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Lvが1.2Gでした  作者: ねろっと
ゴブリンクイーン
81/92

遺跡調査(6) ドン視点

これまで、フィルの元に現れていたアインシュタインの正体をようやく登場させることができました


第九話に彼女たちの登場シーンを加えました。

今後、ほかの過去の分にも、補足として追加していく予定です

-ドンの過去と今-

 ドンは帝都の貧しい労働者の生まれだった。頭が良く、子供の頃は神童と呼ばれ将来を嘱望されていた。11歳の時、1歳年下の弟が精霊術士と鑑定されたことで状況が変わった。9歳までおねしょをしていて、数もろくに数えることができなかった不出来な弟が一家の誉れとして祭り上げられたのだ。

 ドンが魔術にのめり込むきっかけは、そのときに受けた敗北感だ。しかし、魔術は精霊魔法に比べ低出力で、手品に使う程度の代物でしかなかった。

 ところが、精霊術士や聖女でない人間が、高出力のリョウシカク魔法と言う魔術を使うところを目にした。それは、未知の魔術で、わずかだがドンも使うことができた。

 そして今居る遺跡で謎の光、いや光と言うよりも映像を見た。異世界転移者は、あの光をテレビと言っていたが、光が消えたとき、テレビもどこかに消えてしまった。その後、お昼のために、ほかの仲間は遺跡を出ることになったが、ドンは遺跡の部屋に残った。

 なぜ、遺跡の部屋に残ったのかわからないが、頭に何か声が響いてくる。


『E=mc^2

 質量をエネルギーに変える量子核魔法。

 まだ、お主には使いこなせない』


 E、m、c、質量が何か分からないが、これらをエネルギーにして高出力のリョウシカク魔法が発動する様だ。

 解明ができれば、私は弟を超える魔法使いになれる。




-昼食時-

 みんなと一緒に昼食をとるが、先ほど頭に響いていた声が気になって、味が分からなかった。E、m、c、質量は何だろうか。

 この世界には無い言葉なので、知っているのは異世界人だろうか。アレックスさんとフィルさんのうち、フィルさんは間違いなくしてっている。しかし、教えてくれる保証は無い。まずはアレックスさんに聞こう。


「アレックスさん。

 E=mc^2について何か知っていますか」


 フィルさんが居ない間に、アレックスさんに聞く。


「E=mc^2は、アインシュタインだね。

 Eはエネルギー、mは質量だったけど、cは分からないな。

 物理は苦手だったから、フィルの方が詳しいかな」


 アレックスさんは、頭を掻きながら苦笑している。

 物理は、異世界の理を調べている学問らしい。

 何でも数式で表すので、苦手な人が多いらしく、アレックスさんも苦手だったようだ。


「E=mc^2が数式だとすると、エネルギーと質量に関係があるのですね。

 ところで、質量は何ですか」


 リョウシカク魔法は質量をエネルギーに変えるものだから、先ほどの数式がその関係を示しているのだろう。


「質量は、物理の言葉だね。

 重さらしいけど、微妙に違うらしい」


 アレックスさんは、自信が無い様だ。

 まぁ、質量が重さと言うことが分かったので、良しとしよう。

 後は、フィルさんに確認しないといけないのか。




-遺跡の中央の部屋-

 先ほど、画像が見えた部屋に戻り、土砂の下まで漁ったが、めぼしいものは何も見つからなかった。

 

「やっぱり何も無いね。

 さっきの光は幻だったのかね」


 アムールさんをはじめ、みんなは諦め気味だ。

 この部屋に何も無いなら、先ほどの光は何だったのだろうか。

 

「フィルさん。

 E=mc^2は、何を示しているのですか?」


 フィルさんに、答えて貰うしか無い。

 フィルさんは、びっくりした表情をしている。


「アインシュタインの次は、特殊相対性理論ですか。

 Eがエネルギー、mが質量、cが光の速さですね。

 ニュートン力学だと、F=maなので、F=1/2mv^2なんだけど、これは、光速に比べて十分に小さいときに当てはまるのよね……」


 そこから、フィルの物理の話が始まったが、難解すぎて、さっぱり意味が分からない。

 そもそも、速さがm/s(メートル/秒)と言うところで理解が止まる。1mはだいたい指先から対側の肩までなので、こちらは理解できるが、1日が86400秒という時点で、どのくらいの長さか判断できない。


「難しすぎる。

 もっと簡単に分かる様に教えてください。

 実際に、どのくらいの重さだと、どのくらいのエネルギーになるのですか」


 フィルさんが、簡単と言うニュートン力学も、微分積分が理解できないから意味不明だ。理解は諦めて、単純な比較ができるだけで良いと思い聞く。


「質量をエネルギーに変換すると膨大なエネルギーになるんですよ

 1グラムを爆発のエネルギーにすると帝都が消滅しますね」


 フィルがさらっと答えたが、何かとんでもないことを聞いてしまった。

 1グラムは、水桶に入る水の1000分の1ぐらいだそうだ。

 それで帝都が消滅すると言われても、理解が追いつかない。

 異世界の学問は、一体どれだけ進んでいるのだろうか。

 そして、難解すぎて理解できない人がたくさんいて、物理が苦手という人がたくさんいるのだろう。

 この後、知恵熱で、夜までぼーっとしていた。




-???-

 再び、2柱組。

 フィルの物理の話が流れている。


「おい、理解できるか?」


 男装の麗人がドレスの女に聞く。

 神であるにも関わらず、彼女にはさっぱり分からない様だ。


「異世界人の話は私もさっぱり理解できません。

 重さが無くなることも意識しないで、これぐらいのエネルギーってフィーリングで使ってました」


 ドレスの女も細かいことは気にしない様だ。

 そもそも、量子核魔法は必要なエネルギー分の質量を変換するものだから、彼女の認識の方が合理的だ。

 例えば、お風呂のお湯を沸かす際は、お湯の温度を設定するのであって、沸かすエネルギーの総量や電気代で設定する人は居ないだろう。


「異世界人は、神の身体に宿った、神を超える存在かも。

 たぶん、パンを食べるときに、使った小麦が何粒か把握しているかも」


 男装の麗人は、自分のネタが面白かった様で1人で笑っている。


「そっちの人間ですと、どのくらいの威力かなぁ。

 ちょっと計算してみましょう」


 ドレスの女がドンを見て、計算している。

 MND1だと、質量をエネルギーに変換できた場合、1KJまたは1KWになる。

 ドンのMNDは24なので、24KWならば、60坪ぐらいの太陽光発電と同じくらいの出力で、エアコンが10台動かせる。

 もしくは、24KJならばブドウ糖の1g程度の代謝エネルギーだ。

 比較対象のフィルだと、MNDが8.3Tテラあるので、8.3P(ピコ:テラの1000倍の単位)Jとなるので、原子爆弾100発分ぐらいのエネルギーになる。実は、量子核魔法は、人間と比べて想像を絶する規模のMNDが必要なのだ。


「ショボすぎるな。

 こいつは魔改造しないと駄目かな」


 計算結果を見た男装の麗人は、物騒なことを口にしている。

 実際に、昨年末にフィルに帝都の破壊を唆した前科があるので、放置すると危険である。


「人間は私たちの眷属では無いですから、本人が求めるならどうぞご自由にしてください」


 ドレスの女にとって、ドンはどうでも良い様だ。

 光の神が、自身の身体に闇の神を封印した時代までは人間はいなかったはずである。ドレスの女(光の神)男装の麗人(闇の神)が居なくなった数千年の間に現れ、瞬く間に生息エリアを広げていった様である。

 光や闇、4大精霊の眷属との混血も進んでおり、血の濃さによって聖女や魔人、精霊術士が発現することがあるのも、人間がどの属性にも染まる無属性だからだ。


「うむうむ。機会を見つけて闇落ちさせてやろう。

 非力でも、小石に力を集中して飛ばせば、大型生物ぐらい殺せる威力になるのだがな」


 男装の麗人は、悪戯っぽい笑みを浮かべている。

 小石に力を集中すれば、威力を上げることはできるが、実は非常に難しい。命中させるには、目標に向かって重力を計算しながら、放物線を描く様に飛ばす必要があるが、飛ばす方向が縦・横・高さの三次元できちんと合致させなければならない。さらに、力を重心にきちんと当てなければ、小石にスピンがかかり、野球のカーブやサッカーのバナナシュートの様に、軌道が大きく曲げることもある。そして、小石が不整形である以上、空気による抵抗など、様々な要因が働き、真っ直ぐ飛ばすのが非常に難しい。

 2柱は、神であり高魔力を有していたので、雲霞のごとく多数の実体弾に追尾機能を付けて同時に射出することができた。小石1つを追尾性能無しで飛ばしたことはない。

 才能がありすぎるが故に、底辺の事情は全く把握していないようだ。




-遺跡近くのキャンプ-

 遺跡でフィルに難解な話を聞かされてから、頭が処理に追いつかず、ぼーっとしている。キャンプで夕飯を食べるが、昼食の時と同じで味が感じられなかった。どこかから、監視されている様で続々と寒気もするし何か変な病気にでもかかったのだろうか。


「洪水の後からゴブリンたちが増殖しだしたから、もしかして遺跡に封印されていたのはゴブリンクイーンじゃないかな」


 ハーフエルフ(パティー)が、勝手な推測を披露している。

 映像の女性は、ゴブリンの様な醜悪な容貌をしていない。むしろ、美人だ。

 反論をしたいが、そんな元気もないので、早めに寝ることにしよう。今日も、真理の声が聞こえてくることを期待しよう。

お読みいただきありがとうございます

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