― 光、分かたれて ―
《ルクス・オクルス》の力で屋敷は平穏を取り戻した。
姉の目が光るたび、空気は澄み、鳥がさえずり、紅茶はなぜか理想の温度になる。
だが、ある日。
妹がその光を見つめながら、小さく呟いた。
妹:「……いいなぁ。お姉ちゃんの光……私も欲しいなぁ」
お姉ちゃん:「え?」
妹:「だって、その光、あったかくて、優しくて……
見てるだけで、なんだか泣きたくなるの。
ねぇ、お姉ちゃん、その光……少しだけ、ちょうだい?」
お姉ちゃんの背筋に、かすかな緊張が走る。
妹:「お姉ちゃんの光、ほしい……」
お姉ちゃん:「だ、だめよ! これはあなたを守るためのものなの!」
妹:「そんなのイヤ! 守られるより、一緒に光りたいの!!」
――キィィィン
妹の胸から微かな光が漏れ、
空気がざわめいた。
女神の声が天から響く。
女神:「……あらあら。また始まったのね」
お姉ちゃん:「女神様!? どうすれば……!」
女神:「あなたの“光”は優しすぎて、分けようとするだけで他人を照らしてしまう。
でも、妹さんが本気で“ほしい”と言えば、その光は――分裂するわ」
お姉ちゃん:「まさか、また爆発とか!?」
女神:「……今回は、光だから爆発しない。ただ、世界が少し眩しくなるだけ」
妹:「お姉ちゃん、私、もう我慢しない!」
お姉ちゃん:「妹っ!!」
光が奔流となり、屋敷全体を包み込む。
風が止まり、時間がゆるやかに歪む。
――そして、ふたりの姿が浮かび上がった。
お姉ちゃんの瞳は月のように柔らかく、
妹の瞳は朝日のように眩しく輝いていた。
女神:「ふふ……片方は“静寂の光”、もう片方は“希望の光”。
どちらも、この世界に必要なのよ」
お姉ちゃん:「……妹、もう“ほしい”とは言わないの?」
妹:「うん。だって今は、“一緒に光ってる”から」
その後、伯爵家は再び騒がしくも温かな日々を取り戻した。
両親は相変わらず感情的だけれど、
「譲りなさい!」の代わりに「照らし合いなさい!」と叫ぶようになり、
屋敷では“光る姉妹”が名物になった。
執事:「お嬢様方、少々眩しすぎて……サングラスを発注いたしました」
妹:「ふふ、まぶしいのは平和の証よ!」
お姉ちゃん:「……まぶしいのはあなたのテンションよ」
女神(遠くから):「はぁ……やっとバランスが取れた。
でもこの姉妹、また何か起こすんだろうなぁ……」
エピローグ ― 光の果てに
夜。
お姉ちゃんと妹はバルコニーに並んで座っていた。
それぞれの瞳が、静かに星空を映している。
妹:「お姉ちゃん、ねぇ、次はどんなスキルが欲しい?」
お姉ちゃん:「もういいの。私は、この光で十分」
妹:「……そうだね。私も」
お姉ちゃん:「でも、もしまた“何か欲しくなったら”……」
妹:「その時は、一緒にお願いしようね」
ふたりの光がひとつに重なり、夜空に金色の軌跡を描いた。
――それはもう、誰も壊さず、誰も傷つけない、
“優しさのかたち”だった。
眼光スキル編
――完。




