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ようこそ!超能力部です!  作者: YY-10-0-1-2
3章 夏休み編
75/92

第75話 また楽しい日々は過ぎ去る


「はーっ、楽しかった♪」

「全く、これを買いに来ただけなのになぁ……」

「それと、快弦ちゃんとも遊びに来たしね!」


 香蔵さんと狸吉さんがそう言いながら、私たちと共にショッピングモールを出る。

 時刻はもう既に5時を回っており、あたりも夕暮れの赤色で染っていた。

 私が後ろを振り向くと、疲れ切っているのか、歩くスピードが遅い金之助君と、それを見ている鬼円、そして快弦ちゃんが出てきた。


「疲れたっす……」

「全力で遊びすぎなんだよ」


 その後にあむっ、と言ってアイスを頬張る快弦ちゃん。

 私はそれを見て微笑み、空を見る。

 今日も今日で楽しかったなぁ、と呟く。サァーっとふく風がほどよく気持ちいい。


「で、これからどーする?」

「帰ろっか、目的のものとか色々買えたし、疲れたもん!」


 鬼円の問いに香蔵さんがそう言う。

 みんなそれぞれ頷いて、帰路に着く。私は買い物袋を手に持ち、持ち上げる。

 ふと、隣を見ると鬼円が私の荷物をヒョイっと持ち上げていた。それ私の……と言おうとすると、こちらを向いて言ってきた。


「重てぇだろ?」


 だから持ってやるよ、と言いたげな顔をして道を歩く。私はそれを見て、その場で何回は足をバタバタと嬉しさで地団駄を踏んでから鬼円の後を追いかける。


 その後は、鬼円とずっと話してた。

 いらない雑談。だけれども、それが楽しくて楽しくて。

 私は鬼円の顔をまじまじと見ていると、鬼円が訝しげに見てきた。


「なんかついてっかよ」

「いや、鬼円ってあんまり笑わないなーって、おもってさ」

「……俺だって笑う時ぐらいある」


 大体がなんか嫌な笑顔っていうか、悪いことを企んでる時っていうか。

 私の思考を読んだのか、汗を垂らして「笑うわ俺だって」と呟く。私はタハハと笑い、荷物を再び握りしめる。

 ふと、思い出したかのように鬼円が自分の荷物の中を漁り始めた。


「そういやこれ」

「……あっ、ヘアゴム?」


 ヘアゴムのような、リボンのようなものを取り出した鬼円。

 それを私は受け取り、髪の毛結んでみる。

 元々、ウルフカットのロングだったのだが、それを纏めてみる。

 ポニーテールのような感じになったのだが、どうなのだろう。似合っているのかな。鬼円の方を見ると、ほぉ、と息を吐いていた。


「どう? 似合うかな?」

「……あぁ、似合ってる」


 それだけ言って彼は歩き出してしまった。

 私は再び嬉しさで飛び跳ねそうになるのを必死に抑え、顔を赤くしたまま鬼円の隣を歩く。

 鬼円は目を閉じて歩いている。私もそれの真似をして、目を閉じて歩く。

 風が強くて、けれども、夏の暑さを吹き飛ばすぐらい涼しくて。


「……」

「……」


 静寂。けれども、なんだか……。

 私はその静けさに浸っていると、鬼円がふと止まる。私は鬼円の方を向いて、荷物を受け取る。


「……じゃあ、俺こっちだから」

「うん。またね!」


 私と鬼円は別れた。

 鬼円は後ろ頭をポリポリと掻き、私は胸を抑えるように目を置き、息を吸う。

 まだドキドキしてる。鼓動が止まらないや。


「……よし!」


 私は歩き始めて、家まで帰る。

 家に帰ると、鶴愛さんが料理を作っていて、その匂いが漂って……大家さんとかに何か言われなかったのだろうか。


 私は少しだけの不安を持ちながら、家の鍵を開ける。


「ただいまー……」

「あっ、おかえりなさい」


 鶴愛さんが自分で織ったのだろうか、綺麗なエプロンを着て出てくる。

 私はそれを見て、へぇと顔をぱぁ、と明るくする。


「それ、自分で?」

「えぇ、そうでありんすよ? 春乃さんも織ってみんすか?」

「うん、やってみたい!」


 私はそういった靴を脱いで……


「後ろの子も、今度また織ってみんすか?」

「いや、私は別にいい」


 私はゆっくりと振り向き、そこにいる快弦ちゃんに腰を抜かした。

 私は立ち上がり、「なんでここに!?」と聞いてみる。快弦ちゃんは困ったような笑顔を見せた。


「い、いやぁ……ちょっとね。しばらく泊めて欲しいんですけど」

「泊めてほしい?」


 泊めてほしいって、ここに? 私の部屋に?

 私は何かあったのかな、だとか、部屋の間取りとか大丈夫かな、とか色々考えたが、とにかく分かったとサムズアップする。


 快弦ちゃんは、ごめん、と謝って台所に立って鶴愛さんの手伝いをし始めた。

 私はそれを見て、笑顔を浮かべてから、風呂場へと向かう。







 ◇◆◇







「快弦ちゃんって、卵は砂糖派なんだね……」

「……私はこっちの方が好きですから」


 うーん、悲しいかな。私にとって快弦ちゃんは敵らしい。だってさ! 醤油だよね! 卵と言ったら醤油!

 私の熱弁をスラーっと聞き流しながら卵焼きを頬張る快弦ちゃん。


 私も負けじと食べながら、テレビを見て雑談する。

 ……なんだかいいなぁ。前までは家族と暮らしてけど、あんまり揃うことはなかったしな。

 夜ご飯とかも、一人で食べてる時が多かったし。なんだか、皆で夜ご飯を食べるのが懐かしく感じるなぁ。

 快弦ちゃんと鶴愛さんが会話をしているのに入り、3人で雑談をする。

 くだらないことや、学校のこと。それに、今日の出来事に……鶴愛さんのこと。


 とにかくいっぱい話した。いつの間にか、食卓には空の皿ばっかりが置いてあって、みんなで片付けてから再び喋り出して。

 鶴愛さんの笑った顔や、快弦ちゃんの微笑む顔。それを見て、私も微笑む。


 11時頃には布団をすいて、快弦ちゃんとトランプをしたりした。

 

「またあがり!」

「……負けた……」

「先輩、顔に出てますから」

「嘘ぉ!」


 そんな私顔してたかな。

 自分の頬を触って、動かす。それを見て、快弦ちゃんはあははっ、と笑う。

 ボフッと布団に寝っ転がる快弦ちゃん。


「……今日は楽しかったね」

「そうですね。私もずーっと、こんな生活が出来ればなぁ……」

「違うよ」

「?」


 私の言葉に快弦ちゃんは首を傾げる。

 私は、強く言いきった。


「ずっと、死ぬまで続くんだよ」

「……そ、っか」


 快弦ちゃんは静かに目を伏せて、頷く。

 私はそれを見て、頷いて、布団に体を滑り込ませる。

 鶴愛さんも、機織り機をしまって襖へと歩み寄って押し入れの中に入って行った。

 電気を消して、目を閉じる。そうだ、ずっとこんな日が続くんだ。


 今も、これから先も。


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