1話「寝盗られました」
「──お姉様。私、ラインハルト様の子を妊娠しましたの」
腹違いの妹、ロージュ=ロレーヌから突然言い渡された婚約者との不貞関係。
私(ケイ=ロレーヌ)は、驚きの余り言葉が何も出てこなかった。
何故なら私の婚約者のラインハルト様は、婚約してから1度も私に一切男女の関係を迫ってきたことが無かったからだ。
私はてっきり、ラインハルト様が手を出してこないことを結婚してから少しずつ男女の関係を歩んでいこうとして下さっているのかと思っていたが違った。
ロージュによると、関係を持ったのは今回だけではなく数年前から何度も……との事だった。
同日、ラインハルト様から呼び出され、
「ケイ。君との婚約を破棄させてもらいたい。ロージュには俺の子供が宿っている。責任を取らなくてはいけない」と言われた。
彼の自分勝手な発言に思わず「私の事は責任をとってくださらないのですね」と大人気ない事を言ってしまったが、
「お前は地味すぎて女として見れなかったから仕方がないだろう。寧ろいい機会じゃないか。地味なお前を見初める奴が俺以外にもう居るとは思えないが、これがお互いの為になる。お前は自由だ」
との事で、謝罪もなく婚約者破棄された令嬢は傷物になるという事に対しての配慮の欠片もなかった。
妹は伯爵家の次男との婚約が決まっていたがそれを破棄して侯爵家長男のラインハルト様と結婚することになるらしい。
お父様も妹には激甘で「今回のことは水に流してあげなさい。お前は姉なのだから」といい、継母に限っては「むしろラインハルト様がロージュと婚約していなかったことが間違いなのだからロージュは悪くない」と言い放った。