表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

12

ルキウスがアストラル魔法学校で研究に没頭し、ミレイナとの間に微かな変化の兆しが見え始めた頃、平穏は突如として破られた。

アストラル魔法学校を突如として襲ったのは、おびただしい数の魔物の群れであった。それはまるで荒れ狂う津波のように校舎へと押し寄せ、生徒たちの間に瞬く間に絶望が広がった。教師や上級生たちが応戦するも、魔物の勢いは凄まじく、次々と防衛線が突破されていく。

「なんて数だ…!」

誰かが呻くようにそう呟いた。校庭はすでに魔物で埋め尽くされ、破壊の限りを尽くしていた。校舎の壁が崩れ落ち、悲鳴が響き渡る。誰もがこの状況を打破できないと、ただ立ち尽くすばかりであった。

その光景を静かに見つめていたルキウスの瞳に、強い光が宿る。彼はこれまで、目立たないことを信条とし、自身の真の力を隠し続けてきた。しかし、目の前で繰り広げられる惨状は、その信念を打ち砕くに十分であった。このままでは、多くの命が失われる。彼の中に、かつて魔王を討伐した伝説の魔法使いとしての使命感が呼び覚まされた。

ルキウスは大きく息を吸い込み、覚悟を決めた。もう、隠している場合ではない。

「…行くか」

彼は小さく呟くと、一歩前へ踏み出した。その瞬間、ルキウスの全身から膨大な魔力が溢れ出し、大気を震わせる。その圧倒的な魔力の奔流に、周囲の魔物たちが怯むかのように一瞬動きを止めた。

法則創生者としての顕現

ルキウスは右手を高く掲げた。彼の瞳には、かつて世界の脅威を退けた英雄の覚悟が宿っている。そして、彼はその究極の能力を発動させる。

「『エーテル・マトリクス』」

彼がその名を唱えた瞬間、空間そのものが彼の意のままに再構築され始めた。魔物の群れを飲み込むように、線と線が交錯し、幾何学的な模様が虚空に浮かび上がる。それは、次元の壁を無視して魔物を強制的に別の空間へと押し出す、法則創生者の新たな領域であった。

空間の歪みは瞬く間に広がり、押し寄せていた魔物の群れが、まるで糸の切れた人形のように次々と空間の裂け目に吸い込まれていく。魔物たちは困惑し、咆哮を上げながら抵抗しようとするが、すでに空間の法則はルキウスによって書き換えられていた。

彼の魔法は単なる攻撃ではなかった。それは、存在するはずのない場所へと魔物を移送し、この世界から一時的に隔離する、究極の「排除」であった。一瞬にして、無数の魔物が跡形もなく消え去り、阿鼻絶叫だった校庭には静寂が戻る。

呆然と立ち尽くす生徒や教師たちの中で、ミレイナだけが、その奇跡のような光景の真ん中に立つルキウスを見つめていた。彼の背中からは、隠しきれないほどの圧倒的な存在感が放たれている。

ルキウスは、もはや「目立たない」という信念を捨て去った。彼は、この世界の脅威に立ち向かうことを決意したのだ。




魔物の襲撃から数週間が経った。レイル、今や伝説の魔法使いとしての自覚を強めた彼は、アストラル魔法学校での日々を自身の魔法の完成に費やしていた。古代魔法と現代魔法、その二つの流れを融合させた独自の体系は、着実に彼の内側で昇華され、以前の彼を遥かに凌駕する力を手に入れていた。特に、エーテル・マトリクスは、彼が「法則創生者」として空間を支配する能力の礎となっていた。

レイルは、自身の成長を肌で感じていた。もう、誰かに教えを請う必要はない。彼は、この世界における自身の役割と、これから為すべきことを明確に理解していた。

あの魔物の波。あれは自然発生的なものではなかった。レイルの鋭い洞察力は、その背後に巧妙に隠された人為的な意図を感じ取っていた。魔物の動き、その出現のタイミング、そして何よりも、異常なまでの統率力。それは明らかに、強力な力を持つ者が糸を引いている証拠だった。そして、その力の性質は、失われたとされる暗黒魔法に酷似していると彼は予想した。

「…やはり、裏で動いている者がいる」

レイルは、静かに呟いた。その人物が誰なのか、そして何を企んでいるのか。それを知るためには、より広範囲の情報を得る必要があった。


レイルは、その日も人気の少ない山中で訓練に没頭していた。彼の脳裏には、ある壮大な計画が描かれていた。それは、自身のエーテル・マトリクスを地球全体に展開し、世界の隅々までを一時的に把握するという、途方もない試みだった。

この魔法は、これまで彼が経験したことのない、膨大な魔力と精神力を要求する。わずか数秒間しか維持できないだろう。しかし、その数秒が、闇に潜む真実を暴く鍵となる。

レイルは深呼吸をし、集中力を極限まで高めた。全身の魔力が脈動し、彼の周囲の空間が微かに歪み始める。瞳を閉じ、意識を地球全体へと広げていく。

「エーテル・マトリクス…展開」

彼の言葉と共に、目に見えない光の波が、アストラル魔法学校のある地域から瞬く間に広がり始めた。それは大気を震わせ、地中深くへと浸透し、海を越え、大陸を覆い尽くしていく。世界中のありとあらゆる情報が、光の速度で彼の脳へと流れ込んでくる。人の思考、魔力の痕跡、自然の摂理、そして、微かに蠢く闇の波動。

それは、想像を絶する情報量だった。レイルの精神に激痛が走り、鼻から一筋の血が流れ落ちる。それでも彼は耐え抜いた。数秒間の間に、彼は世界の隠された断片を垣間見た。人知れず行われる陰謀、古代の遺跡で目覚めつつある不吉な力、そして、何よりも鮮明に、特定の場所から放たれる暗黒魔法の強大な残滓を。それは、彼が予想した通り、極めて人為的で、悪意に満ちたものだった。

数秒後、限界に達したレイルは、ずるりとその場に膝をついた。エーテル・マトリクスは消え去り、世界は再び平穏な姿を取り戻す。しかし、彼の脳裏には、鮮明な情報が刻み込まれていた。

レイルは血の滲む唇を拭い、顔を上げた。その瞳には、世界の闇の存在を知った者の、決意に満ちた光が宿っていた。

「…見つけたぞ、黒幕よ」

レイルは黒幕の位置を把握した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ