第44話 知 っ て た
「……」
「……」
お互いに何も話さない。
なぜなら睨み合い続けているからだ。
チッチッと時計の音だけが鳴り響く部屋で、私たちは静かにしていた。
小声で香蔵さんに尋ねる。
「なんでいつもあんなんですか…鬼円って…」
「知らないし、殴りかかってきた相手に警戒するとは思うけどね?」
それはそう。
心の中でそう呟きつつ、なんと話したらいいかよく分からない状況を前に俯く。
状況を理解していない檻鉄さんが口を開く。
「あーっと……なんかあった?」
「……なんでコイツがここにいるんだ?」
「そりゃこっちのセリフだよクソ野郎」
「え、本当に何があったの???」
檻鉄さんが困惑していて、桑西さんがはぁ、とため息を吐く。
未だに会話が進まず、気まずい時間が流れる。
そして、二人の呼吸が重なった。
「「帰るわ」」
「いやいやいや待て待て待て待て」
鬼円と悪噛が同時に立ち上がると、白目を向いて檻鉄さんが立ち上がる。
「えっ、何2人とも知り合いなの?仲が悪いの?」
「仲が悪いって言うか、初対面なのに喧嘩売られたことがあっただけだ」
「え、怖い怖い。なにやってんのそれ」
檻鉄さんが首を思いっきり横に振る。
そりゃそうなる。いきなりそんな話ぶち込まれたら当たり前の反応だ。
「鬼円、一応座っておきなよ…」
「悪噛、ステイだよステイ」
「……チッ」
舌打ちをすると、悪噛がドガッと座る。
鬼円もそれに合わせて座り、檻鉄さんの方を向き会話を促す。
促された檻鉄さんは頷いて口を開く。
「多分、知り合いだろうから自己紹介的なのは要らないよな?本題に入ろう」
「その汚夢爾罵悪栖だったか? ……は何処にいやがるんだ?」
「それなんだよ」
悪噛の質問に檻鉄さんの答えが答えるが、答え方に違和感を覚える。
それなんだよ? もしかして……
「分からないんですか?」
「今はな。人数が減ったから前よりも動けては無いが、色んなところを探している。……が、どこにもいねぇんだよ」
「どこにもいねぇ? そんなわけねぇだろ」
檻鉄さんの言葉に悪噛が牙を向かせる。
が、桑西さんのチョップが悪噛に当たり、悪噛が頭を抑える。
「少しは抑えろや暴力ババァ」
「抑えてるわ……あぁん!?誰がババァだって!?」
「話し続けていいか……?」
なんかタイヘンダナー。
さて、話を纏めると…だ。
汚夢爾罵悪栖のボスは花畑という人である。
その花畑達は色んな悪事を行っており警察にも目をつけられている。
にも関わらず、どこにもいないし見つからない。
なのに悪事をする際にいきなり現れたかのように居るんだそう。
「鬼円」
「あぁ、超能力の類いかもしれねぇな」
鬼円の言葉に私も香蔵さんも頷く。
いきなり現れていきなり消える。そして見つからない。
『テレポート』とか『超スピード』とかの類いなのかな。
「分からねぇが、確かにやべぇな」
「そして、その悪事がどんどん拡がってる」
東京の一部分から今度は新宿や秋葉原、それに渋谷。
このまま広がっていけばいずれか東京全土に広がる可能性がある。
阻止しなければ、というのが絶乃罵悪栖の考え。
「戦力差はこっちにはお前らと、俺の仲間の数十人。対してあちらは各地から集めた不良共の集まり」
「数的には不利だねぇ…」
「そこを力で埋めるんだろうが」
うん?ちょっと待って。それ私も入ってる?
鬼円が木刀に手をつけて握る。
「7月7日だったか?あとちょっとしかねぇじゃねぇか」
「はっ、雑魚がいくら集まった所で敵うわけねぇだろ」
悪噛はそう言って立ち上がる。
すると扉まで歩いていき、鬼円に指を指す。
…この流れは……。
「おい、勝負しやがれ」
「やっぱり……!」
「なんでだよ。どうせ挑んだところで負けるんだから意味ねぇだろ」
「悪噛…ほんっとにあなたって喧嘩好きなのね」
鬼円と桑西さんから言われる悪噛。
悪噛は青筋を立て、うるせぇと言った後に出ていってしまった。
すると、檻鉄さんが手を上げる。
「いいんじゃねぇか?怪我しねぇ程度にやれば」
「そういうもんか?」
「それに、実力を見てみてぇ」
檻鉄さんの言葉に鬼円はしばらく考えこんだ後に、ため息をついて外に出る。
私たちもその後に続いて外に出る。
外の…芝生が広がっているところで悪噛は腕組みをして立っていた。
「来やがれ!」
「チッ、軽くやるぞ」
鬼円が木刀を構え、悪噛は拳を構える。
檻鉄さんが近くにある石をヒョイっと拾って上に投げる。
コッと音を立てて地面に落ちた石。
それとほぼ同時にふたりが動きだした。
激しいぶつかり合いと衝撃、そして音。風がビュウっと吹き荒れて、能力者が以下に脅威かを檻鉄さんに示す。
だが、檻鉄さんはそんな姿を見て。
「すげぇ……」
感嘆していた。
やっぱりぶつかり合うのかとか思っていたが、鬼円のオーラと悪噛のオーラが入り乱れるのを見てやはり凄いと感じる。
超能力者。私はそれが見えるだけの人間。
だけど、見えるだけで良かったと心底思うし、見えてよかったとも思う。
人が痛めつけられてるのは見たくないけれども、このオーラの軌跡を見るのは飽きない。
「オラっ!」
「っ!」
鬼円の木刀が悪噛を捉える。
が、ただで受ける悪噛じゃない。悪噛は木刀に腕を絡めてそれを軸にして蹴りを入れ込む。
蹴りを食らった鬼円は顔を顰めた後に木刀から手を離して掌底を食らわせた。
ズザザッと後ろに吹き飛ぶ悪噛。
だが、その後に地面が抉れるほどの脚力を使って一気に距離を詰める。
「死ねぇっ!!」
「死ねるかよ!!」
悪噛の腕を木刀で受けて、そのまま受け流すように姿勢を低くして悪噛の脚を蹴る。
悪噛は脚を蹴られたことによって姿勢を崩し、鬼円の膝蹴りを顔面に食らってしまう。
「だりゃァ!!」
「なっ!?」
その後に地面に手をつけて木刀による攻撃を脚で掴む悪噛。
それには鬼円もビックリで、声を出してしまう。
何だか、前にあって戦った時よりも悪噛の攻撃にキレがついているようにもみえる。
だが、鬼円に一歩届かずと言ったところか。
木刀を捨てて思いっきり悪噛を蹴り飛ばした鬼円。悪噛はドガァンと音を立てて地面にぶつかり項垂れた。
勝者は鬼円だった。




