第50話 開戦 その②
「なんかあるのかよ、策がよ……」
「まぁね」
香蔵はそう言って花畑を睨む。
山吹色に光るオーラを纏っているのを見て、花畑は冷や汗を垂らす。
(んだアイツ……? ヤベェ感じがビリビリしやがる……)
「私もちょっと働かないとだからね〜、堪忍してよ……ねっ!!」
そう言って飛び上がる香蔵。
その跳躍力は普通の人間を超えており、花畑だけでなく、哲殻や徹太すらもを驚愕させるに至った。
香蔵は、重力に従って落ち、花畑に蹴りを入れ込む。
が、花畑は手を振るう事で、それを防ぐ。
まるで、空中に透明の板のようなものがあるのか? と疑うほど、そのガードは硬かった。
空中を蹴って地面に着地する香蔵。
今度は、前に手を出す。
「さぁ、行くよ……」
瞬間、能力者全員がゾワッとした感覚に陥る。
「『月魂:日食の剣』」
月を模した大きな剣が香蔵の手の中に収まる。
周りの不良達が香蔵に一斉に襲いかかる。
「危ねぇ!」
徹太の声が響くと同時に、その巨大な剣が空中に浮き、不良達を吹っ飛ばす。
それを見た春乃は、口を大きく開けて驚いていた。
「すっ、すごい……!」
「そりゃ、部長だからな…」
鬼円の言葉を聞いて、香蔵は振り返って笑顔で舌を出し、ピースする。
そして、その笑顔のまま花畑の方を向く。
「さぁ、行くよ!」
「っ!」
香蔵は、剣を操って花畑を追い詰める。
剣を弾き、弾き、弾き……それを何回も繰り返す花畑を見て、考え込む。
(私の剣が見えてるのは確定……けれども、なんだろう、弾いている理由は…)
剣を弾くことに疑問を抱く香蔵。
その周りにいる不良を薙ぎ払った鬼円は、香蔵に近づく。
「何やってんだよ!」
「今考え事してるの。ちょっと待っててね〜」
「チッ」
鬼円は舌打ちしつつも、香蔵を守るように立ち回る。
そんな中、春乃も顎に手を当てて考え込んでいた。
考えているのは、同じく、攻撃が当たらないことであった。
(なにか、なにかあるはずなんだ。種が……)
春乃から冷や汗が垂れる。
「っ!?」
いきなり目の中に入ってきた光に、目を細める。
そして、見えたのは、反射している何か。
「……反射…光?」
花畑から、なにかが反射している。
……否、それは花畑からではない。花畑の目の前からであった。
攻撃を当てようとすれば、花畑には届かない。まるで透明な板があるかのように防がれる。
花畑の目の前には、何があるのか……?
「……空気?」
空気が光を反射する。それは、物理的にはありえない話である。
光が反射する理由は、物質の屈折率が高いから起こる。空気の屈折率は『1%』である。対して、反射する物体で一番最初に名が挙がる鏡は、『約90%』と言われている。
つまり、空気が光を反射するのは、ほぼ不可能に近いと言える。
そんな不可能に近いものが、反射したのだ。つまり、そこには何かしらの物体があると言える。
「……香蔵さん!」
「おっ?」
香蔵は、春乃の掛け声を聞いて、ニヤッと笑いながら後ろに飛び退ける。
そして、春乃の顔を見る。
「何か掴んだね?」
「は、はい! 光が、反射したんです」
「なるほど。………分からん」
香蔵の言葉に少しガクッと肩を落とす春乃。
気を取り直し、説明を始める。
「空気が光を反射させるって言うのはありえないんです」
「うん」
「つまり、花畑は不可視の物体を作ってるんです」
それを聞くと、香蔵は目を見開く。
そして、剣を操って自身の方へと戻す。
「なるほど、じゃあ見えない壁みたいなのを創るのが能力……ってことでいいのね?」
「はい! 多分、もしかしたら、そう……かも?」
「あはは、自信持ちなよ!」
春乃の肩を笑いながら叩く香蔵。
そして、再び口を開く。
「『月魂:皇帝の幻想』」
そう言い放つと、後ろから金色に光る豪華な装飾をつけた鎧を身につける大男が現れる。
そして、『月魂:日食の剣』を手に持つと、ブンッ、と振るう。
風が巻き起こり、兜で見えないものの、目の辺りから赤い光を放ち、花畑を睨みつける。
「種が分かったなら、こっちが攻め入る番だよね……鬼円!」
「へっ、リョーカイ!!」
木刀を握りしめ、の隣に月魂:皇帝の幻想』立つ鬼円。
ニヤッと笑みを浮かべながら、花畑に木刀の先を見せつけるかのように構える。
「ぶっ潰してやるよ!」
その体に、オレンジ色のオーラを纏いながら言い放った!




