― スキル:ほひーーー!! ―
屋敷の朝はいつも通り。
お姉ちゃんは紅茶を淹れ、妹はまつ毛を整え、
風はやさしく吹いていた。
だが、妹は鏡を見つめながら、突然つぶやいた。
妹:「……ねぇ、お姉ちゃん。
私、思い出したかもしれない」
お姉ちゃん:「……何を?」
妹:「“ほひー”の、本当の意味を」
空気が一瞬止まった。
まつ毛が微かに震え、風が逆流する。
妹:「“ほひー”ってね……“ほしい”の進化系なんかじゃなかったの」
お姉ちゃん:「えっ?」
妹の瞳が淡く光り、世界が歪んだ。
妹:「あれは、世界そのものの言語だったの。
“ほひー”は、“観測された世界を更新する”音……
言霊そのものだったのよ」
女神アモーレ(即座に転移してくる):「ちょ、ちょっと待って!
それ以上思い出したら世界が再コンパイルされる!!」
お姉ちゃん:「世界がなに!?」
妹:「でももう、止まらない……」
妹の身体が光に包まれ、
空、地、時空が同時に振動した。
妹:「――スキル、ほひーーー!!」
ドォォォォォン!!!
その瞬間、世界が再起動した。
色が反転し、音が後から追いかけてくる。
観測者(=読者)ですら巻き込まれた。
女神:「もうダメだ! 世界が“妹仕様”に最適化されていく!!」
お姉ちゃん:「どうすれば!?」
女神:「彼女の“欲望”が、宇宙言語になってるの!!」
人々の言語が「ほひ語」化していった。
メイド:「ほひーございます」
執事:「紅茶をほひーいたします」
両親:「お姉ちゃんなんだからゆゆゆゆ譲りぃぃぃぃぃぃ(ほひ語版)」
お姉ちゃん:「……これもう終末よね?」
女神:「終末というより、“再起動の予兆”。
“ほひー”が“ほひーーー!!”に進化した今、
宇宙のバージョンが上がるわ」
お姉ちゃん:「宇宙にバージョンとかあるの!?」
空が開き、かつてのマルチバースの妹たちが一斉に現れた。
妹たち:「ほひーーー……」
妹:「……みんな、帰ってきたのね」
お姉ちゃん:「まさか、このスキル……呼び戻したの!?」
女神:「ええ。
“ほひーーー”は――すべての妹を統合する音。
観測されたすべての妹が、一人に還ろうとしているの」
妹:「……お姉ちゃん。私、もう一人じゃない。
すべての“欲しい”を統べる存在になるの」
お姉ちゃん:「(泣きそう)そんなの、寂しいじゃない……!」
妹は微笑んだ。
そして、まつ毛を一筋、お姉ちゃんに渡した。
妹:「観測してね。
私が消えても、“ほしい”が悪いことじゃないって伝えて」
お姉ちゃん:「……うん、絶対に」
妹:「じゃあ――
最後にもう一度だけ言うね」
お姉ちゃん:「……うん」
妹:「――ほひーーー!!」
世界が光に包まれ、
風も音も涙も、すべてが一瞬で静かになった。
エピローグ ― ほひの記憶
次の朝。
お姉ちゃんは目を覚ました。
すべてが元に戻っていた。
妹も、屋敷も、紅茶の香りも。
ただひとつ違うのは――
空の色が、ほんの少しだけ“妹のまつ毛色”になっていたこと。
お姉ちゃん:「……ねぇ、妹。
観測してるよ。今も、ずっと」
風が吹き、遠くから声がした。
妹の声:「……ありがと、ほひー」
お姉ちゃん、微笑む。
「……やっぱり、“ほひー”が一番ね」
スキル:ほひーーー!!編
――完。
妹:「ぼえー!しか言えないなんて言ってない!」




