第65話 決闘 その③
「……あ?」
鬼円からの攻撃で灰のようなものを零しながら呟くキムラヌート。
しかし……
(クッソ!! しくった……!!)
その傷は浅く、灰が零れたものの、すぐに止まってしまった。
キムラヌートは、ニヤッと笑い、鬼円を見る。
「残念だったなぁ……」
瞬間、大きな壁が鬼円の目の前に出て、鬼円と春乃達が分断される。
鬼円はその大きな壁に向かって走って、飛ぼうとするが、ツァーカブはそれを許さなかった。
香蔵は大きな壁を破壊しようと、手を伸ばして『皇帝の幻想』を使うが、『皇帝の幻想』は切り裂かれる。
「っ、ぶはっ……!?」
「香蔵さん!!」
『皇帝の幻想』が切り裂かれたことにより、口から血を吐く香蔵。
(畜生……ダメージが溜まりすぎた……!!)
口から出た血を拭って、キムラヌートを睨みつける香蔵。
キムラヌートはニタニタと笑いながらコンクリートで作ったのであろう鎌のようなものを手に持ち、こちらに走ってくる。
香蔵は『皇帝の幻想』を再び作り出そうとするが、キムラヌートに蹴り飛ばされて壁に勢いよく叩きつけられてしまう。
(やっば、これ……死……)
香蔵が目を閉じかけた時、春乃が見える。
春乃は、泣きそうな顔でこちらを見て叫んでいた。
それを見て、香蔵は目を見開き、ニヤッと笑う。
「まだ死ねないんだなこれが!!」
キムラヌートの鎌が……否、キムラヌート自身が浮き始める。
「……っ!?」
「えっ!?」
キムラヌートは無言で驚き、その光景を見た春乃は口に出して驚いていた。
香蔵は、手を大きく開き、天に向ける。
キムラヌートは動きを止めて、地面から大きな岩槍を何個も出現させて待機する。
(何をしてくる幽霊女……!)
ふと、キムラヌートの周りが金色に光り始めた。
それは、明らかな異常であり、キムラヌート自身の脳内も、大きな警報を五月蝿く鳴らしていた。
「なっ!? これはっ!?」
キムラヌートはコンクリートを自身に幾つも重ねて攻撃を耐えようとする。
だが、それは無意味であった。
香蔵の目は金色に光り、キムラヌートを見据える。
そして、呟くように口を開いてその技の名前を、技と共に放った。
「なっん、だとォォぉ……!!?!?」
キムラヌートの悲鳴に近い叫び声は、轟音と共にかき消された。
「『月魂:王女と王子の神秘的な輝き』」
◇◆◇
大きな爆発音と共に地面が揺れ始めたその場で、鬼円とツァーカブは走っていた。
お互いに牽制しながら、その爆音の方を横目で見る。
(なんの音……!? まさか、やられた……!?)
(ちっ、いくらなんでもやり過ぎだ馬鹿!)
だが、と鬼円の口角が上がる。
それと同時に大きくオーラが立ち上る。
「決着だクソ野郎」
「上等!」
鬼円とツァーカブはぶつかり合い、鬼円が負ける。
鬼円は空中で2回転して地面に脚をつけると、目の前に迫っていたツァーカブに思いっきり殴られ上に飛ぶ。
鬼円は口から血を零しながら、ツァーカブを探す。
ツァーカブは既に、鬼円の上へ飛び、勢いよく拳を振り落として叩き落とすのだった。
その衝撃で、大きな土煙が上がる。
「……あっけなかったわね……」
そう呟いた後に、大きな壁を見る。
その壁は、勢いよく崩れ落ち、煙を上げながら崩壊して行った。
「……キムラヌートも、逝っちゃったか……」
まるで仲間の死を悲しむかのような顔をした後……違和感を感じる。
「……なんだこれ?」
キムラヌートの気配は消えた。残りの2人は、キムラヌートを殺した奴と、キムラヌートを殴った女の2人だろう。
だが、なぜかもうひとつある。
気配のようなものが、弱々しくも、立ち上っている。
ツァーカブが、それに気付いたのは。
「おい、どこ見てやがる……!」
後ろでオレンジ色に輝く、天に昇るオーラと、その声によってだった。
「っ!!!」
ツァーカブは思いっきり振り返りながら爪で顔面を切り裂こうとする。
ツァーカブのその爪が届く前に、ツァーカブの腕が吹き飛んだ。
「っああぁっ!?」
「言ったろ……」
鬼円は頭から血を流し、片目を閉じながらも、ツァーカブを睨みつける。
ツァーカブはそれを見て、自身の脳内に「死」という文字が浮かび上がらせた。
「待っ……!」
「『日輪・戌之太刀』」
戌之太刀によって、勢いよく上に斬りあげられるツァーカブ。
ツァーカブは口から灰のようなものを吐き、後ろを振り向く。
そこには既に、刀を構えている鬼円の姿が。
(……こいつらは…………)
「『日輪───」
ツァーカブは、大きなオーラの光に目を瞑りかけて……
(ヤバかった……!)
「───雉之太刀』!!!!!!」
ツァーカブの頸が、空中で飛んだ。




