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Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
ゴブリンクイーン
84/92

ゴブリンクイーン その2(1)

 土曜日に更新できなくてすみません

 次回の更新は予定通り水曜日に行います


-4/5 リュドヴィック宅-

 今日は、ささやかな結婚式に参加している。

 主賓は、リュドヴィックさんとデュポア未亡人だ。年末にクリスが襲われたときに、助けてくれた命の恩人だ。子供が独立した独身男性と、一人娘を亡くした未亡人が、クリスの襲撃事件をきっかけに知り合い結ばれたのだ。


「この歳になって、恥ずかしいわね」


 こちらの世界でも高齢で再婚することは珍しく、家族も招待せず、結婚式は聖女のクリスが執り行う。


「人を集めて式を行うと年甲斐も無いと批判されますから身の丈に合わせたモノで良いのです」


 リュドヴィックさんが、ファンタジー世界にもかかわらず、『年甲斐も無く』や『身の丈に合わせた』と言った謙虚な言葉を並べる。そんな質素な結婚式だが、元の世界で結婚式に親族代表が居る様に後見人が参列するのだが、両人の後見人を見て驚いた。

 リュドヴィックさんの後見人は妻と娘の恩人として現皇帝のジェームス帝が、デュポア未亡人側の後見人は雇用主の現大公のガブリエル卿が参列している。元の世界のアメリカ正副大統領ほどでは無いが、万が一の時に備えて、皇帝と大公はできるだけ同じ場所に居ない様にしているため、どの貴族の結婚式でも見たことが無いそうだ。ジェームズ帝は、非公式に参加しているので、儀式の間だけ出席し、儀式が終わると同時に祝福の言葉を残して退出していった。その後、目の前のカサンドラ広場で行われる行事で挨拶を行い皇宮に戻っていった。ガブリエル卿も、祝福の言葉と『大公が帝都に居るのは都合が悪いから、他言無用で』を残しリュドヴィック宅をあとにした。

 式のあとは会食となるが、会食はアレックスさんとパティーさんが一緒に調理し、役所に提出する書類はドンさんが代行して作成している。何でも、魔術ギルドに所属している殆どの人は、それだけでは食べていけないので、この様な書類作成で生計を立てているそうだ。元の世界だと司法書士とか行政書士みたいな感じだろうか。

 さらに、本来は結婚式後の会食にも後見人が夫婦で参加するのが一般的だが、両名とも忙しいうえに非公式の参加だったためジェームズ帝の代理はクリスと私、ガブリエル卿の代理としてスタンがココと一緒に参加している。

 そう言えば、ココは7月に実家の姉が婿を取る際に、強制的に妾にされるはず。そう考えると、このような場はこれが最後なのかもしれない。

 

「スタン坊ちゃま。

 こんなに立派なお相手がいらっしゃったのですね。

 ご結婚の予定はいつごろでしょうか」


 ココの事情を知らないデュポア未亡人がスタンに質問をしている。

 その前に、スタン坊ちゃまって……


「坊ちゃまは止めてくれって言っているだろう」


 デュポア未亡人は、スタンが生まれたときから成人するまで侍女として働いていたので、昔からそう呼んでいるみたいだが、スタンは嫌がっている様だ。

 スタンが、ココの実家のジラール家と交渉してココを正妻として迎えることを条件に結婚の約束を取り付けたそうだ。


「ところで、クリスの方はどうなりましたの」


 スタンが話をしている間は、ココは、頬を赤く染めながら『婚約者ですの。うふふ』と一人の世界に入っていたが、スタンの話が終わると同時に、クリスに話を振る。


「クリスの方はどうなのですの。

 年末にご挨拶はお済みでしたの?」


 パティーさんが、ニヤニヤと眺めている。

 クリスは、話が突然振られたことであたふたしている。

 いや、挨拶自体は無事終了しているはずだけれどね。


「あ、え、えっとね

 挨拶は無事終わったのでしゅけど――」


 何で途中で噛むのだろうか。

 クリスの顔が赤い。


「――聖女の修行を続けるので、結婚は4年以上先になります」


 クリスからは聖女の修行を優先すると聞いていたけれど、あと4年以上も続けるのね。

 ところで、なぜクリスは赤くなっているのだろうか。

 女性陣の考えていることは分からない。

 そのあとは、リュドヴィックさんとデュポアさんのなりそめなどを聞いて食事会が終了した。

 なお、リュドヴィックさんの家は、カサンドラ広場の前にあり少々騒がしいため、静かに過ごすために、デュポア宅で生活をするそうだ。そこで、不要になるこの家を手放す事に決めており、クリスに譲るそうだ。貰う側のクリスは事前に何も相談を受けていないのか『どうしましょうか』と慌てている。


「フィルとクリスにお話があります」


 スタンと明日、冒険者ギルドで話をすることにした。




-4/6 冒険者ギルド-

 スタンと約束をしたので、クリスと一緒に早朝に冒険者ギルドに向かう。

 再結成の打ち合わせもしないといけないからね。


「実は、譲って貰った家を貸していただけないだろうか」


 スタンが開口一番、なぜか家の話を始めた。

 スタンとココは結婚をするので、実家にある荷物を保管する場所が必要になるそうだ。クリスは、聖女の修行を続ける間は家を空けることが多くなり、空き家を管理する費用がかかるので家賃収入が入るのは助かる。

 そのあと、ゴブリンクイーンの話になる。

 軍は、集団で戦う訓練をしているので、ガブリエル卿など一部の強者を除くと個々の力はホブゴブリンより強い程度しかない。そのため、軍だけだとゴブリンクイーンの拠点の周囲を押さえることはできるが、拠点を掃討するにはかなりの犠牲が出るらしい。特に東部の貴族領で混乱が発生して、軍は損耗を避けたい様だ。


「ゴブリンクイーンの討伐依頼が、帝国から冒険者ギルドに正式に出たらしい。

 この前は、軍の横やりが入ったけど、一緒に討伐に行こう」


 スタンが、パーティーの再結成を提案し、クリスたちも同意する。

 ドンさんやアレックスさんはどうなるかなと思っていたら、冒険者ギルドの調理担当と記録担当として現地に行くそうだ。


「ところで、皆様は冒険者の再登録がお済みでしょうか」


 冒険者ギルドの職員が、私たちに話しかけてきた。

 再登録?

 初めて聞く言葉だ。


「冒険者の再登録ですか?」


 私以外のみんなも、知らない様だ。

 職員によると、新年の登録の際に新人の職員が多かったため、登録のミスが多発したそうだ。そこで、新年に帝都で更新した冒険者は再鑑定して再登録をするそうだ。そうすると、私たち全員がその対象になり、鑑定石によるフル鑑定をして再登録をすることになる。

 鑑定をすると、またLv1.2になるよね。

 鑑定は受けたくないよぉ(泣)




-再鑑定-

 冒険者ギルドには、全冒険者を鑑定するために時間のかかる鑑定石を5つも揃えている。そのため、全員の鑑定は2回分、1時間30分ほどで完了する。

 そして、私の鑑定結果はやはりLv1.2だった。


「フィルって、本当に1.2Lvだったんだ。

 冗談だと思っていたのに」


 パティーさんが、私の鑑定結果を見てゲラゲラ笑っている。

 私だって、好きでLv1.2な訳では無い。

 私の鑑定は、他の人に比べて半分とは言わないが、2/3位の時間で終わっているので、きちんと鑑定されていないのだろうか。凄い不安になる。

 ほかのメンバーは、新年に鑑定したときに比べて成長しているみたいで、羨ましい。




-???-

 大きな鏡にフィルが鑑定されている様子が白と黒のグレースケールで映っている。

 鏡を眺めている女神2柱も含め、この空間も同様のグレースケールである。

 1柱は、若く黒い長髪と白い肌が、淡い色のドレスとマッチしている女神である。

 もう1柱は、短い白髪に地黒の肌が燕尾服を身に付けているやや暗い印象を与える男装の麗人の格好をした女神である。


「評価石を使って、背筋力、動体視力、対G耐性とか、組み合わせる意味が分からないものを測定していますね。

 同じ項目だけ毎年繰り返して、人間たちは何をしたいのでしょうか」


 ドレスの女神が、男装の女神に聞く。

 アルゲティー帝国で使用されている鑑定盤は、彼女たちが使用していた評価石の機能を制限したものらしい。

 そもそも、評価石は、競技会と呼ばれる総合運動会に参加する競技者の能力を測るものだ。身体能力と身につけているスキルを表示し、オッズが成立する。有り体に言えば、賭け事の道具だったようだ。


「人間の考えることなんて分かるわけ無いだろ。

 お小遣いポイントまで計っているんだぞ。

 ポイントを貯めても、今の世界では使い道がないのに」


 男装の女神が指摘したお小遣いポイントは、レベルのことだ。

 もともと、努力や成果などの功績をポイント化して、それに応じて神から祝福を与えられるシステムだった。当然、現在は、その貯まったポイントを換金する方法は無い。

 実は評価石を再発見したのは1000年程度昔の異世界人である。

 評価石で人間を鑑定すると、鑑定項目が非常に多く鑑定結果が出るまで1日以上かかる代物だったのだ。しかも、評価石が表示する言語は古代語のため、彼は数値しか理解できなかった。そこで、大量の人間を測定し、似た様な動きをする数値について、その中の一つを表示し、残りの測定を行わないことで、測定時間を短縮することにした。筋力を値にするには、腕力、脚力、背筋力など、いろいろあるが、人による偏りが少ない背筋力をSTRにしたのだ。

 この改良した物に、表示する名前を付ける時点で異世界人である彼は元の世界の言語を使用した。そのため、彼が亡くなったあとに解読ができなくなり忘れ去られたのである。そしてこの改良版が再発見されたのが300年程度前のことである。

 改良版の再発見と同時に、昔の異世界人の様に能力値を同定する作業が始まった。この時に別の異世界人が解読メンバーに加わっていたため、STRなど一部の表記が元々の命名の由来を知らないまま、この世界の言葉に置き換えてしまったのである。


「お小遣いポイントが残っていたのね。

 今の人間は、報酬が貰えるならば何が欲しいのかしら」


 ドレスの女神が勝手に妄想している。


「あれ?

 あなたは神の声が聞きたいと一生懸命修行していた者に一度でも良いから願いを叶えてあげたことはあったっけ?」


 男装の女神に突っ込まれたがドレスの女神は聞こえないふりをしている。

 このあと、二柱は別の話題に興味を持った様だ。

 なお、評価石や鑑定盤の鑑定に時間がかかるのは、神が競技に参加することを想定して上限をかなり大きめに設定されているからである。そこから、徐々に桁を切り下げて計測するため、無駄な時間を浪費するのである。

 さらに、評価石は能力やスキルを測るだけである。これを元に、競技ごとに演算して総合能力表示していたが、こちらの演算装置は現存していない。仮に発掘されても、使用用途が無いから、有効活用されることは無いだろう。

 

 最後に、2柱の女神はお小遣いポイントについて勘違いしている。

 お小遣いポイントは、経験や功績で増加してくる成長と競技会の観客の人気を元に、支払った報酬などを演算して算出していたのだ。そのため、競技会や報酬の無い今は、人間の経験や功績を計測する数値として、最もふさわしい測定法になっている。計測数値の削減とともに1000年前の異世界人の選択が正しかったのだ。

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