16話「幼い頃のお話」(1)
──十年前、当時12歳。
あの頃の自分の容姿は女の子と間違われる事が殆どで、身体も今とは違って華奢で弱々しく、同年代の男の子にからかわれていた。
しかし、自身が生まれたクレランス家は騎士として名高い家。
立派な騎士となるべく毎日課せられる訓練は剣術だけではなく魔法を扱うことも多かったが、当時は上手く魔力をコントロール出来ずに訓練相手を怪我をさせてしまうことが日に日に増えていた。
高い魔力からか同年代の子供にからかわれる事も自然となくなったが、同時に周囲には恐れられて避けられているという事も幼いながらに理解した。
どんなに魔力を調節しようとしても過剰に発動してしまう魔法。
あの頃は自分の力がとても怖かった。
意図せぬ所で人を傷つけてしまうかもしれないという恐怖心から塞ぎ込んで魔法を使わなくなり、訓練にも参加をしなくなっていた。
「──ルタ。気分転換に、父さんの仕事に着いてこないか」
塞ぎ込んでいるのを見かねた父はある日、仕事の付き添いでロレーヌ領の森へ着いてこないかと言った。
当時のロレーヌ領の森は魔物も滅多に出ることが無く、ごく稀に出たとしても子供でも追い払うことが出来てしまうほどの最弱の魔物しか出ないのでとても安全な森と言われていた。
当時の父は騎士として現役で、この森の臨時視察・巡回に来ていたらしい。
最初は余り気乗りはしなかったが、クラレンス領の自宅からロレーヌ領は馬に乗り1時間もせずに着くので、気分転換と乗馬の訓練も兼ねて付き添うことになった。
「──おお!ルタ様!大きくなられましたな!!」
森に到着すると背が大きく体格のしっかりした男たち(父の同僚や部下)に囲まれた。
クレランス家の長男ということで幼いながらに自分の注目度は高く騎士たちに、
「小さいのにこんなに魔力が高いなんて凄いことだ」
「お父様と同じ火の魔力なんだね!!しかも魔力量も多いだなんて羨ましいよ。時期我が騎士団の団長はルタくんで決まりかな?」
「団長のご子息は優秀であろう。ルタ様の使う魔法を是非見せて欲しい」
などと言われ、彼らはまったく悪意なんてなかっただろうが当時の自分にとっては上手くコントロール出来ずにコンプレックスであった魔法について常に聞かれて疲れてしまった。
「──では行ってくる。しばらく待っていてくれ」
暫くすると騎士たちの関心は自分からは逸れて、父は周囲を巡回してくるといい騎士団を連れてその場を離れた。
1人残された俺は騎士団が臨時で借りている小さな小屋で時間を過ごすという選択肢もあったが、特にする事もなかったので森を少しだけ散策することにした。




