第79話 花火の後が夢の跡
「あっ、2人ともいたぁ」
「ほんとだ! どこにいたの?」
金之助と快弦が食べ歩きしていると、香蔵と狸吉、そして黎矻に出会った。
香蔵は2人を見つめると、ほほう、とニヤッと笑顔を浮かべて顎に手を当てる。
そんな香蔵を見た狸吉は、はっ! とその思惑に気付くのだった。
「つまり、そういうこと!?」
「ええ、あの顔はそういうことよ……」
「すみません、先輩方? なんか酷い勘違いしてない?!」
「ん??」
香蔵と狸吉の気付きに違うからとツッコミを入れる快弦。
沢山の食べ物を口に含んでいる金之助はなんのことか分かっておらず、もぐもぐさせながら首を傾げる。
黎矻は2人を見て、少しだけ口元を緩めそうになるが、香蔵がバッと後ろを向いて来たのも見て緩めかけた口元を正す。
「それよりも、あの2人はどこ行ったのかなぁ?」
「あの2人? ……あぁ、鬼円と春乃先輩のことか」
「春ちゃんに……先輩読み……!?」
快弦の言葉にひたすらに驚いていた香蔵だが、そんなこと気にすることもない快弦。
金之助が目を凝らしていると、あっ。と声を上げた。
「あそこにいるッスよ?」
「ん、本当だ」
「凄い楽しそうにしてるね」
金之助の言葉に狸吉と快弦が言う。
そんな鬼円達はと言うと……
「なぁんで落ちねぇんだよ!! おいジジィ! まさか小細工してるとかじゃねぇよなぁ!?」
「おまえ図々しいなぁ!!? してるわけないだろーが!!」
「もうやめなって鬼円っ!!?」
これである。
射的の銃を持ってブツブツ言いながら球を込める鬼円。そんな鬼円を見てごくりと息を飲む春乃。
もう一度鬼円が銃を構えて、狙っている目当てのものの角に向かって弾を放つ。
徐々にズレていくが、それでも落ちない。そして、5発目が当たった時、グラッと揺れたものの、なんと倒れずに戻った。
その現象に鬼円は髪を逆立てる程の険しい表情でキレた。
「んっっがぁぁぁぁああ!!!」
「鬼円、もうやめよ!? 確かに欲しいとは言ったけど、もう3000円だよ!?」
鬼円の着物を引っ張ってやめさせようとする春乃。
鬼円は春乃の方を向いて「ここまで来たら落とさねぇとだろ!」と叫ぶ。
そんな光景を見て、黎矻はため息と同時に目に手を当て、香蔵達は恥ずかしそうに顔を伏せるのだった。
「何してんのさ……」
「あっ、あっははは……鬼円がちょっとですね……」
香蔵の言葉に苦笑いをうかべる春乃。
そんな春乃の隣でバツの悪そうにしている鬼円は、いつのに買ってきていたのか、わたあめを頬張る。
春乃はそんな鬼円をみて、1口ちょうだいと人差し指を立てる。
鬼円は普通に差し出し、春乃はあーんと口を開いて固まる。
(……これって、間接キスでは???)
その瞬間、春乃の周りだけ世界が止まったかのような感覚に襲われる。
春乃は目を見開き、鬼円の顔を伺う。
(鬼円は気にしてなさそう? いやけれども、私が気にしてしまう! やっぱりいいや、とは言いづらいし、わたあめは美味しそう。けれども、間接キス……間接キス……!!)
春乃は様々な考えに考えを重ねた結果……
「あむ」
鬼円の食べたところの反対側に回り、その部位を顔を赤らめつつ食べるのであった。
それを見て、狸吉と香蔵の心の声がハモった。
((ヒヨってんな〜〜))
◇◆◇
「あっちゃー、雨降ってきちゃったね」
花火大会が満を持して終わったあと、私たちは帰り道を歩いていたのだが、雨が降ってきてしまった。
車で最寄りの駅に下ろしてもらい、そのまま帰路に着いた訳だが、こうも雨が降られたらなぁ。
「帰り、どうしよっか?」
「このまま帰ると風邪引きますよね」
「そだねぇ……」
私たちは雨を見ながら呟く。
ふと、目の前に気づいた。誰か、傘を指して立っている。
よく見てみると、おしろいなのか、顔が白色で、髪の毛に赤い丸が点々と…………鶴愛さんじゃん!?
「鶴愛さん!?」
「ほっ、やっぱりここにいましたか」
鶴愛さんは2つの傘を持ってきて、私たちに渡す。
3人で傘をさして、歩く。まさか鶴愛さんがやってくるだなんて……。
「ちなみに言いんすと、帰ってくるのを見越して料理の材料を買ってきておきんしたよ?」
「えっ、ホントですか!? 助かります! もうお腹ぺこぺこで…!」
「私も。何も食べてないからお腹が減っちゃった」
ムシムシと暑いけれども、それでも何だか楽しい帰路であった。
まだ始まったばかりなのに、とても楽しくて楽しくて、まるで夢みたいだ。
……ほんと、夢みたいだ。




