第55話 嵐の予感
七夕戦争から3日が経った。
夏の暑さが頭がおかしくなるぐらい速めに入ってきて、今年は例年よりも更に高い温度が予想されているらしい。
いよいよ地球温暖化という絶望を肌をピリピリと感じる中、私たちは過ごしていた。
「ほら、そこ、話を聞けよ〜」
とはいえ、7月の中旬。
そう、あと少しで夏休みである。それもあってか、いつもは死んでいる教室の空気が普段よりも息をしていると感じられる。
「私はね〜、大会かな」
「おっ、いいな! 私、応援しに行くよ!」
「いいよ来なくて。別にいらないし」
「あのさぁ、その冷たい反応は夏になっても緩和されないの?」
「寧ろさらに冷たくなるわよ。良かったわね」
蟹菜ちゃんが助けを求めにこちらを見てくるが、それは放っておこう。
ボケーっと外を見ている私だが、実際何も考えていないのか? と言われればそうではない。
……ツァーカブとキムラヌートの事だ。
七夕戦争であったあの二人。分からないことは多いが、私たちと敵対していることだけはわかる。
それに、あの雰囲気、人間の風味を感じられない……つまり、人間では無い異形の存在。
「なんでこんなことに……」
「よぉ」
「うわっ!? ビックリした……!?」
いきなり鬼円に呼びかけられたのでびっくりした……。
なんとか顔を取り繕って体勢を立て直す。
落ち着け私。落ち着くんだ……。
「…………ぐぬぬっ…!!」
ダメだ。
この前の七夕戦争で鬼円に守られたっきり顔を直視出来ない。
それを見て、冷世ちゃんの顔が真顔から段々と歪んで口に手を当てている。反応を見て楽しんでるよあの子……っ!!
「おい、大丈夫かよ。なんか顔色悪いぜ?」
「どちらかと言えば赤くなってない?」
「……ほら、鬼円君が顔を見ようとしてるわよ」
ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!
冷世ちゃんの言葉でさらに顔を上げれなくなった。お、おお、落ち着けあばばばばば…。
鬼円は訝しむようの私の顔を覗くものの、顔を離して言葉を紡ぐ。
「とりあえず、ホームルーム終わったから部室来いよな」
「う、うん! 分かったよ!」
鬼円は手に持っているバッグを肩にかけ、歩いて教室から出ていった。
それを見て、ホッとした後に冷世ちゃんの方を睨む。
「なんでそんなことするのさ!」
「いやぁ? 人の反応を見て楽しんでるだけだよ……」
クスクスってリアルに言う人初めて見た……。
とはいっても、あんなことがあってから顔を見れなくなってしまったのは……チョロいっていうか。
そもそも、私の鬼円は会ってまだ3ヶ月ぐらいしか経っていない。
というか、3ヶ月間で色んなことがあったなと考え込んでしまうが……。
だけども、顔を見れなくなるとは思っていなかった。
確かにかっこいいところが沢山あった。けれども、けれども!! そんな顔を真っ赤にするようなことでは無いはずだぞ私!!!
自分に自己暗示を掛けつつ、バッグを持って部室に行く。
「──って言ってるでしょ?」
「──何言ってんだあんた……!?」
なんか揉め事が聞こえるんですけど。
夏休み前だってのに変な揉め事はやめてよね……。心の中で無いはずの平穏を望みつつ扉を開ける。
瞬間、フードをかけた……女の子が目に入ってきた。
どうやら、フードのついた上着のようなのだが、そのフードから見える黒色の髪の毛。
その髪の毛は気だるそうな目にかかっていて、俗に言う「片目隠れ」と言うやつが印象的だった。
そんな少女と、鬼円が睨み合っていた。
またか…………。
「今度は何してるのさ……?」
「あんたが部長?」
その少女にそう言われた。
私は違うと首を横に振り、少女を宥めた。
「なにか、用なの?」
「入部」
「…………へ??」
その少女は淡々と言った。
「『超能力部』に入部させて欲しい」
また嵐が迫る予感がする……。




