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与える姉と、欲しがる妹の終わらない朝  作者: はるかに及ばない


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20/24

― 無限贈与の果て ―

《アンリミテッド・ギフト》が授けられてから、数週間。

伯爵家の倉庫は空になり、代わりに村と街が満たされた。


・ドレスは各地で咲くように並び、

・靴は街道を彩り、

・宝石は雨のように降り注ぎ、

・婚約者(複製体)は村の人気講師になっていた。


妹:「お姉ちゃん……もう配るもの、ないんじゃない?」

お姉ちゃん:「あるわ。――“幸せ”をまだ配ってないもの」

妹:「(たぶん一番危ないやつ……)」



お姉ちゃんは毎日、笑顔で誰かに何かを渡した。

渡すたび、光が彼女の指先から消えていく。


メイド:「お嬢様……その手が……透けております……!」

お姉ちゃん:「あら、少し軽くなっただけよ」

妹:「お姉ちゃん、やめて! もうあげなくていいの!」

お姉ちゃん:「だめよ。だって私が“あげたい”って思う限り――

 このスキルは止まらないの」



女神アモーレが慌てて降臨。

今度は紅茶を持たず、真剣な表情だった。


女神:「お姉ちゃん……あなた、“自己存在の限界”に触れてるわ」

お姉ちゃん:「ええ、わかってるわ。

 でも、与えるたびにみんなが笑うのよ。

 それを見ると、もう止まれない」


女神:「あなたは今、“あげる側の神”になりかけてるの」

妹:「神になるってことは……消えるってこと?」

女神:「そう。“個”を超えるということだから」


お姉ちゃん:「……それなら、それも悪くないわね」



その夜、屋敷から静かな光が立ち上った。

お姉ちゃんが屋上に立ち、

両手を広げると、世界中の“欲しい”が集まってくる。


お姉ちゃん:「みんな――これが、私の最後の贈り物よ」


《アンリミテッド・ギフト――フル・ドネーション》


光が世界中を包み、

人々の手に温もりと幸福が生まれた。


・泣いていた子は笑い、

・戦っていた兵士は武器を下ろし、

・誰もが誰かに“ありがとう”を言った。


そして、

お姉ちゃんの姿は、風に溶けていった。


妹:「お姉ちゃんっ……!」



静寂の中。


妹:「どこに行ったの……?」

風:「ここにいるわ」


妹:「お姉ちゃん……?」

風:「見えないけど、私はいるの。

 だって、“あげること”は、消えることじゃない。

 “残ること”なのよ」


妹:「……じゃあ、もう寂しくないね」

風:「そう。あなたが誰かに優しくした時、

 その中に、私はちゃんといるわ」



女神アモーレは空を見上げながら、神界日誌に記した。


“伯爵令嬢、お姉ちゃん。

無限贈与スキルを極め、存在を慈愛そのものに変換。

現在、風・紅茶・まつ毛に宿る。”


女神:「……やっぱりあなた、神より神ね」

妹:「女神様、私……いつかまたお姉ちゃんに会える?」

女神:「もちろん。与える心がある限り、彼女は戻ってくる」


妹:「……じゃあ、私もスキルをあげたいな」

女神:「あら、また始まったわね」



エピローグ ― 透明な微笑み


季節が巡り、春。

妹は庭で風を感じながら、そっと紅茶を差し出した。


妹:「お姉ちゃん、どうぞ」


風がふわりと吹き、紅茶の香りが優しく広がる。

その中に、確かに聞こえた。


お姉ちゃんの声:「ありがとう。……また“あげちゃった”わね」


妹:「うん。でも、今度は二人であげよう」


風:「ふふ……いい子ね」


空に光が差し、まつ毛のような柔らかな風が舞った。



スキルあげたい編

――完。

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