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ようこそ!超能力部です!  作者: YY-10-0-1-2
3章 夏休み編
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第58話 夏、夏、夏!


「暑っづ〜〜〜〜……!」

「本当にクーラーついてるのよねこの教室?」


 七夕が終われば、はたまた、梅雨が終われば、それは夏の合図。

 春乃達学生は本当にクーラーが起動しているのかと疑問視しながら授業を受けるのであった。


(暑ちぃ……)


 無論、この男……鬼円桃佑もその1人である。

 地球温暖化という異常により、今年の夏もまた大きく暑くなっているとニュースでやっている。

 それを知っている鬼円は「地球温暖化クソ喰らえ」と思いながらも授業を受ける。

 だが、ほとんどの学生は話など聞かずにコソコソと喋っている。


 ──今年の夏休み、どこ行く?


 そう、学生の最も望んでいること……夏休みの話である。

 夏休みとは何か? それは、学生達が盛り上がる一大イベント……。

 夏休みとは何か? それは、『彼女いない歴=年齢』の男性達にとって勝負どころとなるイベント……。

 夏休みとは何か? それは、部活動に励む学生達にとって最も過酷なイベント……。


 他にも色んな話題や予定などが上がるだろうが、鬼円にとっての夏休みとは…………


(今年は何ぶった斬るかなぁ……)


 修行をするための機関である。

 元々、鬼円家というのはデカく、そして剣士が多く排出された家系でもある。

 故に、修行するための期間を設けることが多い。


(去年は確か、鬼円國網ジジィの持ってきた岩石をぶった斬ったっけか……一昨年は何だったかな……)


 人知れず、人ならざることをしている鬼円。今年は何を目安にするかと1人で考えている。

 このままだとインフレーションを起こすのでは? という自身の祖父の心配を他所にであるが。


 一方、春乃と言えば……


(今年は皆と遊びたいなぁ。楽しい記憶も残したいし!)


 浮かれていた。

 人間としては大当たりなのだが、学生として大ハズレでもある表裏一体な考え方をしていた。

 とはいえ、彼女は勉強が出来るためそこまで思い詰めてはいないらしい。


(皆と花火大会とか行ったり、皆と集まって遠くに行って遊んだり、それに皆と海行ったり……海?)


 『海』という単語で固まる。


(あれっ、海に行く……? ってことは、海で遊ぶってことでしょ? つまり……水着……?)


 鬼円に自身の水着が見られているという想像をする春乃。

 ボシュンと音を立てて春乃の頭から煙が湧く。

 そして、ガバッと机に突っ伏すのであった。


(いや、いやいやいや、いやいやいやいやいやいやいやいや!!! 何? 別に鬼円に見られても……いや良くないな! あれっ、なんでこんな恥ずかしいんだ!?)


 春乃はひとりでに戦慄していた。そして、悶々としていた。

 彼女の中で、鬼円という存在が大きく育っていた。

 鬼円は春乃にとって『向花高校』初めてのクラスメイトであり、仲良くなった男友達である。

 そして、自身を『超能力部』へと誘った唯一の超能力者でもある。

 故に、その存在は大きく、彼女を意識させるのに充分に育っていた。


(落ち着け私……! 鬼円は、私に興味は無いはず! つまりこれは、一方的な想い……)


 瞬間、ズキッと痛む心。

 春乃は無意識に胸を抑えて首を傾げる。


(……? 今……『ズキッ』って……?)

「はーるちゃん!」

「うひゃぁ!?」


 春乃がそう考えていると、いきなり抱きつかれる。

 その犯人は、蟹菜であった。その隣には、冷世も立っていた。


「ちょっ、(あつ)っ……!」

「ふふん、私も暑い……」

「じゃあなんでやってるの!?」


 ご尤もなツッコミに頬を膨らませる蟹菜。

 冷世は溜息をつきつつ、蟹菜を掴み、春乃から剥がす。

 そして、腰に手を当てて口を開く。


「春乃、あなた夏休み期間中に何か予定ある?」

「えっ? いや、特には……」

「そう、ならどこかで遊ばない?」


 遊びの誘い。

 それは、つまり、記憶を作るということである。


「うん! いいよ」

「やった! 春ちゃんってこのアニメ見てる?」

「あっ、懐かしい〜。子供の頃よく見てたなぁ……」

「このアニメのイベントがやるんだけどね……?」

「……アニメイベントか。いつ行くの? 私も同行するよ」


 何だか奇妙な冒険をしてそうな主人公の仲間っぽいことを言っている春乃。

 すると、鬼円にふと視線が向いた。


「……春ちゃん?」

「えっ、ううん、なんでもない!」


 あからさまな態度に、冷世は顔を歪めた。


「も、し、か、し、て〜……鬼円となんかしようとしてる?」

「……っ!!? ち、違うよ! そんなんじゃないよ!」

「あぁ……お邪魔しちゃった感じ?」

「蟹菜ちゃんまで……!?」


 今まで会話に参加していなかったはずの蟹菜にもそう言われ春乃は困惑していた。

 その様子を見て、確信した冷世はさらに追い詰めようと言葉を重ねる。


「春乃、もしかして鬼円のこと……」

「違う! 違う違うの!! そんなんじゃない!」


 春乃は顔を真っ赤にしてそう言う。

 が、「そんなに真っ赤にしたって説得力ないよ」と蟹菜に刺されたことでたじろぐ。


「意外だねぇ、2人ともよく居るとは思ったけどさ」

「いやぁ、青春だねぇ……」

「…………そういうふたりは……いるの?」

「「いないよ」」


 2人の言葉に何だか悲しそうな顔をうかべる春乃。

 それを見て、2人は額に青筋を浮かべるが、咳払いし話を戻す。


「鬼円とは、なにかいく予定とか作ったの?」

「……まだだよ」

「なら私が呼ぼうか?」

「ちょっ!?」


「さっきから鬼円鬼円うるせぇな……」


 春乃達の後ろに鬼円が立っていた。

 春乃は顔を赤くし、冷世と蟹菜はニヤッと笑う。


「鬼円は夏休み、予定空いてる日とかあるの?」

「あぁ? ……一応な」

「へぇ〜、そうなんだ〜、ふ〜〜ん?」

「何だお前気持ちわりぃな」

「思ってても言わない方がいいよ……」


 蟹菜の言葉を言葉の暴力でぶった斬る鬼円。そして、そんな蟹菜のフォローに回る春乃。

 春乃は自身の財布をチラ見してから取り出す。


「じ、実はさ……わ、わわ、私、()()()のチケット持っててさ……」

((嘘でしょぉぉぉ!!? そこまで行くの!?))


 春乃の取り出したチケットを見て冷世と蟹菜が驚いた。

 しかも、ペアチケットと書かれていることからも、完全にデートの誘い方と分かるから尚更だ。


「よ、良かったら……行かない?」


 鬼円はその言葉に……


「おう、行ってこいよ」


 こう返した。

 全員の時が止まる。そして、冷世は呟いた。


「何言ってんのアンタ」

「あぁ? いや、お前らで行くんだろ?」


 鬼円の言葉に冷世は思いっきり振りかぶって顔面を殴った。

 鬼円は顔を抑えて拳を震わせる。


「テメェ……!?」

「よく見なさいよ!! どう考えたってあれはペアチケでしょうが!!」


 小声ながらも、はっきりと鬼円に伝わるように言葉を吐く冷世。

 鬼円はチケットを見て「あぁ……」と頷く。


「……何日(いつ)だ?」

「えっ? ええっと、は、8月20日!」


 鬼円は考え込む。

 その頃春乃はと言うと。


(断られたら蟹菜と冷世(ふたり)に渡そう断られたら蟹菜と冷世(ふたり)に渡そう断られたら蟹菜と冷世(ふたり)に渡そう断られたら蟹菜と冷世(ふたり)に渡そう断られたら蟹菜と冷世(ふたり)に渡そう断られたら蟹菜と冷世(ふたり)に渡そう……)


 呪文の如く唱えていた。

 鬼円が顎から手を離すと言った。


「予定、空けておく」


 この日、春乃は心の中で跳ね上がったと言う。


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