― まつ毛が風に舞う朝 ―
光に包まれ、姉妹が心を通わせた――
あの夜の感動も、朝になれば。
妹:「お姉ちゃーん! そのヘアブラシほひー!!」
お姉ちゃん:「……え? もう昨日の光とか感動とかどこいったの?」
妹:「だって、欲しいもんは欲しいんだもん!」
両親:「お姉ちゃんなんだからゆゆゆゆ譲りぃぃぃぃ!!」
執事(慣れた顔):「……おはようございます」
こうして伯爵家には、いつもと同じほひー日常が戻っていた。
お姉ちゃん:「……はぁ。光でもダメ。バリアでも爆発でもダメ。
女神様、もう私、強いスキルはいりません。
でもせめて、少しだけ“優雅な反撃手段”が欲しいんです」
風がそよぎ、ふわりと一枚の羽が舞い降りた。
その瞬間――
女神アモーレ:「呼ばれた気がしたわ」
お姉ちゃん:「女神様ぁぁぁ!!」
お姉ちゃん:「もう、派手なスキルは要りません!
私の望みはたったひとつ!」
女神:「なに?」
お姉ちゃん(真剣に):「……“まつ毛を飛ばしたい”んです」
女神:「……え?」
お姉ちゃん:「だって、優雅でしょう?
怒鳴る代わりに、スッとまつ毛が飛んでいって、
相手がちょっと“はっ”とする感じ!」
女神:「(困惑)いや、発想が貴族的すぎない!?」
お姉ちゃん:「いいえ! それが私の最後の願いです!」
女神は苦笑しながら杖を掲げた。
女神:「……わかったわ。そこまで言うなら授けましょう。
スキル名は《ラッシュ・フリューゲル》――“まつ毛の翼”」
お姉ちゃん:「(うっとり)美しい……!」
女神:「まつ毛を意識すれば、風に乗って一瞬だけ舞う。
誰かの頬に触れれば、その人の心を静める効果があるわ」
お姉ちゃん:「……え、意外とちゃんと使える!」
妹:「お姉ちゃーん! そのリボンほひー!!」
お姉ちゃん:「落ち着いて――《ラッシュ・フリューゲル》!」
フワッ……
まつ毛が一枚、金色に輝きながら宙を舞い、妹の頬に触れた。
妹:「あ……なんか……どうでもよくなってきた」
お姉ちゃん:「成功!」
両親:「お姉ちゃんなんだか――」
お姉ちゃん:「……(スッ)」
両親:「……ウホ(静かに着席)」
屋敷が、静まり返った。
女神(上空で拍手):「やっと……まともに平和なスキルに出来たわね……!」
夜。
お姉ちゃんは鏡の前でそっとまつ毛を整えた。
お姉ちゃん:「……飛ばすたびに減っていくのかしら」
女神(小声):「だいじょうぶ、夜に生えるから」
お姉ちゃん:「……リサイクル式!?」
妹(寝言):「お姉ちゃんのまつ毛……ほひー……」
お姉ちゃん:「(笑いながら)だめよ、これはもう飛んでるの」
風が吹き、どこからか一筋のまつ毛が舞った。
静かに光りながら、誰かの夢の中へ――。




