第53話 鬼円という男
───マジかよ……!
心の中でそう呟くのは鬼円。
鬼円は、目の前で起きていることを見て目を大きく開いていた。
目の前では、キムラヌートと名乗った敵が春乃にバールで殴られ、地面に倒れた所だった。
鬼円は痛みを叫んでいる体に鞭を打ち、立ち上がる。
(くそっ、かっこ悪い所を……はやく、あいつのところに……!)
鬼円は地面を見ながら春乃の方へと歩く。
前を見ると、こちらへ駆け寄ってくる春乃の姿が。それを見て、取り敢えずため息を吐く鬼円。
「てめぇ何して───………………っ!!!!」
鬼円は再び刀を手に持ち、春乃を護るように抱き寄せてから飛んできたコンクリートを防ぐ。
いきなりの事に、春乃は鬼円の胸に顔を埋めることとなった。
「ちっ、殺そうと思ったが、防がれるわな……」
そこには、頭を抑えて立ち上がるキムラヌートが。
春乃は後ろを振り返り、顔を真っ青にする。
「この女ァ……よくもやってくれやがったな……」
「っ……!」
瞬間、鬼円から有り得ないほどのオーラが上へ噴き出した。
その目は血走っており、顔を暗くして威嚇のようにオーラを昂らせていた。
「おい、コイツに手ぇ出すな…………殺すぞ……っ!」
「……化け物は香蔵かと思ったらテメェかよ……!」
春乃は鬼円から離れ、後ろに鬼円の回り込む。
鬼円は刀を構えてキムラヌートを見据える。
普段よりもオーラが大きくなっている鬼円は、その脚を思いっきり地面のコンクリートを割った。
それと同時に大量のコンクリートが鬼円に迫る。
「っ……!!」
コンクリート一つ一つを刀で斬り捌く鬼円。
コンクリートは斬られたことで小さくなり、慣性の法則で後ろへ吹っ飛び廃工場の壁に穴を開ける。
鬼円が走り出し、その衝撃で地面を抉る。
「はえぇ!?」
「ラァァ!!」
逆袈裟斬りのように刀を振る鬼円。
だが、それは避けられてしまい、キムラヌートは反撃で鬼円の顔面を蹴る。
鬼円は蹴られたことで顔を大きく揺らすが、直ぐに体勢を立て直して踏ん張りを利かし、左足でキムラヌートの横腹を蹴り飛ばす。
キムラヌートはそれを喰らい、横に吹っ飛ばされる。
と、同時に鬼円はそのキムラヌートを追い、体勢を立て直そうとするキムラヌートを今度は上に刀を持ってる逆の手で殴り飛ばした。
空中で身を翻し、地面ではなく、天井にある鉄を使い、槍のように鬼円に放つ。
鬼円は1本1本それを走って避けて、その鉄の槍を蹴って駆け上がる。
「くっ!?」
「遅ぇ!!」
雷が一気に駆け上がったかのように昇った鬼円はキムラヌートの腹に目掛けて蹴りを入れ込む。
キムラヌートは「ゴボッ」と血を吐き出すものの、鬼円の顔を掴む。
「そりゃあぁ!!」
「うがぁ!!?」
地面に思いっきり投げられた鬼円は空中で二回転し、地面に着地する。
が、その間にキムラヌートが鉄の槍作り出し、それを手に持ち、勢いよく降りてきた。キムラヌートはその鉄の槍で攻撃を仕掛ける。
鬼円はキムラヌートの攻撃をギリギリで避けるものの、頬や体に傷が走り、服が破れる。
しかし、刀を上手く使い、鉄の槍を止めて叩き折る。
そして、キムラヌートに向かって頭突きをする。
キムラヌートは後ろに数歩下がってコンクリートを放とうと手を伸ばす。
……が。
「……っ?!」
目の前がクラっと揺れ、地面に片脚を着く。
その理由は至極簡単なこと。
(そうか……脳震盪……!!)
春乃のバールでの攻撃。
そして、先程の鬼円の頭突きや攻撃。
それらにより、キムラヌートの脳は大きく揺らされてしまい、脳震盪を引き起こされてしまったのだ。
その隙を鬼円は逃がさない。
「殺す……っ!!!」
鬼円は刀を構えて飛び込む。
まるでコメットテールのようにオーラが走り、鬼円が凄まじい勢いで走っているのがひと目でわかる。
そして、鬼円は刀を振り抜く。
「『日輪・戌之太刀』ッッ!!!」
その技は、キムラヌートを一直線に斬り抜いた。
キムラヌートからは血…………ではなく、まるで灰のようなものが天に昇るかのように吹き出した。
それを見て、全員が息を飲んだ。
「グフッ……」
「てめぇそれ…………人間かよ?」
鬼円がキムラヌートにそう聞くと、キムラヌートはクツクツと笑いながら立ち上がる。
「なるほどなぁ……テメェが……ツァーカブを追い詰めた理由も……わかった気がしやがる…………!」
「……どうする、まだやるか……っ!」
「いや、結構。今回は少しだけ遊びで来たんだよ……なっ!!」
キムラヌートが力を込めると勢いよく風が吹き、なんと、鬼円が付けたはずの傷が治った。
それには鬼円でさえ口を大きく開いた。
キムラヌートは飛び上がり、廃工場の天井から下を覗くかのように顔を出す。
「またな……!」
「っ! 待ちやがれ!!」
鬼円の静止も虚しく、キムラヌートはその姿を消してしまった。
消えて直ぐに、鬼円のオーラが、フッと消えた。




