伯爵家の欲望コンサート
はじめまして!
つい出来心で欲しがり妹ジャンルに手を出してしまいました。
前作の殺伐とした作風とは180度違うので頭空っぽにしてご覧ください。
伯爵家の朝はいつも優雅に始まる。
銀のカトラリー、香る紅茶、そして――
妹:「お姉ちゃんのドレス、ほしい!」
お姉ちゃん:「これは昨日、あなたが“もういらない”って言ってたやつよ……」
妹:「でも今はほすぃぃぃぃぃぃっっっ!!!」
お姉ちゃん:「……はいはい。あとで洗ってからね」
妹:「やったぁ! ……あ、やっぱり、靴もほしいぃぃぃぃ!!!」
お姉ちゃん(心の声):
毎日が略奪戦。
伯爵家の妹は、今日も元気です……。
そこへ現れる、家の最大戦力。
母:「お姉ちゃん、妹の言うことを聞いてあげなさい」
父:「そうだぞ。お前はお姉ちゃんなんだから、譲るのが当然だ」
お姉ちゃん:「でも、これは……」
母:「お姉ちゃんなんだから譲りなさい!」
父:「お姉ちゃんなんだからゆゆゆゆゆゆ譲りぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
両親:「うううううりぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
お姉ちゃん(白目):「……家が宗教儀式みたいになってる……」
そんな日々が何日も続いたある夜。
お姉ちゃんがため息をついていると、部屋の隅からふわりと光が。
女神:「そなた、だいぶ気の毒ね……」
お姉ちゃん:「!? だ、誰ですか!」
女神:「私は“家庭内不条理担当女神・アモーレ”」
お姉ちゃん:「担当が細かい!」
女神:「特別にスキルを授けよう。妹の理不尽から身を守る力……それは――」
お姉ちゃん:「(ごくり)」
女神:「バーリア!!!」
お姉ちゃん:「……え?」
女神:「そう。“バーリア”。防御の力よ。
唱えれば、理不尽な要求を一時的に弾けるの!」
お姉ちゃん:「あの……それ、子供が遊びで言うやつですよね?」
女神:「侮るなかれ。この世界は“言葉の勢い”が支配する。
“ほすぃぃぃぃ!”に対抗できるのは“バーリア!!”しかない!!!」
お姉ちゃん:「……もうなんでもいいです、ください」
翌朝。
妹:「お姉ちゃんのティアラ、ほひぃぃぃぃぃぃ!!!」
お姉ちゃん(冷静に立ち上がる):「……バーリア。」
――ぱぁんっ!!
空気が弾け、妹の手がなぜかツルッと滑って床に転がる。
妹:「えっ!? なにこれ!? 触れないぃぃぃぃっ!!!」
お姉ちゃん:「……本当に効いた……!?」
両親が部屋に駆け込む。
母:「お姉ちゃん! 妹に譲りなさ――」
お姉ちゃん:「バーリア。」
父:「うりぃぃぃぃ――」
お姉ちゃん:「バーリアァ!!!」
家中がキラキラと光に包まれた。
女神(天の声):「よし……いいぞ……言葉の力を制するのだ……バーリアは、心で叫べば無敵だ……!」
お姉ちゃん:「……めちゃくちゃ恥ずかしいけど、なんか……楽しくなってきた……!」
その日以来、伯爵家では奇妙な新しい風習が始まった。
妹:「お姉ちゃんのドレス、ほひ――」
お姉ちゃん:「バーリア!」
妹:「うぬぬぬぬぬぬぅぅぅぅ!!!」
両親:「お姉ちゃ――」
お姉ちゃん:「バーリアァ!!!」
静まり返る屋敷。
どこかで女神がくすくす笑っていた。
女神:「……ふふ。言葉の勢いで動く世界、なかなか楽しいでしょう?」
お姉ちゃん:「ええ……でも次は、もうちょっと格好いい呪文が欲しいです……」




