表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎宮解明  作者: 南槻 立
Chapter 1. 夜明けの灯火
3/4

3、冒険者チーム「夜回り」ー3

 シャキーン。

 抜刀と納刀総計四回の音は一つにしか聞こえない、神速の抜刀術。


 二つの瞬発の斬撃は魔力により延伸され、不可視の弦月と化した。


 測量不可の速度で飛び出し遠方に不自然に揺れる空気(何か)に命中する。


 負傷により二体の白幻猿の隠形が解除され、背に血が滲んでくる。不気味な高音の悲鳴を上げた。


 仲間の奇襲が失敗に終わり、その実力の差を目にしたら逃走していたのだろう。


 幸か不幸か、距離で斬撃の威力が下げ死には至らなかった。炭くずまみれの地に藻掻いている。


「……」


 シャキーン。


 多めの魔力を込めてゲンがもう二つ垂直の斬撃を出し、その悲鳴を停止させた。


「この森もすでに安全じゃない……ってことな、イスダ」


「そうよ、しかもよりによって白幻猿。またいるかもしれない、帰ったら報告しなきゃね。森林を通り抜け街に入るとまずいよ。そして、()()()()()()()()()()()()()()()


 隠形できる。人間を弄んで殺して食らう魔物。

 それが門番の目を騙して都市に侵入したら一般市民の虐殺になってしまう。


「ああ、そう―――」


 もう一度見回し、異常なしとゲンが警戒を解こうとする時、ガラスが割れ散るような音がする。

 手を再び柄にかけ、白幻猿の焼死体の方向に向ける。


「……はぁ、それか」


 焼死された白幻猿の身体が砕け散り、光の粒となり消散していく。間もなく、両断された死体もそうなっている。


 毛、肉、骨、血。全部消えていった。残っているのは黒い玉だけ、総計7個。


 炭化された土よりも漆黒、不祥の黒光を放つ。


「慣れないよな、例の音」


「そうなんだよぉ。ったく、戦闘中でもいつでもパリンパリンと、気を取られてさ」


 黒い玉を拾い上げながらゲンは痴愚をこぼす。

 魔物が死んで消散するたびの音――終音に不満があるそうだ。


「しかも素材(ドロップ)ないか、はぁ……、」

 ゲンが周りをよく見まわし何かを探している。けどその期待は外れたようだ。


「まぁ、魔核(コーア)だけ回収しとこうか」


「あ、いた。これ見て!」


 いつの間にか両断された白幻猿の付近に行った。

 イスダが()()()を拾い掲げる。けれど、上げられた手には何もない。


「これ、白幻猿の素材(ドロップ)の一種、幻化の布(レイテントクロス)なんだよ! 今は透明だけど、隠形能力の持つ防具に加工できる布だよ!」


 イスダがきゃっきゃと嬉しがる。それも当然のこと。


 遠距離攻撃をメインな攻撃手段とする魔法使いにとっては、身を隠せる防具の素材は得難い重宝だろう。


 けど、ゲンとヤリークは顔を見合わせて、そして疑惑の目でイスダを見ている。


「おい、俺らをバカにされてんの? あんな物あるわけねぇ」


「面白いよイスダ、本当。謎宮の攻略はじめよっか」


「お前らこそあたしのことバカにされてるじゃないか! これを触ってみなさい! こら!」


 激怒った。運動不足の魔法使いにしての最高速でイスダは二人にダッシュしてくる。


 だが、なぜか途中で足を止め立ち尽くす。


「ん? どうしたイスダ」


 斜め上に、イスダは碑門(エントランス)を注視している。


「どうして……」


 イスダの異様に気づき二人は振り向いた。


 碑門(エントランス)の正面に記載されている該謎宮攻略の「規則(ルール)」に。




              雫魔(スライム)競技会(トーナメント)

       

          クリア条件   謎宮中魔物の掃討

          ヒント     雫魔を飲んで

 

          特殊規則    魔物離脱不可


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ