表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/60

P子の一人部屋

 伝言板で、ののあ先生の投稿があったわけですが、何というか、……



 長いんですね。



 伝言板で、その長いやりとりをするのは大変です。そうでなくてもすでに二回アク禁を食らっている身ですから慎重に行動しないといけません。

 以前、浮離ちゃんの【宙の漕ぎ手】に質問感想を書く時も、どうせ返信ないだろうとか、こっちも正直素面でやってられない感じだったので、浮離ちゃんを男、私は浮離ちゃんに付き纏うストーカー女として、留守電にメッセージを残すという設定で、ストーリーっぽく行いました。

 今回私はいたいけな女性P子として、スレッドにてストーリー仕立てで、ののあ先生の投稿を解析することにしました。はたしてその結末やいかに。



【P子の一人部屋】


 ピンポーン

「はーい」とP子はインターフォンに答える。

「宅配便です」

「ご苦労様でーす」P子はサインをして包みを受け取った。

 それは先日ネットで購入したお人形さんです。P子はウキウキしながら開封したところでしばし言葉を失います。

「な、何これ? 違う、あたしこんなの頼んでない!」

 その人形は両手に刀を持っており、その顔はどこか、だブスたそうです。

 P子は恐ろしさのあまりに思わず人形を床に落としてしまいます。

それがスイッチであったかのようにその人形は目を見開き立ち上がりました。

「ヒスヒスヒスヒス」と変な笑い方をしながら両手の刀の切先をキチキチ鳴らします。

「やめてー、来ないでー!」P子はありったけの声で叫びます。

「私の名はノア」その人形が口を開きます。

「のあ? のあドールということ?」P子は恐る恐る話が通じる相手か見極めようとしています。

「えー、P子さん、あなた本当に天然ですね! 天然! 天然! 天然! 天然! 天然!」そののあドールはヒステリックに叫びました。


 どうやらダメだったみたいです。


「P子さんをはじめ、あまりにも〝読めない人〟が多いようなので、突然ですが、私が『文章』の基本のキをお教えします」そののあドールが刀をキチキチさせながら語り出しました。


 P子は思いました。「そんなことは頼んでない」と。

 そんなP子をよそに、そののあドールは続けます。


「やっぱりここでのトラブルはちゃんと読めないことが原因ですからまずそこを解決しないとダメですね」そののあドールは時々ヒスヒスと笑いながら続けます。


「おまえもだよ」とP子は思いましたが、体が震えて声が出ません。


「すでに知っている方も多いかと思いますが、……」

こののあドールという人形はどうやら話しが長そうだと思ったP子は、そののあドールの背後に回るとオーディオと同じようなボタンが並んでいるのを見つけました。

 P子は勇気を振り絞って早送りしてみます。それに合わせて、そののあドールは高速で刀を振り回しますがP子は早く終わらせようと恐怖に耐えます。

 ですが、なかなか終わりません。P子は諦めてボタンを離すとタイマーが戻ってしまいました。どうやら最後まで聞くしかなさそうです。P子は覚悟を決めました。

 一時停止ボタンで少しずつ理解しようと、こののあドールにのぞみます。


「すでに知っている方も多いかと思いますが、『文章』には2種類あります。それが『表現の文章』と『伝達の文章』です。それぞれ『芸術文』『実務文』ともいわれています」

 どののあドールもこんな風に話が長いのだろうかとP子は眠気を覚えます。


「いい見本があったので、では凪さんのこれ。《既存の俳句だから、『詠む』ではなく、『読む』だよね。》(※ののあ先生の誤字を凪さんが指摘したエピソードです)この意見には反対しませんが、『俳句を読む』というのは、本当にただ読む、書いてある内容の意味を理屈で理解する、という感じ? いっぽう『俳句を詠む』は文字を読んでその景色をイメージし、追体験する、って感じではないでしょうか?」

 P子は、うわー、こののあドールって現実に人間の女だったら面倒くさいなと思わずにいられませんでした。そこは間違いました、すいませんとか、いちいち誤変換とか気にしてませんからとか言って済ませはいいじゃんと思う一方で、音声で聞いてるこのストーリー仕立てで何故誤字がわかるのかというツッコミがこないか気が気でありません。

「もちろん個人的な考えです。そして〝追体験して感動できる〟とこれは巧い文章だ!と認められる。凪さんの書いている詩的なもの(描写)は、読者が読んで追体験して感動できるものでしょうか?」

 ちょっと太めののあドールは、よほど凪さんという方に恨みでもあるのでしょうか? 飛び跳ねるたびに床板がキチキチ軋みます。


「ほかの人ももっとそういうとこを意識して書いてもらいたいですね。じゃないと中身がないって〝読める人〟には簡単に見透かされてしまいますよ」

 いきなりそののあドールは切先を全方位に向けました。無差別です。とりあえず全員ぶった斬る勢いにP子はそののあドールとは対照的なスリムな体を震わせます。

 ですが、P子が恐れたのはそこではありません。読める人に見透かされてしまうって、そんな文章から人の心理を読むような妖怪みたいな人が本当にいるのと、こののあドールのは対照的な美しい顔に恐怖を滲ませました。


「いまの例は読みが同じでも漢字が異なるというものですが、まったく同じ文章だったとしても、対象の文章を『伝達の文章』としてのみで受け止めていると、その人は、意味を理解すること、伝わることだけにこだわって、視野が狭くなり、文章の『魅力』『センス』『多様さ』といったものが理解できなくなるのでは? と思う」

得意げな顔ののあドールは気づいていないようです。話が退屈であることを。

 P子は頑張って聞いていましたが、「何だ、それはこののあドールの主観かよ」と時間を返せと思いましたが、もちろん口には出せません。

 ヒートアップ状態ののあドールはさらに力を込めて語ります。

「言葉を削り、最短距離で伝わる簡潔な文章。そこには効率的に何かを伝えるという目的があります。だから目的のないものにたいしては、意味不明となり、これどんな目的があるんだ、『キミの本当の目的は何だ?』と、頭がおかしくなってしまう?」

 P子は抜群なスタイルの身体をこわばらせました。「怖い! 絶対これってあたしのことだ」と。

 そして「付加疑問であたしに同意を求めてる!」と恐怖がピークに達しました。

 そしてタイマーを見て、まだ約20パーセントしか消化できてないことを知り、気を失ってしまいました。


 昨日気を失ってそのまま眠ってしまったP子はその汚れを知らぬ美しい目を開けます。

するとそれを待っていたかのように、例ののあドールが「キーッ!」と恐ろしい声をあげて両手の刀をキチキチ鳴らします。

「痛!」P子はその恐ろしい顔を見て、宅配業者から包みを受け取って部屋に運ブサイクじいた足の痛みに気づきました。


「ちょっと皮肉ってみましたが、もちろん、『表現の文章』『伝達の文章』と綺麗に2つに分かれているものではありません。合体していて、読み手がどこをどう重点的に読みとるかにもよるのです」悪魔のような形相ののあドールは、両手の刀で近くにあったクッションを滅多刺しにしながらいいます。


 P子は思わず叫びました「ブスブスしないでー!」

 それに加えて、せっかく頑張ってここまで聞いたのにどうやらまだ壮大なイントロのようだと気づき足の震えが止まりません。


「たとえば、長い物語を伝える『伝達の文章』のなかに、『表現の文章』的なものが含まれていて、そこに気づいてジーンと来たりして『ああ、この人、文章が魅力的だな、巧いな』となります」そののあドールはヒスいのような瞳を怪しく光らせて続けます。

 P子は自分のことを褒めてくれているんだと受け取りました。そうでも思わないと付き合っていられないからです。


「だから『伝達の文章』としてしか書いたことがない人、読んだことがない人には、文章の上手下手なんて判断で気るわけないのです」

 こんな型にはまった思想をもっているなんて、型遅れののあドールなんじゃないかと、その美しい眉をひそめました。

「わかりますか? ぷり子さん。中立かどうか以前の問題」


「やめてー!」”わかりますか?(※浮離ちゃんの口癖)”恐怖症のぷり子は思わず可憐なお耳を塞ぎます。


「はい、では、いいですか?(※同)」それでも浮離ちゃんの化身ののあドールは浮離構文を使っていたいけなP子を攻撃します。


「やめてー!」そうです、”わかりますか?”だけでなく、P子は”いいですか?”恐怖症なのです。


「ヒスヒスヒスヒス」もはやエクソシスト状態ののあドールは恐ろしい笑い声をあげます。


「あら、いけない、もうこんな時間」P子は平日忙しい人なのでいつまでも、こののあドールに構っていられません。


 P子はすっぴんでも美しいそのお顔に薄化粧で錦上花きんじょうはなを添えると、急いで身支度を済ませます。

 その時頭の中に枯れ果てた大そうげんのイメージが浮かび、誰とも知らない声が聞こえた気がしました。


“美しいものをさらに美しくする。これを錦上花を添えるといいます”(※表現下手なそうげん先生を皮肉ったもの)


その三流小説にでてくるようなフレーズにP子は頭を振り、出勤するのでした。


「ご馳走様」P子がお行儀よくランチを済ますと、スマホに着信がありました。

「あら、誰かしら?」その非通知の相手が大方の読者には察しがついているのに、純真無垢なP子は電話に出てしまいます。


「ヒスヒスヒスヒス」


 そうですその不気味な笑い声、電話の相手は、あののあドールです。

 出てしまったものは仕方ないとP子は覚悟をきめます。


「しかし、ここまでは、そうです、小説家を文豪と呼んでいた時代の話でした」


 まだ壮大な前振りが終わってなかったのかとP子は愕然としてしまいます。

「そんな時代がかったヒストリックなお話だったのね」万年英語学習者のP子は時々英語がでてしまいますが、これがよくなかった。


「キーッ! 誰がヒステリックですか! あなたがそういうこと言う度に私はみなさんに説明しなきゃいけなくなるから、どうせならいい噂を流して下さい!」

 電話越しに両手に携えた呪われし双刀ダブルスタンダードの刃先がキチキチ音を立てているのが聞こえます。


「待って待って! 誤解よ! それはあなたの聞キチガイよ!」と言いながら、P子はいい噂を流してあげようと一生懸命考えました。


「そうね、ツンデレののあドールちゃんってなんだかんだいってもゴミの分別が得意そうだね」なんとかP子は搾り出しました。


「キーッ!」



 ダメだったみたいです。


「かつて文豪同士が互いに『名文とは何か?』を主張し合い、たどりついた結論が、『文章には2種類ある』。そのころは『文章を書く』というのは、一部の人間の特権、既得権益でした。だから真面目な硬い文章が主だったと思います。」それでも激おこぷんぷん丸ののあドールはめげません。


 P子は「思います」の結びに、またお前の推測かよと心の中で毒づきます。

「誤用表現なんてやったら笑われる」テンションMAXののあドールが語気を強めていいます。


「ハックション」

オフィスの前にある、そうげんで誰がクシャミをするのが聞こえてきました。(※そうげん先生が慇懃無礼を誤用していたことを皮肉ったもの)


「小説で「(苦笑)」なんて書いたら、ふざけるな! だった。のではないでしょうか」

 だからそれはお前の推測かとP子は喉まででかけましたが、あののあドールのことです、P子の言葉に自分のセリフを、かブスことで主導権を奪いにくると察して飲み込みました。


「しかしいまは時代が違いますね。ネットがあって、誰もが自由に『文章を書く』時代。じゃあ、『表現の文章』『伝達の文章』のほかにも何かあるのではないでしょうか?」


 その問いかけにP子は背筋に薄寒いものを感じました。

 まだ前振りだったのかと。


「はい、そこで私が、見つけました。ずばり!〝生気の文章〟です。この命名は、私がしました。検索しても出てこないので、私が最初です。世界初! 歴史的偉業! 文学史に残る普遍の概念! はやく心に刻んでおいてください」


 物書きには既知キチであるかもしれない話題ではダメだとよくわからない言葉を生み出し、変なテンションののあドールは続けます。


「そうです、足りなかったピースがいま埋め込まれました! 文章は、『表現の文章』『伝達の文章』『生気の文章』、これで完成です!(あっ、ちょっとボケてますよ。ツッコミ待ちみたいな)」


 こんな人がリアルにいたら、どこからどう見ても危ない人です。ユーモアのセンスがないP子には、そののあドールの機知キチに富んだボケが理解できませんでした。


 キンコンカンコーン


休憩を潰されてしまったP子はため息まじりに、スマホを切りました。


 仕事を終えて家へと変える途中、電車の中でメールの着信音が聞こえました。

 大概差出人は想像つきますが、よせばいいのにP子は開いてしまいます。



「ぷり子www」



 今晩屋くんでした。P子はそのままゴミ箱にいれます。

 もう一件入ってました。


「あなたののあドール」

 P子はいい加減長いくせに要点は不明確で、長くてオチがない上に長い話にうんざりしていましたが、早く終わらせたいので、メールを開きます。


「えーでは『生気の文章』とは何か、というと、ありていにいえば、無駄な文章、ですね」

 P子の頭にはドヤ顔ののあドールが頭に浮かびますが、”ですね”と言われても知らないものは知りません。


「しかしこれが文章に〝生気〟を与えます。」


 P子は”これ”が何を指しているのかわかりませんでした。文脈から察するに生気の文章(=無駄な文章)のはずですが、それが他の文章に感情を与えることかと前向きに捉えます。


「〝感情文〟といってもいいでしょう。わかりますか?」

 P子は思いました。いえません、文章は文ではありませんと。そんなことでは英語カテで生き抜くことなどできません。


「たとえば私が文章の最初に『えー』とか『まあ』とか『そうですね』とか入れる。そんなのも意味がなく無駄ですよね? だけど人情味を感じさせる感情文なんです。”


 P子は、「それは文ではなく間投詞よ」と、文と文章は違うということと併せて返信しました。

家に帰ったらあののあドールは、分かってくれてることを期待して改札を抜けました。


「ただいまー」礼儀正しいP子は、例ののあドールの待つ部屋に声かけして入ります。

 今朝ののあドールと置き場所が変わっているようです。そののあドールのみにくい顔がよく見えるように近づきます。


「ちなみに、『やあ』『キミ』『◯◯くん』『かい?』『だよ』『やれやれ』というあざとく飄々としたぷり子さんのそれもステレオタイプの感情文ですね」


 驚くべきことに返信で指摘した誤用などまるでなかったかのように、さりげなくP子の人格攻撃を仕掛けてきました。なんてやな女なののあドールって。きっといつも都合悪い質問指摘をこうやってスルーしてるに違いないわとぷり子は厚化粧ののあドールを睨みます。


「ビクビクしてた人が小説を書き始めて余裕が出てきたころに罹る〝天然〟病みたいなものです。べつにいいんですけど、無自覚にやっていると〝天然〟なんですよ、ぷり子さん」

 ひょとして、こののあドールの言いたいことって、たったそれだけのためにあんなスペクタクル前振りなんてあるわけないわとP子はメイクがボロボロののあドールを見つめます。


「うるさいなバカ、あっちいけボケ、しねマヌケとかのバカ、ボケ、しね、マヌケ。このたぐいのものも相手を本気で罵倒しているのではなく、つよい感情を感じさせる感情文を書いているだけじゃないですか? そう思えませんか?」



思えません



 P子はパワハラ上司さながらののあドールの思考とダブルスタンダードを振り回すことに戦慄します。

「落ち着いて、そうだカルピス飲む?」

「カ、ラピスですってー! えー、いいですか、わたしはあの人に何もしてないんですよ。なのにあの女! 被害者は私なんですよ。酷いことされたんですよ、陰で」(※ラピス先生に対する不満を爆発させていたコメントを引用)

 飲み物を勧めただけなのに、変なスイッチを入れてしまったことにP子は後悔します。



ぷりも

 2024/05/07 20:40

休載のお知らせ

P子の一人部屋ですが、まだ原文の半分くらいしか消費できていないことに著者ぷりもが愕然としております。オチのない長話を延々と読み物に書き換える作業に疲弊しております。連載を楽しみにして頂いた方にはまことに申し訳ありませんが、ここであののあドールをクーリングオフで、あの高慢キチのだブスたアマに正面切って付き返しに行くこととします。ここまでお読みいただきありがとうございました。



くそー、残りの部分も頑張って読んだけど、あんな長い文章送ってきて、結局全方位攻撃からの、僕に時々ショットガン放ってきただけじゃねぇか!

僕の作品もしっかり読んだ上にイチャモンつけてくるだけじゃ足らずにダブルスタンダードだぁ? どの口があぁぁぁ!

もう許せねぇ。直接対決だ! あのアマの根城の伝言板に今から乗り込んでくる!


 伝言板にて


 の、ののあちゃんいないよね?

 キョロo(・ω・ = ・ω・)oキョロ

 そー=・ω・)つ【のあドール】クーリングオフ

 サッ=3





 この前後くらいだったでしょうか、あまり伝言板で長期戦を行うとアク禁を食らう恐れがあるのでヒットアンドアウェイ作戦を取るようになりました。ちょっとののあちゃんにちょっかいをかけたあとスレッドに引っ込むわけです。そのテンプレがこちら。



 はっ! 聞こえる! 呪われし双刀ダブルスタンダードの刃先をキチキチする音が!

【Pの一人部屋】ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ