第85話 もしも
遅れてすみません!!
そして、なろうの方でなんと! この作品が『週間 アクション〈文芸〉』と『月間 アクション〈文芸〉』の方にランキング入りしてました!!
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ドチャ、と落ちてきたそれに、黎矻と西濃は勢いよく銃を取り出す。
しかし、西濃は焦っていたのか、銃を落としてしまう。
カツン! という物音が走り、黎矻が西濃の方へと走り、銃を拾って彼の手を引っ張り影に隠れる。
「馬鹿野郎、落とすな!」
「わ、悪い……」
小声で言い、銃を構える。
暗闇の中、黎矻の目の前には暗黒しか広がっておらず、何も見えなかった。
しっかりとグリップを握りしめ、歯を食いしばる。
瞬間、西濃が動いた。
西濃は走り出し、警察車両へと向かう。
走り込み、勢いよく通信機へと手を伸ばす。それを見た黎矻は影からゆっくりと身を乗り出し、暗闇を睨みつける。
暗闇が、蠢いた。
「っ!! 西濃!!」
「!?」
警察車両へと斬撃のようなものが走る。
西濃がギリギリで車を飛び出し、逃げるが……車が大きな爆発を起こし、西濃を吹っ飛ばした。
西濃はゴロゴロと転がり、物の影に何とか隠れる。
「どうなってんだ……!」
黎矻の目には見えていない。
感覚だけで何が起きているかを捉えていたのだ。
黎矻の目には見えていない……つまり。
「あァ……当たんねェのか……」
ゆらりと影が蠢く。
その瞳には『5i』と書かれており、特徴的であったのは、手に持っている2本の鎌であった。
黎矻はその相手の脚に向かって引き金を引いて弾を放つ。
しかし、影は恐ろしく速く、弾を切り裂いて鎌を投げた。
黎矻はそれをギリギリで避け、走り出す。倉庫の階段を駆け上がり、上から再び発砲する。
今度は当たったような音が響く。しかし、何事もないかのように振る舞う相手。
「バケモンが……!!」
黎矻は汗を垂らしつつ、その場をはなれる。
またもや、黎矻の目に映らない斬撃が放たれ、足場が崩される。
黎矻は1階へと叩き落とされ、肺の中にある空気が口から吐き出される。
「ゲホッ、ゴホッ!!」
「黎矻! クソッ!」
西濃が発砲する。
鎌で全て防ぎきった相手は、西濃に近づく。
「!」
黎矻がなんとか身体を持ち上げ、目に映ったのは……。
「……は、ぁ?」
西濃が、心臓を鎌で貫かれている瞬間であった。
血が吹き出し、西濃が崩れ落ちる。相手は返り血に染まった鎌をブンッと振り払い、血を地面に落とす。
黎矻が3発発砲。弾切れになる前に弾を込め、再び6発発砲する。
「っ! エイムよすぎだろ!」
相手の脚と手、そして鳩尾に弾が走る。
ガクッと体勢を崩したところで黎矻が銃を捨てて走り出し、相手を蹴り飛ばしてから西濃をグイッと引っ張り持ち上げて再び、逃げるために走る。
黎矻は西濃を持ったまま走り、足元を崩しドサッと勢いよく倒れる。
「はぁ、はぁ……っ! おい、西濃。テメェ死ぬなよ……!」
「く、ろ……いし。俺、をおいて……にげ……」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ!! まだ助かるだろ!!」
黎矻が再び西濃を持とうとして脚の痛みに顔を歪ませる。
脚を捻ったようで、その部位が赤くなっていた。
黎矻は痛む脚を無視し、西濃を持って立ち上がる。
「くろ、いし……」
ガクッと倒れそうになる西濃をなんとか支える。
西濃は、黎矻の胸ぐらを掴み、グイッと顔を寄せる。さすがの行動に、黎矻も口を開けたまま黙る。
西濃のその目は、まだ死んでいなかった。
「お前は、優し、すぎる…んだよ……。俺を置いて、逃げた方が……いいっ、てのに……」
「喋んな、喋んじゃねぇ!」
「黎、いし……お前は、お前は……生きてくれ……そんで……」
黎矻は目を見開き、西濃の肩を強く掴む。
だんだんと冷たくなっていく彼の体を、しっかりと支える。
「教師に、なれ。そっちの方が……お前は……素敵、だ……」
「西濃……お前……」
西濃はその言葉を最後に、胸ぐらを掴んでいた腕を下ろす。
黎矻がその手を掴み、汗を垂らす。
何度も、何度も呼びかける。
「西濃、おい、にし、の……! 死ぬな、死ぬんじゃねぇテメェ、おい……!!」
身体が冷たくなっていく。
そんなこと、分かっているのに。嫌でもわかっているのに。現実を認めたくないがために、何度も何度も呼びかける。
その呼びかけは、虚しく空に響くだけだと言うのに。
遠くから、警察車両のサイレンが聞こえてくる。
「西濃……にし、の…………西濃ーーーーーーっ!!!!!!!」
黎矻の叫び声だけが、空に響いた。




