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5話目
周りを警戒しながら玄関に近づくと、目の前の異様な扉に腰が引けてくる。
扉全体にバラが描かれており、花弁のシワから刺の細部まで細かく表現されている。
その扉の中央やや上に西洋のドラゴンの顔が口をだらしなく開け、苦しげに突き出ている。
上顎に輪っかがぶら下げてあり、ドアノッカーになっているようだ。
意を決してドアノッカーを鳴らす。
コンコンと甲高い音を響かせながら家主を呼ぶ。
「こんにちは、誰か居ませんか?」
2度、3度ノックしながら呼び続けると中から、足跡が近づいている音がする。
中に人がいることに少しだけ安堵しているおれがいる。