第49話 開戦
7月7日。
東京にある廃工場にて、多人数が集まっていた。
7月だが、前の年よりも大きく気温が上がっており、とある地域の最高気温は45度なんだとか。
そんなすこし暑い日の夜。
「よお、久しぶりだなぁ、花畑?」
「なんだ、来てたのか」
2つの不良軍団が対峙していた。
「しかし、なんだ、この血の匂い……揉め事でもあったのか?」
「まぁね。もう少し速く来てれば見れたかもっすね」
まるでごく当たり前かのように吐き捨てる花畑。
それを聞いて、ははっ、と笑い声がそこに響く。その声を出したのは、目の前にいる徹太であった。
徹太の笑い声を聞いて、少しだけ睨みつけるようにする花畑。
「てめぇは……そんな強かったっけか?」
「うっぜぇな〜……速く始めようぜ?」
「さっさと始めりゃあいいだろ?」
その言葉に、花畑が叫ぶ。
「行けテメェら! 檻鉄徹太をぶち殺せ!!」
「若って言えよ、煽動野郎!!」
いま、七夕戦争が起きる。
◇◆◇
「うわぁ!?」
「チッ!!」
哲殻さんが、私の目の前に来た不良の顔面を殴り、ボーリングみたいに後ろのヤツらと一緒に吹っ飛ばした。
すると、哲殻さんが皆に向かって叫ぶ。
「オラァ!! 守りとおせ!!」
哲殻さんの言葉と共に敵達が吹っ飛んでいく。
それを見て、私と羅救、そして哲殻さんは口をぽかんと開けてしまった。
「そぉぉらよ!!!!」
その犯人は、悪噛であった。
悪噛は紫色のオーラを身にまとい、手を振り払えば敵が吹っ飛んでいき、蹴れば相手を気絶させる。
一騎当千とはまさにこの事を言うんだろう。
鬼円はと言うと……
「せいや!!」
木刀を振って、こちらを敵を吹き飛ばしている。
殺傷能力がないとはいえど、やりすぎなのでは?と、心の中でどこか思ってしまう。
そして、なぜ私はここにいるのだろうとも思う。
絶対いらないよね、私?
戦えるってわけじゃないし。私、スピードなワゴンじゃないから解説もできないよ?
狸吉さんだよね、連れて来るとしたら。
「お姉ちゃん…」
「ん、大丈夫だからね」
羅救ちゃんが不安そうな目で見るが、私は頭を撫でて大丈夫と言う。
こうすることぐらいしか出来ない自分が悔しいが、身の丈にあったことをしなければなとも思う。
すると、工場内に響くような大きな音と共に煙が立つ。
煙の中からは、口の中を切ったのか、血をペッと吐き捨てる鬼円の姿が。
そして、鬼円と対峙しているのは、本当に人間なのか、と疑うほどの大きな身長と身体を持った不良であった。
「敵、倒す……!」
「ゴーレムかよ……っと!!」
相手の攻撃をジャンプで避けて、空中で顔面に2回蹴りを入れる。
グラッとなったところで、足に凪払い。
大きく体勢を崩した相手の喉元に膝蹴り。痛そうとかじゃなく、呼吸困難になるでしょと言えそうな鈍い音が響く。
「やべぇぞアイツ……容赦ねぇ…」
「鬼だろあんなん…」
「鬼なんだよなぁ…」
香蔵さん、『円』が抜けてます。『円』が。
檻鉄さん達は人数差をものともしない程の戦力を見せていた。
だが、それを見てくつくつと笑っている花畑に、違和感を感じる。なぜ、ここまで戦力差がないのに、余裕そうなのだろうか。
もしかして、何か秘策があるのか……? 秘策…だとしても、なんだろう。
「どうした?」
「いや、なんであんなに余裕そうなんだろうと思って…」
「……花畑がか?」
哲殻さんにその事を話し、こくりと頷く。
哲殻さんは、しばらく考え込み、首を横に振る。だよね。
切り札と呼べるものは普通、手札の中に隠し置いておくものだ。
そう思っていると、花畑が立ち上がる。
「おい、檻鉄……そろそろやろうぜ?」
「あぁん? ……てめぇが来た所で脅威じゃねぇだろ?」
花畑は、拳を握る。
それを見せつけるようにニヤッと笑うと、檻鉄さんが吹っ飛んだ。
いきなりの事に、哲殻さんだけでなく、鬼円と悪噛も立ち止まる。
「……なっ…!?」
「能力…か!?」
「チッ、何やってんだよ畜生が!!」
檻徹さんを見て、悪噛が走り出す。
悪噛が、花畑に拳を振るうと、躱され、また吹っ飛んだ。
「そんなものかよ、絶乃罵悪栖さんよぉ!!」
「な、殴られてねぇのに吹っ飛んだ……っ!!」
「んな馬鹿なことあるかよ!!」
檻鉄さんの言葉に叫ぶ鬼円。
確かに、私の目からも…2人とも、何もされてないはずなのに吹っ飛んでいた。
でも、能力みたいなのは見えなかった……。
「どーなってやがる…!?」
檻鉄さんが立ち上がり、花畑を睨む。
花畑はくつくつと笑いながら高台から降りてくる。
そして、檻鉄さんの目の前に立ち、指をクイクイと動かして挑発している。
檻鉄さんは、思いっきり振りかぶると、腹をいきなり抑え始めて、地面に叩きつけられた。
「がっ……い、いきなり……殴られ…た……っ!!」
そんな檻鉄さんの頭の上に脚を置く花畑。
ニヤニヤと笑いながら檻鉄さんを見下していた。
その様子を見て、鬼円と悪噛が飛びつこうとする。が、2人とも、反対の方向に吹っ飛ぶ。
「ハハハハハハハハ! いいね、最高だ!! この景色は、最高だぜ檻鉄よぉ!!」
「て、テメェ……っ!」
愉悦に浸っている花畑。
香蔵さんは金色のオーラを纏い始めるとフワッと、浮き始めて檻鉄さん達の前に立つ。
「香蔵さん!?」
「大丈夫〜!」
私がそう叫ぶと、遠くからそんな声が聞こえた。
花畑は、香蔵さんを睨みつける。
「何だてめえ、邪魔だからどっか行ってろよ」
「いやぁ、それがそういう訳にも行かないんだよねぇ…」
香蔵さんは、花畑を見ながらそう言う。
鬼円が、立ち上がり香蔵さんに近づく。
「なんかあるのかよ、策がよ…… 」
鬼円が、そう聞くと香蔵さんは答えた。
「まぁね」




