― 音の門(サウンドゲート) ―
マルチバース騒動から数日後。
妹は再び静かな屋敷の庭で、風と遊んでいた。
妹:「お姉ちゃん、最近なんか喉の奥がムズムズするの」
お姉ちゃん:「……まさかまた新しいスキルじゃないでしょうね?」
妹:「ううん、“ほひー”が出そうなんだけど……出ないの……」
そう言った次の瞬間。
妹の胸が光り、風がざわめく。
妹:「……ぼ、ぼえ~~~~~~~~~っ!!!」
――空気が震えた。
風圧が生じ、紅茶が吹き飛び、犬が遠吠えした。
お姉ちゃん:「!?!?!? い、今のなに!?」
妹:「……わかんない。でも、なんか“ほひー”よりスッキリする!」
女神アモーレ:「ストーーーーップ!!!」(空から急降下)
お姉ちゃん:「め、女神様!? 早い!」
女神:「“ぼえー”は危険よ! あの音は“異界の門”と共鳴する波長なの!」
お姉ちゃん:「そんなバカな……ただの音痴な叫びよ!?」
女神:「だから危ないのよ! 音痴波動は宇宙でもっとも不安定な振動なの!!」
妹:「え……私、音痴だったの?」
女神:「悪い意味じゃないの、次元共鳴型不協和音なの!!」
空が不気味に歪む。
妹の「ぼえー」の余韻が空気に残り、まるで何かを引き寄せるように響いた。
――ズズズ……ッ。
お姉ちゃん:「空が……裂けてる!?」
女神:「まずい、“ぼえー波動”が音痴界の住人を呼び出そうとしてる!」
空の向こうに、ギザギザの前髪、小学生にしては太った体、オレンジ色のTシャツ、3の形をした口。
首を傾げながら、鼻歌を歌っている。
???:「ぼえーーーーー……」
お姉ちゃん&女神:「ヤツが来るぅぅぅぅぅぅ!!!」
女神:「妹ちゃん、今すぐ“まつ毛スキル”を発動して!
音を遮断して次元を閉じるのよ!」
妹:「わ、わかった! 《ラッシュ・フリューゲル・サイレンス》!!」
ビュオォォォ!!!
まつ毛が音波を切り裂き、風が静寂を取り戻す。
空の裂け目がギリギリで閉じかける……!
だが、かすかに残された歌声がひとつ。
???:「お……ジャ……ガキd……」
妹:「やばっ!?」
お姉ちゃん:「早く閉じてぇぇぇ!!!」
――バタンッ!!
裂け目が完全に閉じた。
風が止まり、屋敷には再び穏やかな時間が流れた。
妹:「あぶなかったぁ……」
お姉ちゃん:「あなたの“ぼえー”でこの世界が滅ぶところだったのよ!著作権的な意味で!!」
女神:「ほんと、あなたの家系、才能が混沌すぎるわ。あんなとんでもないレジェンド召喚しちゃだめ!!」
妹:「でも、もう“ほひー”には戻れない気がするの……」
お姉ちゃん:「……いいのよ。それがあなたの成長なんだから」
女神(ため息):「まぁ、次に“どれか”が進化するのも時間の問題ね……」
妹:「えっ?」
女神:「“ぼえー”の上位スキル、“ぼおぉぉぉん”があるの」
お姉ちゃん:「それ爆発音でしょ!!」
エピローグ ― 音と静寂のあいだ
その夜。
妹はまつ毛に手を当てて、静かに口ずさんだ。
妹:「……ほひー……ぼえー……どっちも、私なんだね」
お姉ちゃん:「うん。だから、どんな音でも受け止めるわ」
女神:「次元干渉は起きないように……控えめなキーでお願いね」
妹:「了解っ! ――ぼぇぇぇ(ピアニッシモ)」
お姉ちゃん:「(笑)上手になったじゃない」
風がやさしく揺れ、空に音の粒が漂った。
まるで、“世界のまつ毛”が拍手しているようだった。
ぼえー!編
――完。
音痴は悪い意味だと思う




