第84話 記憶の片隅
しばらく更新を止めており、すみませんでした!!
時間は巻き戻り、およそ8年前。
一人の男がコツコツと通路を歩く。通ってくる様々な人間が一礼をする。
男は気だるそうに一礼を返し、歩き始める。
「黎矻〜!」
後ろからパチンと肩を叩かれる。
黎矻が後ろを振り返るとそこにはニコニコとした青年が立っていた。
その服は青白い制服であり、胸には警視庁本部の紋章が貼られていた。
「……お前か……」
「なんだよ黎矻。乗り気じゃないなぁ」
「お前にいつも絡まれてるからな。乗り気になれないわ」
ひっでぇと笑う青年。
黎矻はため息をついて、青白いシャツを整える。
その目は真っ黒に染まっている。だが、どこか光が見える。
……黎矻が先生として働く8年前。
────黎矻が、まだ、警察として働いていた頃。
◇◆◇
「そういや、調べたか? 連続殺人の話」
「何も出ねぇ。というよりも、どこに行ったかすらもわかんねぇ」
俺は缶コーヒーを飲む。
車の助手席に座っているそいつ……西濃は双眼鏡で前を見る。
んなもん使って見えたら苦労しねぇんだよなぁ……。
「で、んだそれ……」
「双眼鏡! これで遠くまで見えるだろ?」
「……お前が警官になれた理由がよくわかんねぇな」
俺はため息を吐きつつ、周りを確認する。
ここは、とある倉庫の横。
ココ最近、この街というより、東京全土に及んで連続殺人が行われている。
……被害者はまだ7人。それでも、多いのだ。
『まだ』と言ったのはこれから増える可能性があるからだ。
被害者の7人には全くもって関係がない。
しかし、どの被害者にもたった一つの共通点がある。
それは、『殺され方』だ。
7人全員が刃物かなにか、鋭いもので殺されている。
しかも、傷には『毒』もある。
確実に殺すために、第2の刃として毒がある。残酷で残忍な殺し方だ。
「ひっでぇことをするやつもいたもんだな……」
「あぁ、許せない」
そう言って拳を握りしめる西濃。そんな西濃を黙って見つめる黎矻。
ふと、西濃が口を開く。
「なんでお前は警官になったんだ?」
「……あ?」
唐突な質問に素っ頓狂な声を出す黎矻。
西濃は双眼鏡で見ながらも、真剣そうな顔で続ける。
「いや、そんな体たらくなのに、なんで警官になろうと思ったのかなって」
「殴られたいならそう言え。……ん、まぁ……言うならば、俺のやりたいことがそれぐらいしか無かったから、かねぇ……」
黎矻はトントンとタバコの箱の底を叩く。
西濃の方を向いて、逆に、と呟いた。
「逆になんでお前は警官になったんだよ」
「……僕は、ずっと自身のやることは正義なんだと思ってる。それが例え、どんな事でも」
「それを実行するために、警官に?」
西濃は頷く。
それを聞いて黎矻が滑稽だなと言い、時間を確認する。
午後、11時。
「……人影が見えた」
「なに?」
西濃がふと呟き、黎矻がそれに反応する。
お互いに拳銃をホルダーに入れ、警戒しつつ車から出て後を追いかける。
何者かが走る。それをしっかりと確認した黎矻は、ため息を吐きつつ、走り出す。
倉庫の中に入る。
薄暗い倉庫、それなのにどこか明るい。……月明かりが、空から差し込んでいるようだった。
黎矻は警棒を片手に、左手で銃をいつでも取り出せるように握りしめる。
ことが始まったのは、ドチャっと、人の顔が落ちてきた時だった。




