ゴブリンクイーン その2(3)
第86話「4月 鑑定結果およびほか登場人物のステータス」にここ、スタン、パティーのステータスを載せました
-食堂-
団体戦の決闘が終わって冒険者ギルドに帰ってきたがランクの評価に時間がかかるため、ランチをとることにする。向かう食堂は、年末にアムールさんのパーティーと利用して以来、店員のサービスが良く、味が良くコストパフォーマンスが良く、毎回利用している。
注文した食事が届くまでの間、先ほどの鑑定結果を見比べる。ココのステータスは、通常の人間は30代もあれば能力が高いと言われるのに、VITは50もある。STRも43とアムールさんよりも高くなっている。
「ココの方が、アムールよりも力持ちなのか。
一度、腕相撲で試させてくれ」
アムールさんが、ココの鑑定結果を見てライバル心をむき出しにしているが、うら若き女性同士が腕相撲をするのはどうなのだろうか。
「鑑定石が発見された300年ぐらい前の資料によると、たくさんの人間を使ってステータスを推定しただけで、完全な解明はできていないそうです。
本当は不確定な数字のはずだったのですが、いつの間にか数値が一人歩きしているだけです」
なんかドンさんが難しい話を始めた。
コンピューターゲームの様にきちんとした数字では無いのだろうか。
「そう言えば、冒険者でもステータスを信じるなって言う人も居たな」
アムールさんが、冒険者たちの噂話をする。
ステータスが30位までは、数値通りに能力が比例するらしい。それを超えると数値が高い方が能力は上らしいが、例えば30と40だと3割ぐらい差が付くはずなのだが、1割くらいの差しかないそうだ。
「そう言えばAGIは足の速さに影響があるの?
AGIが100を超えているフレッドはと、どのくらいの速度になるのだろう」
通常の3倍以上の速度なら100mが3秒程度だと思う。赤い彗星のフレッドとか言われているのだろうか。
「人間より素早い獣人族でも、人間の倍の速さで走ることはできないし、馬より速く走ることもできない」
アムールさんが、真実を教えてくれる。
まぁ、馬より速い人間がいたら、馬に乗る意味が無いか。
「AGIって、足の速さじゃ無ければ、何なの?」
AGI=すばやさではなさそうだが、では何なのだろうか。
みんな答えが出ずに静かになっていたときに、ご飯が運ばれる。料理に舌鼓を打つと、難しい話題より簡単な話題に話が向かう。
「私も、リョーシカク魔法のスキルを獲得できました。
さっきの団体戦で、炎の魔法を打ち消したあれは何だったのでしょうか」
鑑定で量子核魔法のスキルを獲得していたドンさんが、嬉しそうに報告する。クリスも習得している。どうやら、量子核魔法と聖女は別のスキルの様だ。
「難しい話だけど質量エネルギー保存則というのがあって……」
やはり難しい話になるので、みんなの反応は薄く、食事が優先される。
なんとか、質量からエネルギーに変換することと、エネルギーから質量に変換することを理解して貰った。
「エネルギーが、シツリョーになると言うことは、炎の魔法がシツリョーになったわけですね。
それで、そのシツリョーは、どこに行ったのですか?」
ドンさんの疑問はもっともだけれど、あの程度のエネルギーでできる質量は微量なので、どこに行ったかと言われても困る。
「たぶん、あの程度のエネルギーなら埃一つ程度だと思う。
ほかの魔法でも、例えば精霊魔法を使うときに、周りで無くなる物は無いでしょう」
そう答えると、なんとなく納得してくれた。
詳しくは分からないけれど、質量をエネルギーに変換するときは、魔素を消費するが、魔法の様なエネルギーを質量に換えるときは、魔素は必要ないみたいだ。魔法のエネルギーが魔素の変化したモノか、魔素そのものだろうか。
その後は、たわいも無い話をして食事を終える。
そろそろ、冒険者ランクが決まる頃だろう。
-冒険者ギルド-
冒険者ギルドの職員がランクを伝えてくれた。
アムールさんとクリスが4、スタン、ココ、私がランク3、アレックスさんがランク2、ドンさんはランク1だった。
「なぜ、ランク4のパーティーに勝った私たちのランクが2や3なのですか。
それとも、惨敗した彼らはランク3に落ちたのですか」
クリスが冒険者ギルドの職員に噛みついている。
気持ちは分かるけれど、ランクで実際の能力が増えるわけでは無いから、実力があればどうせ追いつくはずだし、逆にイカサマをして上げても、メリットは無いと思う。
「フラムはランク4パーティーですが、豪炎のダニエルの精霊魔法が主力です。
ところが、さきほどは一発も発動しませんでした。
それに、猿人グノンがいつから怪我をしていたのは、分からないので、それで評価が難しいのです。
そこで、ステータスと実績から算出しました」
この職員は何を言っているのだろうか。
たしか、決闘前は、ステータスと実績で評価しにくいと言っていたはず。
「実は評価査定の「おい、俺たちのランクが何で低いんだ!!」」
別のパーティーからランク査定に罵声が飛んでいる。
職員が言うには、ランク評定の試験官が過労で倒れたらしく、それで私たちのランク算定に団体戦を利用した様だ。
そりゃ、冒険者証を更新するならランク査定の希望者が増えるでしょう。
「アムールが、あそこのランク4を希望する二人の試験官を代行しても良いかな」
先ほどの団体戦に出られなかったアムールさんが、試験官に名乗りを上げる。そしてココが残り2人の自称ランク3の試験官に名乗りを上げる。
「女ごときが調子に乗っているんじゃねぇよ」
勇ましかった彼らだったが、鎧袖一触と言う言葉が適切に当てはまる位の秒殺、しかも相手の攻撃を受けてからの返しだけで倒される弱さだった。
「一目見て弱いと分かっていたけど、やっぱり準備運動にもならなかったか」
「広場までの移動時間の方が長かったですの」
「怪我人が来るのが速すぎて、治療が追いつきません」
クリスが怪我人が運ばれる時間が治療する時間よりも早すぎると、運動にならなかった2人に笑って話をしている。
職員の人が、こっそりと教えてくれたところ、護衛任務を希望する冒険者はランクが報酬に直結するので、実力に見合わないランクを要求しているそうだ。ちなみに、あの4人は自称よりもランクが2も低かった。
-憲兵訓練所-
準備運動にすらならなかったアムールさんとココの希望で、実践形式の訓練をするため憲兵練習場に向かう。久しぶりに来たので、みんなと訓練をする前に、オリゾン君に好物のクローバーを食べさせて、ブラッシングをする。
戻ってくると、アムールさんとココの試合が終わっており、試合の中身を振り返っている。STRの差は殆ど無いが、アムールさんの方が一撃の重さは重い様だ。スキルや体重のかけ方などに差があるみたいだ。
クリスが治療をしてくれるので、日が暮れるまで個人戦や団体戦を行う。
帝都でゴブリンクイーンの討伐作戦が開始するまで待機するので、毎日稽古をすることになりそうだ。ゴブリンクイーン討伐希望のパーティーはギルドに所在地を報告必要があるので伝えたところ、ランク評定の試験官の仕事が回ってきた。わざわざ冒険者ギルドに行くのが面倒なため、憲兵訓練所で相手をすることになったが、日に10人ほどやってくる。なるほど、試験希望者が多すぎて試験官が過労で倒れるわけだ。
ランク査定希望者は、自称ランクに比べて1から2低い状態で、相手が満足するまで相手をすることする。根性が無い人が多く、日が暮れるまで挑み続けるとか、翌日も挑戦をしてくる人は皆無で、挑戦する相手を変えて2、3回打ちのめされると諦める。
そう言えば、クレアモン村でヴィルバンドに行く護衛もこんな程度だったけれど、こんな人たちが護衛をして大丈夫なのか心配になる。
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AGIは、視認して身体が反応するまでの時間の逆数になります
フィルは、AGIが高く、相手の行動を先読みする予測防御があるので、防御や回避が得意です




