― まつ毛、空を征す ―
ある日。
伯爵家の庭で、妹は優雅にまばたきをしていた。
そのたびに風が渦を巻き、花びらが竜巻のように舞い上がる。
お姉ちゃん:「……また強くなってない?」
執事:「以前より風圧が2倍に……もはや暴風域です、お嬢様」
両親:「譲りなさいの前に……防風ネットを!!」
妹:「うふふ……お姉ちゃん、最近わかってきたの。
このまつ毛、風を操れるのよ」
お姉ちゃん:「やっぱり!!!」
妹は日夜、鏡の前で研究を重ねた。
まつ毛の角度、まばたきのリズム、風の抵抗。
それらすべてを極めたとき、妹の背中に“風の羽”が見えた。
妹:「お姉ちゃん、見ててね――!」
――バサササササッ!!!
風が巻き起こり、妹の体がふわりと浮かび上がる。
地面を離れ、屋敷の上空へ。
お姉ちゃん:「妹ぇぇぇぇぇ!?!?!?」
妹:「やった……! 私、飛べる!!!」
まつ毛航空理論の誕生である。
それから数日。
妹は空を飛びながら、風を使ってメッセージを届けた。
「空も……欲しい!」
――そして、空が震えた。
まつ毛が空気中の微粒子と共鳴し、
雲を編み、風を支配する巨大な“まつ毛ネットワーク”が広がっていった。
まつ毛帝国の始まりである。
女神アモーレ(上空で紅茶を飲みながら):
「……えぇ、もうどうしようもないわね」
お姉ちゃん:「女神様、止めてください!!」
女神:「無理。空、全部まつ毛になった。」
村人たちは空を見上げてざわめいた。
「なんか……雲が毛深い……?」
「違う、あれはまつ毛だ!」
「まつ毛が風を操って……雨を降らせてるぞ!!」
――そう、妹のまつ毛はついに気候制御まで到達したのだ。
雨、風、雷。
すべてが妹のまつ毛によってバランスを保つ。
妹:「これで世界は私のまばたきひとつで平和になるのよ……!」
お姉ちゃん:「平和ってそういう意味じゃないぃぃぃ!!」
ある夜。
空いっぱいに広がる“まつ毛の雲”の下、
お姉ちゃんは光る瞳で妹を見上げた。
お姉ちゃん:「妹……あなたはどこまで行くの?」
妹(風の中から):「私はただ、“欲しい”を極めたかったの。
でも今は、“守りたい”って思ってる。
この空を、お姉ちゃんを、世界を――まつ毛で。」
お姉ちゃん:「……(涙)もう、わけわかんないけど、泣けるわ」
女神:「つまり、“美と欲望は紙一重”ってことね。
(メモ)“まつ毛哲学、成立”」
エピローグ ― 風の姉妹伝説
その後。
妹は“風の女王”として空を統べ、
お姉ちゃんは“光の伯爵令嬢”として地を照らした。
二人の力が交わるたび、
空と大地の境界に美しい虹がかかる。
村人たちはその光景を“姉妹のまばたき”と呼び、
やがてそれは一つの祝祭になった。
お姉ちゃん:「……ねぇ女神様、これで本当に平和なんですよね?」
女神:「ええ。ちょっと毛深いけどね。」
風が吹き、
遠くの空でバサササ……とまつ毛の音がした。




