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27話「聖女……?」






「──ケイ様!!……ケイ様!!!!」




アンが泣きそうな顔でこちらを覗き込んでいる。


目を覚ますとクラレンス邸の自室のベットで横になっていた。



「……おはよう。アン」

「ケイ様!!!お目覚めになられたのですね!!」



アンによると意識を失った後の私は屋敷へ連れて行かれベットで3日間も寝込んでいたそうだ。


着用している衣服は寝衣へと着替えさせられており、長い間寝込んでいたというのに身体のベタつき感や不快感があまり無い。


話を聞くとアンが付きっきりで私の世話をしてくれていたらしい。


街の火災があって妹の事が気がかりだろうし、クラレンス家には他にも侍女は沢山(つか)えているので無理をしなくてもいいのに……。



「迷惑を掛けてしまいました。アン、貴女が私の面倒を見てくれたのでしょう? リンの事も気がかりでしょうに……。ありがとう」

「そ、そんな!!当然の事です!! 妹は元気いっぱいですし、ケイ様はその妹の命を救ってくださいました。私にとってケイ様は聖女様です」

「せっ、聖女だなんてそんな事は……」



いくらなんでも聖女だなんて大袈裟だ。


その国で治癒魔法が最も秀でた女性治癒魔術師が呼ばれる聖女という異名。


自分で名乗ることは相当な自信があっても出来ないことだし、周囲からそう呼ばれることはとても名誉な事。


しかし、たまたま上級治癒魔法(ヒーリングスト)が成功しただけでそこまで呼ばれてしまうと少し困ってしまう。



「ケイ様は謙遜なさりますが、本当にクラリスの街の皆はそう呼んでましたよ」

「そっ、そんな……。たまたま成功しただけですので」

「ふふ。流石ルタ様が見惚れた方です」





──コンコンッ。


アンが褒めちぎってくれるが、どのように反応すればよいか分からずに困惑していると部屋の扉を叩く音がする。




「入っていいか?」



優しい声色の低い声がドア越しに聞こえた。




「……ルタ様。どうぞ」



扉が開き、数日ぶりに見た彼の顔。

少し目にかかる漆黒の髪の隙間から見える真っ赤な血の様でルビーの様に美しい瞳はこちらを真っ直ぐと見つめている。


普段はキリッとしている眉と目元が少し下がっている様子から私の事を心配をしてくれていたというのが一目で理解出来た。




「ケイ様、これで私は一旦失礼致します」

「え、ええ。アン、ありがとう」


アンはルタ様の姿を見るとぺこりと綺麗なお辞儀をして部屋から退出した。



「……ここに座ってもいいか?」

「は、はい。勿論です」


彼はベットの横にある先程までアンが座っていた椅子に腰をかけた。


「……顔色が大分いいな。気分は悪くないか?」

「ええ、お陰様で調子はいいように感じます」

「そうか……よかった。魔力の消費が激しく大分寝込んでいたからな。アンの妹だけではなく広場にいた人間まで癒してしまうなんて本当に驚いた」

「ルタ様とアンのお陰です。しかし魔力の調整が出来ず、その後意識を失ってしまいご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」



魔力は生命の根源の様なもので、体内の魔力が枯渇すると生命に関わることもある。


その為、魔力を扱える人間(魔法使い)は魔力を調整して使用していかなければならないのだ。


私は久しぶりに魔法を使ったので調節が出来ずに魔力切れを引き起こしそのまま意識を失った……というわけだ。



「謝ることではない。むしろ寝込んだだけですんでよかった。ケイに何かあったら俺は君を連れ出してしまった自分を責め続けてしまうだろう」

「な、何があっても私の自己責任ですしルタ様がご自分を責める必要はありません……。ですが、そういっていただけると気が楽になります」

「何はともあれ、回復してよかった。何かあってからでは遅い。次からは無理はしないように」

「は……はい」


無理はしないように、と言うルタ様はクシャクシャっと私の頭を撫でた。

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