第64話 決闘 その②
ガラガラと倉庫の壁が崩れ、瓦礫と地面の間から手がニョッキっと生え出る。
その後、オレンジ色のオーラのような纏った鬼円が這い出てくる。
「痛ってぇ……マジでなんだよ……」
「香蔵さん酷いです!! 削り落とすって言ったじゃないですか!!?」
「メンゴメンゴ、手っ取り早く落とすならこうかなってさ〜?」
「私達怪我してますからね!?」
鬼円が喧しく叫んでいる方を見ると、そこには血だらけの香蔵と、春乃の姿があった。
鬼円は立ち上がり2人の方に近づく。
「何してんだお前ら……」
「あっ、やっほ鬼円」
「やっほじゃなくてだな……」
そう言っていると、瓦礫から何かが起き上がる。
それは、傷だらけのツァーカブであった。
「……これも、貴方の作戦?」
「いや、こればっかりは俺も予想してなかった」
お互いに汗をかき、2人で春乃達の方を見る。
春乃は立ち上がり、鬼円に耳打ちする。
「上に、キムラヌートが……」
「チッ、なんなんだよコイツらみんな揃ってよ……」
鬼円は刀を構えて、ツァーカブの方を向く。
それを見て、ツァーカブもニヤッと笑って構える。
「よっと、まさか落ちるとはな……」
「チッ、本当じゃねぇか……」
舌打ちして、香蔵の方をチラ見する鬼円。
香蔵は腕を前に出して、『皇帝の幻想』に構えをさせる。
「よし、2対2だ。来いよ」
「全く、俺は女共をやるつもりだったんだがな……」
「まぁ、手間が省けるわね」
鬼円が動く。
ツァーカブ方面に瓦礫を蹴っ飛ばす。ツァーカブはそれを手で弾いて粉々にするが、低くしゃがんでいた鬼円に気づくのが遅かった。
鬼円はツァーカブを蹴り飛ばして、空中にあげさせる。
そして、一突きするために刀を構えるが、横から襲ってきた岩の塊に気を取られ避ける。
キムラヌートはニヤッと笑った後、こちらに向かって剣を振るう『皇帝の幻想』の攻撃を避ける。
ツァーカブは後ろで飛んでいた岩の槍を手に持ち、鬼円に一突きする。
鬼円は刀を縦に構え、ギャリギャリと鍔迫り合いした後、弾いて横に斬る。
だが、弾かれた時にツァーカブが後ろに飛んだことで、避けられてしまう。
「チッ!」
「ふっ!!」
鬼円目掛けて槍を縦に振るうツァーカブ。鬼円はそれを前転して避ける。
ツァーカブは、岩の槍を手放し、地面に着地した後に鬼円に近づく。
鬼円は刀を持ってツァーカブに応戦しようとするが、横から飛んできた岩槍に刀を弾かれてしまい、刀を手放してしまう。
「っ! 刀が!」
「よそ見!!」
鬼円の顔面にツァーカブの蹴りが入る。
鬼円は痛みに耐えた後、思いっきり左腕を振るってツァーカブの脚をぶん殴る。
ツァーカブは痛みからか顔を歪めた後に地面にある瓦礫を手に持ちそれを投付ける。
すると、上から金色の盾が降ってきて防がれる。
「鬼円!」
「チッ、助かった!!」
香蔵が出したであろう盾に舌打ちした後に刀を取るために走る。
手を伸ばすものの、刀が突き刺さっている場所が、円状にくり抜かれ、上に吹っ飛ぶ。
振り返れば、キムラヌートが地面に手をつけて操っていることが分かる。
キムラヌートは自身の手に鉄を集めて拳に纏わせた後に、『皇帝の幻想』に思いっきり殴り掛かり、地面に叩きつける。
(っ! アイツ厄介すぎるな……! 地面を武器に出来るわ、邪魔出来るわ、遠距離攻撃だから近づけねぇ! だが、近づければ……!)
(やっぱりあのキムラヌートとか言うやつ、体術もいける口だよね……! 感覚が少しだけ繋がってるから、痛いもんは痛いんだよ!! でも、私じゃなくて鬼円なら……!)
鬼円と香蔵の考え、それはキムラヌートに対するものであり、そして、2人の考えは一致する。
((アイツを先にぶっ飛ばす!!))
無論、それはキムラヌートやツァーカブも警戒する。
だが、鬼円との明確な違いは……
「テメェらが、俺よりも……遅せぇって事だ!!」
オレンジ色のオーラを纏った鬼円は、瞬時に地面を蹴り、刀のある岩で出来た柱のようなものの頂上に辿り着く。
刀を引き抜き、そのままジャンプして落下する。
一方で、香蔵は『皇帝の幻想』を操り、キムラヌートに抱きつく。
キムラヌートは、自身の脚から、何本も石の槍を作り出して『皇帝の幻想』に突き刺す。
「っ……!!」
香蔵の脚から血が吹き出す。その痛みで顔を歪めるものの、耐え抜く。
春乃が、心配そうに見つめるが、香蔵はそれをニヤッと笑って返す。
「心配しないで。私と鬼円がいれば……大丈Vってやつだよ!」
「っ……! 香蔵さん……!」
鬼円はオレンジ色のオーラを勢いよく昂らせ、居合切りの形になる。
「……『日輪───」
オレンジ色のオーラが、まるで翼のような形に変形し、鬼円の目が揺らめく。
キムラヌートはそれを見て、目を見開いた後、目の前に壁を作る。
だが、それは遅かった。遅すぎた。
「──雉之太刀』」
キムラヌートは、壁が出来終わる前に……身体を真っ二つに斬り裂かれた。




