第73話 笑え、高らかに!
「もう……ほんっとにうるさいから……」
「謝るっすから、許してくださいっすよ、ね?」
「はっ倒すわよ?」
プンプンと怒りながら出てくる快弦ちゃんと引き攣った笑みを浮かべ謝りながら出てくる金之助君を私たちはホッコリとした顔をして見ていた。
こら鬼円、もう少し興味持ちなよ。携帯ばっか見てないでさ。
「って、先輩方いらしたんっすね」
「うん。待ってたんだよ」
「ええっと、買うものと買ったものの確認するね」
そう言って狸吉さんが荷物を持って確認し始める。
私たちはそれを待ちながら、ゆったりとしていた。うん。こういう静かなのはいいよね。
狸吉さんは香蔵さんと確認しながら、荷物を手に持つ。
「よし、買いたいものは買ったけど、これからどうする?」
「うーん、さぁ……まだ時間はあるしな〜」
「お昼食いたいっすよね……腹減ったっす」
「それ俺も思ってた。昼飯食いに行こうぜ」
と、いうわけで昼飯を食べることになった。
私は無難にうどんを。香蔵さんと狸吉さんは蕎麦を、快弦ちゃんはカツ丼を、そして鬼円と金之助君はラーメンを頼んだ。
なんで暑いのにラーメン……。
金之助君曰く、暑い日に食べるラーメンはクソ美味いんすよ、とのこと。訳が分からない……。
私たちはとりあえず適当に理由をつけて乾杯した後に、食べ始めた。
このうどん、コシが凄くあって美味しいな。
「この後どうしようか」
「ゲーセンにでも行くか?」
「そういえばここってカラオケあるっぽいんだよね」
「ゲーセンとカラオケ行くっすよ!」
「え……カラオケ行くの……? 私歌えないんだけど……」
狸吉さんが、鬼円が、香蔵さんが、金之助君が、そして快弦ちゃんが、それぞれ喋る。
それを見て思った。
……あぁ、ここに居てよかったなって。
「なんか、楽しい」
思わず呟いてしまった。
それを無意識で口に出し、そしてそれを聞いていたのか、みんなが固まって私の方を向く。
私は皆を見て顔を真っ赤にし、手を振る。
「い、いやっ、いつもつまんない訳じゃなくって、えっと、そのっ!」
「そういえば、春乃ちゃんの過去とか聞いてないよね」
私が何とか弁明しようとしていると、香蔵さんがそう言う。
すると、鬼円が身を乗り出してきた。
「俺のちいせぇ頃の話知ってんだろ? えぇ?」
「えっ、なんでそれ知ってるの!?」
「あの野郎から聞いたわ」
あぁ……言っちゃったんだ……。いや、この場合脅迫されたのか……。
私は脳内にいる音流さんに苦笑いしながら、鬼円のことを宥める。
「で、テメェなんでここに?」
「確か、引っ越してきたんだよね……あっ、4月か。懐かしい〜」
「そうですね。香蔵さんとあったのも4月ですし」
私は、ゆっくりと吐き出すかのように自分の過去を語り始めた。
◇◆◇
「ここか? ここだよなぁ……」
「うん、ここだな」
春乃の家に2つの怪しい影がある。
1人は、頬に『5i』という文字が。もう1人は、目の中に『8i』という文字がそれぞれに彫られていた。
「なぁ、ケムダー。もう家ごと食っちまわね? めんどくせぇし」
「いや、いるかどうかなんて分からないし、そもそも大きな破壊はダメだって言われてんだろ」
ケムダーと呼ばれた男がそう返すと、ちぇっ、と舌打ちする男。
その男は地面から脚を離して飛び、窓に張り付く。
窓にはカーテンがあり、中は見えないようになっていた。
「うーん……カーテンでしまってやがるな。見えねぇわ」
「だろうな。たぶんいねぇんだろ。降りてこいアクゼリュス」
アクゼリュスと呼ばれた男はさらに舌打ちをしてから窓から飛び降りて地面に着地する。
アクゼリュスは機嫌悪そうに地面を蹴ってケムダーの隣に立つ。
「で、どうすんだよ」
「……じわじわ行こう」
「あ?」
ケムダーの言葉にアクゼリュスは上に『?』を浮かべる。
ケムダーは頬が裂けそうな勢いで笑みを浮かべる。
それは、まさしく化け物という言葉に尽きた。
まるで、悪魔のような、はたまた、凶暴な亡者のやうな、そんな笑顔であった。
それを見て、アクゼリュスは「はははっ」と笑う。
「おい、それはしまえよ」
「あぁ、悪い」
ケムダーの体から出てきていた巨大な口々。それをしまったケムダーは歩き始める。
ケムダーの後に続くようにアクゼリュスも歩き始める。
「で、どうすんだ?」
「まずは奴らの外堀を壊す」
ケムダーは歩きながら言う。
「友達、家族……ペットでもいい。とにかく殺しまくる。奴らの心を折ってやる。その後にぶち殺す」
「おおっ、ご乱心か? えぇ?」
アクゼリュスの言葉にケムダーはバツの悪そうな顔をする。
「仲間が殺されてんだ。今度は2人だ」
「へっ。それじゃあ仕事するか」
アクゼリュスの言葉を聞いて、ケムダーは頷く。
ケムダーとアクゼリュスは2人で言った。
「クリフォトの樹に感謝を」
「あぁ、クリフォトの樹に感謝を」
悪意は、そして狂気は、絶望は、ここで笑った。




