ゴブリンとの戦闘と敗北
2021年10月18日 ???を追加
拙作を見ていただきありがとうございます
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誤字脱字などがありましたら教えてください
-本隊来襲-
洞窟の外に出るとゴブリンが十数体とゴブリンより二回り大きなゴブリンが2体が待ち構えていた。
もしかすると、何かの用事で外に出ていたのだろう。
「ホブゴ・・・・」
途中でフレッドさんの声が掻き消えた。
ホブゴって、ホブゴブリンだろうか?
自分たちの周りの音が消えて、ゴブリン側の音が聞こえてくる。
ゴブリンの一人は杖を持っている。
もしかして、こいつが呪文を使ったのか?
お互いに接敵して、なし崩し的に戦闘が始まる
私とジェニーさんが、大きめのゴブリンを受け持つ。
フレッドさんの高速剣とパティーさんの弓でゴブリンを駆逐していくはずだった。
私が、大きめのゴブリンの攻撃に耐えていると、ジェニーさんが顔を手で押さえている。
顔、いや、目に矢が刺さっている!
大きめのゴブリンは倒したようだ。
しかも、他のゴブリンは、誰も弓を持っていない。
ゴブリンが数体、倒れているジェニーさんに襲い掛かっている。
残りのゴブリンが後衛に向かっている。
私は、大きいゴブリンの攻撃が激しくてフォローができない。
あ、杖ゴブリンの方から矢が飛んできた。
これがジェニーさんを倒した魔法なのか。
矢は何とか盾で防げた。
しかし、矢に気に取られ、隙ができたので、大きいゴブリンの攻撃が直撃した。
-???-
大きな鏡にフィルたちとゴブリンの戦いが白と黒のグレースケールで映っている。
鏡を眺めている女2人組も含め、この空間も同様のグレースケールである。
1人は、若く黒い長髪と白い肌が、淡い色のドレスとマッチしている。
もう1人は、短い白髪に地黒の肌が燕尾服を身にまとった男装の麗人だが、暗い印象に見える。
「己で肉体能力の限界を決めて制限しているのか。
おかげで惨めな姿だ」
男装の麗人が非難をする。
「能動的行動では、自分の認識以上の力は奮えませんわ」
ドレスの女は、フィルをフォローする。
人間を含む動物は、全力を出すと筋肉や骨に負担がかかるため、これらの損傷を防ぐために脳で力を制限している。フィルの場合は、想像を絶する値を示されても理解ができず、人間が想像できる値を上限に定めて制限をしている。
「ふん。
知的生命体も、切迫した状態なら限界以上の力を出せるはずだ。
たしか、火事場の馬鹿力と言うらしい」
男装の麗人は、能力の解放を勧める。
火事場の馬鹿力は、緊急事態に脳が制限をやめ、アドレナリンを体内に分泌して本来備えられている潜在的な能力を発揮することである。当然、それにより身体は損傷するが、βエンドルフィンを分泌して痛みを感じない様にして緊急事態の解決まで時間を稼ぐ。
ただし、身体は損傷しており、後日ツケを払うことになる。
身近な例だと、運動会で、お父さんが子供の前で良い格好をしようと、全力で走った場合に、激しい筋肉痛に陥ったり、大怪我をしてそのまま救急車で運ばれたりしている。
「火事場の馬鹿力ね。
フィルの場合は、ちょっと力を出すだけならば、問題はないけど、周りの被害を考えないとね。
特に、私の眷属がいるからなおさらのこと」
フィルが能力を解放する場合、加減を間違えると周辺が大変なことになる。
例えば、音速を超えて移動すると周りに衝撃波が出るため、フィルが超高速移動をするだけで、周りが更地に近い状態になる。単騎でゴブリンを殲滅するだけならば、問題は無いが、今回は周囲にクリスをはじめとした仲間が居る。
ドレスの女は、眷属であるクリスを傷つけたくないから、フィルの能力解放には、かなり加減をしたい様だ。
「衝撃波が気になるのか。
それならば、量子核魔法でも教えてやれ」
男は、無責任な提案を続ける。
量子核魔法の一つである、質量から爆発のエネルギーへの変換なら、フィルが動かなくても、ゴブリンたちを殲滅できる。しかし、エネルギーへの変換は高度な技術が必要で、何の知識も無いフィルが使えば、加減を間違えて大爆発を起こす確率の方が高い。
例えるならば、この状況で、銃を扱ったことが無い人間にマシンガンを渡して、ゴブリンを倒せという様なものだろう。そんなことをしたら、誰かが、流れ弾に巻き込まれるだろう。
「あなたの助言を聞いたら、取り返しの付かないことになるわ。
さて、どのような形で助言をしましょうか」
神の啓示の様にするには、何かの姿が必要だ。
この世界の人物ならば、ある程度予想できるが、フィルは異世界から来ているうえに、フィルは多くの日本人と同じで宗教に興味が無かった。
「異世界には、私たちの様な神は実在していない様だ。
ふむ、万物の法則を作った人物がいる様だな」
大きな鏡に、アインシュタインの姿を映す。
もし、フィルが宗教を信じていたら、教祖や神の姿が映ったのだろうが、たまたま勉強していた教科書に載っていたのが、彼だったのだ。しかも、万物の法則を作ったわけでも、万物の法則を見出したわけでも無い。物理法則の一部を提唱しただけで、科学である以上、将来覆されることもあるが、2人はそのような事情まで理解はしていない。
「こんなおじいさんの姿になるのね。
異世界の神は、もっと魅力的な女性はいないのかしら。
気が進まないけど、仕方が無いわ」
女は、大きくため息をついた後に意を決した様に呟く。
グレースケール空間とフィルたちの世界は、時間の流れが異なり、フィルがホブゴブリンに殴られたところである。
-別意識-
そのまま気を失ってしまったのだろうか。
漆黒の空間に、目の前にいるのは、アインシュタインだ。
あのアッカンァンタジーベーをした顔は奴しかいない。
なんで、世界に奴が現れるのよ。
『E=mc^2
質量をエネルギーに変える量子核魔法
まだ、お主は使いこなせない。
それよりは、大事なおなごを、己の力できちっと守ってやれ』
いや、物理はわかるけれど、量子核魔法って何よ。
大事なおなご。
俺だって、守ってやりたいよ!
-再びゴブリンとの戦闘-
再び、目の前の景色が再び暗転する。
クリスの悲鳴が聞こえる。
一瞬だけれど、気を失ったみたいだ。
脳震盪みたいなものだろうか。
現状は、クリスとパティーさんとジェニーさんが倒れている。
フレッドさんとシャーリーさんは見当たらない。
3匹のゴブリンが、クリスに、ナイフや矢などを刺したり、ノコギリの様に切り裂いたりしている。
痛めつけられるたびに悲鳴を上げるので、それを楽しんでいるように見える。
この3匹以外に生きているゴブリンは見当たらない。
早くクリスを救出したい。
体が悲鳴を上げるが、気にしない。
武器はかなり離れた場所に転がっている
近くにあった太い枝を拾い、ゴブリンに向かう。
「クリスに手を出すな!!」
声がゴブリンに届くまでに、2体のゴブリンを叩き付ける。
力の加減を間違ったのか、枝が折れてしまった。
折れた枝を、3匹目のゴブリンに突き刺す。
ゴブリンを倒したところで安心して大の字になった。
クリスが自分の怪我よりも先に私の治療をしてくれる。
「おーい。
麗しの騎士様だけでなく、あたしも治してね」
パティーさんが這って近づいてきた。
左膝が外側に曲がっている。
彼女も重傷だ。
私とパティーさんの治療が終わった後、目の前には傷だらけのクリスがいる。
クリスの方が重傷なのに、なぜ自分の治療はしないのだろうか?
「アインシュタイン」 「写真」で検索するとアッカンベーをした写真を見ることができます。