第47話 感謝
うねうねと動いている髪の毛。その髪を持っているのは…羅救ちゃんで……?
「…ちょ…ちょう……」
「へぇ、羅救ちゃんったら、超能力者なの……」
う、嘘でしょ!?
い、いや確かに超能力っちゃそうだけど…なんというか、こんな沢山いていいのかっていう…。
確かに、髪が長いなぁとは思ってたけれども、ウネウネ動かせるとは…。
「てっきり私だけかと思ってた……わ、私以外にいなかったから…」
「……世界ってねえ、広いんだねぇ…」
少しだけ興味津々になっている羅救ちゃんの頭を撫でる香蔵さん。
そして、そんな羅救ちゃんは私を見る。
そんなキラキラした目で見ないで。私持ってないから。
「あーっとね……春ちゃんは……あれだよ。能力が見える能力なの」
香蔵さんが私の事を指さしてそう言うと、羅救ちゃんは、さらに目をキラキラとさせる。
「おねーちゃん達、みんな能力者なの!?」
「うぐっ」
無邪気な笑顔と共に発せられる無邪気な文章に心を刺される。
つくづく私って運ないんだなぁ……と、1人しみじみと思う。
とはいえ、まさか羅救ちゃんが能力者だとは思わなかったわけであり、凄いことと言える。
つまりは、絶乃罵悪栖の中でたった一人の超能力者なのである。
「とにかく、洗っちゃおうか。体」
「そうだね。ほら、羅救ちゃん!お湯だよお湯!」
「飛び込めー!」
飛び込んじゃマズイんじゃないかなぁ?
◇◆◇
オレンジ色のオーラを漂わせている鬼円。
そのまま木刀を手に掴み、勢いよく横に振る。ビュオウッと音を上げて風が舞い、汗が飛ぶ。
鬼円は、そのまま目の前の仮想の敵に木刀を振り続ける。
その様子を哲殻は静かに見ていた。
(アイツが……ねぇ)
鬼円の死角から見ている哲殻は、タバコを手に取り煙を肺に送り込んだ後にふぅ、と吐く。
彼に能力は見えてはいない。
だが、分かるのだ。風の動きが、音が、汗が飛び散る瞬間が、手に取るように分かる。
哲殻は、檻鉄徹太の仲間の1人であり、信頼を置かれている人物である。
だからこそ、超能力部が裏切らないのか心配であり、能天気な若の為に頑張っているのだ。
例え、超能力部全員が敵になったとしても食らいつくつもりでいる彼は、鬼円の強さを見て分かった。
(……俺じゃあ力不足か。情けねぇ話だ)
──花畑を止められなかったのも。
そう後悔をしても遅いと割り切ったはずだぞ。と自分自身に悪態をつく哲殻。
そのまま部屋に戻ろうと踵を返すと、そこには羅救達の姿があった。
風呂から上がったのか、身体からホクホクと湯気を上げている彼女らを見て、ふふっと微笑んでからタバコの火を消す。
超能力部全員は分からない。
だが、彼ら(主に鬼円だが)がどんな実力を持っているのかは昼の戦いで見ている。
「おおっ、哲殻。どしたそんな所で?」
「いやぁ、若。久々に活気が戻ったなって」
仲間達に絡まれている羅救と春乃達を見て、そう言う哲殻。
それを聞いてキョトンとする徹太に、疑問を浮かべた。
「なんですか?」
「いやぁ、お前、前までそういうの嫌ってただろ?」
「俺だって辛気臭くなる時だってあるんですけど」
「そりゃ、人間だからなぁ」
徹太の言葉に大きなため息をつく哲殻。
しかし、その後に呟く。
「俺を拾ってくれてありがとうな」
「なんだよ藪から棒に……気持ち悪」
「感謝を伝えたまでだよ。徹太」
「っ!」
哲殻の言葉に今度は徹太がキョトンとして、大きな笑い声を上げた。
その笑い声にビックリした哲殻は、徹太を睨みつける。
徹太は、腹を抑えて出てきた涙を指で擦って払う。
「何がおもしれぇ?」
「いやぁ、面白いんじゃねぇんだよ」
そして、徹太はにこやかに笑いながら言った。
「ありがとな。俺についてきてくれてよ」
「……お互い様か」
哲殻がそう言うと、ニシシと笑う徹太。
それを見ていた香蔵達は、微笑み、羅救はとびっきりの笑顔を浮かべていた。




