第70話 ちょっとした会話
今回から8月まで試しに12時投稿です。宜しくお願いします。
私たちは部室に集まり、各々やりたいことをやっていた。
例えば、香蔵さんは狸吉さんとチェスをしてるし、鬼円は走り込みに行ってくると重りらしきものを脚と腕に付けて出ていったし、金之助君と快弦ちゃんは勉強をしている。
かくいう私も、金之助君と快弦ちゃんの勉強を教えていた。
高校1年の問題のため、あんまり難しいものじゃない限りは大体わかる。
「ここがこうなって……こう……」
「快弦ちゃん、私に教わる意味あるの……?」
「……正直……ない……」
「だよねぇ……」
最近、快弦ちゃんの態度が柔らかくなった気がする。
この前のパフェ作戦が上手くいったのだろうか。とにかく、快弦ちゃんが私と喋ってくれるようになった。
元々はツンツンしていて、さらにクールという近寄り難い性格だったが、今ではこんなにも距離が近づいている。あぁ、お母さん、私は2人目の後輩の友達を作れたよ……!
「……快弦さん、そこどうやったっすか……?」
「……その小さい脳みそで考えなさい」
「えぇ! なんでそんなこと言うんすか! 教えてくださいっす!」
この2人はいつも通りではあるが。
とはいえ、やはり仲良くも見える。いや、これに関しては金之助君のコミ力全開の部分もあるが。
「……よぉ」
「あっ、鬼円先輩!」
「うわ出た、木刀男……」
「引っぱたくぞコノヤロウ」
鬼円に対してはまだまだ好感度が低いが。
そんな中、香蔵さんがチェス盤から目を離して伸びをする。
「……暇だねぇ〜〜」
「……まぁ、仕方がないよこれは」
香蔵さんは狸吉さんの言葉にブーブーと口を尖らせる。
すると、扉がガラッと開かれる。
「どーもーーっ! 遊びに来たよ〜鬼円〜!」
「ご無沙汰してます」
2人のカップルが入ってくる。その姿は……。
「音流さん、迅瓶さん!」
その手に、ビニール袋を持っている音流さんと、うしろで姿勢よくぺこりとお辞儀している迅瓶さんの姿だった。
香蔵さんと狸吉さんは立ち上がって、鬼円もその2人が来たことに目を見開く。
「いつの間に夏休みだよね〜」
「剣道の大会、行ってたんじゃ?」
「ふふっん、その話もあってさ!」
音流さんはビニール袋を机の上に置いて、中身を取りだしながら会話を続ける。
私は、金之助君と快弦ちゃんに勉強を中断しよと告げて、みんなの方に集まる。
金之助君と快弦ちゃんの二人を見て、音流さんが声を上げた。
「おおっ、新入り二人〜! いよいよ、部活って感じだね!」
「元々部活だわ」
「ははっ、鬼円も丸くなったなぁ〜!」
「えっ、先輩の知り合いっすか! 話聞きたいっす!」
「よしわかった、話してやろう!」
「やめろや!!!」
先程まで少しだけ静かであった部室内が、一気に賑やかになった。
みんなで笑いあったり、鬼円を弄り倒したり、まぁまぁ楽しかった。
「それでさ、鬼円はさ〜〜」
「おい、やめろっ! いますぐにでもやめろっ!!」
鬼円の恥ずかしい過去なんかも出てきてさらに盛り上がる。
鬼円って意外と恥ずかしい過去あるんだね……あっ、音流さん殴られた。あっ、迅瓶さんが鬼円に攻撃を。あっあっ、やめてあげて!!
まぁそんなこんなでいい時間になってしまった。
兎にも角にも、とても楽しかった時間なのに変わりないし、私自身鬼円の話を聞けたことは良かったと思う。
……別に、嫌味では無いし! ちゃんと聞いてたし!
「あぁ、それと、春乃ちゃん」
「? はい……?」
音流さんは私の耳元でこう呟いた。
「鬼円、頑張ってね」
「…………!!!?」
音流さんは多分顔も体も真っ赤になっているだろう私にそう呟き、ケラケラと笑いながら迅瓶さんを急かすかのようにして外に出ていった。
私はその後を追いかける。
「待ってください! それ誰か……ら…………」
ふと、音流さんと迅瓶さんの走った方向の反対を見る。
そこには、鶴愛さんと冷世ちゃんと蟹菜ちゃんの姿が。
3人は私に気付いたのか、私の顔を見て即座に足をグルグルと回して逃げていった。あ、あんの3人…………!!!
「……ふぅ〜〜ん」
「……はぇ〜」
「狸吉さん、香蔵さん、やめてくださいその顔。お願いですからやめてください」
本当にっっ! やめてくださいっっっっっ!!!!




