゆくやうに見え候ふ。』


伯爵夫人:「ウホウホホ……ウホホホホホホホウホ。」


日本語訳『それ、“与ふる”と申す羽化うかのごときものにて候はむ。』


(風、かすかに揺れ、香が流れる。)


伯爵:「ウホホウホホホホ……ウホウホホホホホウホ。」


日本語訳『……風の香、かはりぬるを覚ゆるぞ。』


伯爵夫人:「ウホウホウホホホホ、ウホウホ……ウホホホウホホ。」


日本語訳『げに。まるで森の奥に棲むものの息吹、

いま目を醒ましたるやうな……。』


伯爵:「ウホウホウホホホウホホホ、ウホホホウホホホ!」


日本語訳『まさか、また“あのもの”近づき候ふや。』


伯爵夫人:「ウホホウホホホホホ、ウホホホホウホウホホウホ。」


日本語訳『いへ、それは恐るるにあらず。

包むごとき音、慈しむ鼓動のごとくにて。』


伯爵:「ウホホウホ……ウホホウホホ。ウホホホ?」


日本語訳『……汝、怖ろしくはあらぬか?』


伯爵夫人:「ウホホホホホホ……ウホウホホホホ。」


日本語訳『恐れは、うるはしきを遠ざくるなり。

ゆゑに、我はただ香を焚きて祈るのみ。』


伯爵:「ウホウホホホウホホホ、ウホホホホウホホホ。」


日本語訳『さらば、われらも静かに祈らむ。

あの子らが風とともにあらむことを。』


遠くより、重く、あたたかな低音の「……ウホ……」)


伯爵夫人:「ウホウホ……ウホホホホ。」


日本語訳『……あの声、また聞こえぬか。』


伯爵:「ウホホホホウホホホ、ウホホホ。」


日本語訳『あれは……ぎの音なり。

天地のあはひに漂ふ“慈しみ”の息吹ぞ。』


伯爵夫人:「ウホウホホホホ……ウホホホ。」


日本語訳『――終はらぬ朝に、盃を。』


伯爵:「ウホホホホホホホ。」


日本語訳『ああ、我らが娘たちに。』


(風は光を含み、御簾の影がゆらぐ。

香炉の煙がひとすじ、空へと昇り――その先で、誰かがそっと笑った。)


――終。


解説

この「濃密ウホ様式」は、古来より“祈祷言葉”とされる神聖な音韻構造。

一つの「ウホ」は息、三つの「ウホウホウホ」は魂、

七つの「ウホ」連続は、神と人と野生をつなぐ契約の韻である。


——『驚天動地!ウホの真実と神聖ゴリラの生態の謎』著者 妹 

からの引用——



伯爵夫妻の対話はすなわち祝詞のりとであり、

その響きは庭の風を介して、姉妹の運命を包むのだろうか。そうだといいなあ。


せっかくの貴族夫妻の対話なので、日本古来の貴族である、平安貴族言葉で訳してみました。

神聖なるウホと雅なる日本語との対比をお楽しみください。

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